今年から8月26日は「火山防災の日」…もし“火山が噴火”したら私たちの生活にどう影響する?専門家が解説
杉浦太陽と村上佳菜子がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」(毎週日曜 7:30~7:55)。「学びと成長」をコンセプトに、毎回さまざまなゲスト講師をお招きして、明日の暮らしがもっと豊かになる情報や気になるトピックをひも解いて、今よりもちょっと成長することを目指す番組です。

8月25日(日)の放送テーマは、「今こそ知りたい! 火山防災」。気象庁地震火山部 火山防災推進室長の今野英慈(いまの・えいじ)さんをゲストにお迎えして、火山防災の重要性、気象庁が発表する防災情報について伺いました。


(左から)杉浦太陽、今野英慈さん、村上佳菜子



◆日本は世界でも有数の火山国

火山とは、地下深くにあるマグマが地上に噴き出してできた山のことで、日本には多くの火山があります。災害のリスクだけでなく、火山活動由来の温泉や火口湖といった自然の恵みであったり、農作物を作るのに欠かせない良質な土壌や地熱発電など、火山は暮らしに大きなメリットを与えます。一方、火山が噴火すると私たちの生活に大きく影響します。そのため、普段から火山や火山防災について知っておくことが大切です。

最新の調査により、富士山の市街地近くに新たな火口が発見されたり、桜島で大規模噴火の可能性が指摘されるなど、活火山について分かったことが増えています。活火山については“正しく恐れて備えること”が重要であり、住民や登山者の安全を確保することを目的に、活火山対策をより強化する必要性があります。

そこで政府は、活動火山対策特別措置法の一部を改正し、2024年から8月26日を「火山防災の日」と定めました。なぜ8月26日に制定されたかというと、今から113年前の1911年、群馬県と長野県の県境にある浅間山に日本で最初の火山観測所が設置された日が由来となっています。今野さんは「この日をきっかけに、皆さんに火山災害に備えることを考えていただければ」と声を大にします。

◆活火山の情報を気象庁が24時間体制で収集

活火山とは、1万年ほど前から現在までに一度は噴火したことがある火山や、現在もガスや蒸気などが噴き出している火山のことを指します。世界には約1,500の活火山があると言われていますが、そのうち、日本の活火山の数は約1割にあたる“111”です。

日本の主な活火山というと、桜島(鹿児島県)、草津白根山(群馬県・長野県)、磐梯山(福島県)、十勝岳(北海道)などが挙げられますが、日本を代表する名峰・富士山もその1つ。世界でも有数の火山国であることから、火山に対する知識、災害への備えが求められます。

気象庁では111の活火山のうち、特に監視や観測体制の充実を図る必要がある50の火山については、その周辺にいろんな種類の機器を設置し、気象庁の職員が24時間体制で常時観測・監視しています。また、大学など関係機関からデータの提供も受けて監視しています。「例えば、空振計で噴火に伴う空気の振動を観測したり、地面の傾きを測る傾斜計やGPSよりも高い精度のGNSSという装置を使って、山が膨張したり収縮したりするのを観測しています」と今野さん。

地下のマグマが上昇してくると、風船が膨らむように山自体が膨張します。この地殻変動に関する観測精度は極めて高く、例えば“100キロメートル先が1ミリ上下する”に相当するほどの微細な変化も観測することができます。気象庁では、こうした監視・観測によるデータを解析し、必要に応じて火山に関する情報を発表しています。

◆気象庁が発表する火山に関する防災情報

災害の要因となる主な火山現象は、火山灰、火口から飛んだ大きな噴石、火山ガスなどが挙げられます。また“火砕流”と呼ばれる、噴火により放出された火山灰や岩石のような固体物質と火山ガスなどが一体となり、急速に山から流れくだる現象もあります。

今野さんは「火砕流の速度は時速100キロ以上で、温度は数百度に達することもあり、火砕流発生後の脱出は不可能です」と説明。実際に、1991年に雲仙・普賢岳(長崎県)で火砕流が発生し、死者・行方不明者43名の被害をもたらしました。

火山は、噴火する頻度こそ多くありませんが、ひとたび噴火すると大きな災害を引き起こす可能性があります。活火山の周辺で暮らす人はもちろん、観光や登山で訪れる人は、気象庁から発表される火山に関する防災情報に注意を払いましょう。

気象庁が発表する火山に関する防災情報には、火山灰の降る量や範囲、風に流されて小さな噴石が落下する範囲を予測して発表する「降灰予報」や、生命に危険を及ぼす火山現象の発生が予想される場合などに、噴火警戒レベルと合わせて発表される「噴火警報」などがあります。

この噴火警戒レベルは5段階に区分されており、警戒が必要な範囲と防災機関や住民などの取るべき対応が示されています。噴火警戒レベル1であれば通常の生活がおこなえますが、活火山であることは念頭に入れる必要があります。

<噴火警戒レベル2~5>

レベル2:火口周辺への立ち入りを禁止
レベル3:登山禁止・入山禁止等、危険な地域への立ち入りを規制
レベル4:警戒が必要な居住地域での高齢者など配慮が必要な方は避難
レベル5:危険な居住地域からの避難が必要

噴火警戒レベルには常に注意を払い、地元の市町村の指示があった場合は、それに従って行動してください。また、地元住民だけでなく、登山や観光で活火山の周辺へ行く方も、各自治体のサイトから地元のハザードマップを見て、事前に“噴火警戒レベルに対応する危険な場所はどこか”“避難場所はどこか”などを確認しておきましょう。

活火山で登山をおこなうときは、気象庁のホームページで確認できる「火山への登山のしおり」に必要な装備や情報、噴火時の対応や連絡先がまとめられています。必ず目を通し、火山ガスや噴気地帯にも気をつけて登山計画を立ててください。

さらに「火山防災の日」特設サイトでは、火山や火山防災に関する情報がまとめて紹介されており、監視カメラで現在の火山の様子なども確認することができます。

最後に、金野さんは「今年から8月26日は『火山防災の日』です。私たちは、火山がもたらす恵みのなかで生活していますが、ときに火山は、噴火活動により私たちに大きな被害をもたらすこともあります。火山と共存し、暮らしている私たちだからこそ『火山防災の日』をきっかけに火山防災について考え、理解を深めていただければと思います」と話していました。

番組のエンディングでは、杉浦と村上が今回学んだ「火山防災の日」について復習。2人が特に注目したことをピックアップして発表します。村上は「やっぱりこれでしょう!」と“8月26日は「火山防災の日」”を強調します。続いて杉浦は“活火山にお出かけする際は事前にチェック”とポイントを紹介し、「火山について詳しく知りたい方は、気象庁のホームページ『火山防災の日』特設サイトをご覧ください!」と呼びかけました。


(左から)杉浦太陽、村上佳菜子



<番組概要>
番組名:杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:杉浦太陽、村上佳菜子
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/manabiyori/