3番目に注目されたシーンは20時11分で、注目度76.97%。大納言・藤原実資(ロバート・秋山竜次)が白昼堂々、情事にしゃれこもうとするシーンだ。

藤原斉信(はんにゃ.・金田哲)が、年上である藤原公任(町田啓太)を追い抜いて従二位に昇叙されると、公任は内裏に出仕しなくなった。公任は自邸で詩の勉強をしていると、「斉信様がお見えでございますけれど、いかがいたしましょう」と妻・藤原敏子(柳生みゆ)が、斉信の来訪を告げた。公任は敏子に、「通せ」と命じたが、「若き日よりこの屋敷にはよく来ていたゆえ、案内なぞ要らぬのだ」と、すでに斉信は部屋へ上がり込んできていた。「ご無礼いたしました」敏子が退室すると、公任は「忙しいのではないのか」と、ぶっきらぼうに尋ねる。「いつまですねておるのだ」どうやら斉信は公任に出仕をうながしに来たようだ。「和歌や漢詩を学び直しておった。本来の道に戻ろうと思うておるだけだ。政で一番になれぬなら、こちらで一番になろうと思うてな」公任は政には未練はないといわんばかりに、さらりと言ってのける。

「道長は中宮大夫を務めて従二位となった。俺もたまたま、中宮大夫であったゆえ位を上げてもらえただけだ」斉信は公任の自尊心を傷つけぬように説いた。「お前を中宮大夫にしたのは、道長であろう。娘のことをお前に託したということだ」公任を得心させられなかった斉信は「まあまあ、まあまあ、まあまあ」と、場をつなごうとするが、「何がまあまあだ」と、公任は冷たい。「内裏にお前がおらぬと調子が出ぬ。出仕してくれ」「誰かに頼まれたのか?」「俺の気持ちだ」そんなやりとりをしていると、「大納言様がお見えでございます」と、敏子が再び現れた。後ろには実資の姿があった。「これは、不思議な眺めにございますな」実資は斉信を認めそう言った。「私どもはもとより仲間でございますゆえ」斉信が答える。

「実資殿、何かお急ぎの御用でも」公任が実資に視線を向ける。「左大臣様は長く中宮大夫を務められた末に、従二位になられた。こたびも、中宮大夫であられた斉信殿が従二位になられただけ」実資は先ほどの斉信とまったく同じ口上を述べた。「今、それ私が申したところでございます」斉信と実資はそろって気まずい顔をする。「内裏に公任殿がおられぬと調子が出ぬ」「あっ、それも今私が…」「ああ、そう…」ますます空気が重くなった。たまりかねた公任が、「誰かにお頼まれになったのですか?」と、助け船を出したが、「いや、私の気持ちである」という実資の返答で、もはや収拾がつかない。

「ああ…会いに行くなら今ですぞ。間もなく、学びの会が始まりますゆえ」公任は思い切り話を逸らすと、「では、これにて」と、実資はそそくさと立ち去った。「今のは何だ?」呑み込めない斉信は尋ねた。「実資殿も、隅に置けぬのだよ」公任の意外な答えに、「えっ、そうなのか」と、斉信は驚いた。廊下を歩く実資を、御簾の中からあらわれた女房が誘惑してきた。「今日は忙しいゆえ」実資は言葉では拒んでいるが、女房に手を引かれるままに、2人は御簾の奥へと消えていった。

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「3人の組み合わせが新しくて面白い」

ここは、お笑いのプロ2人に挟まれる公任と、堅物で知られる実資の女性好きな一面に視聴者の注目が集まったと考えられる。

この時点では、斉信は従二位、公任は正三位。現時点での位は斉信が上となったが、のちに公任も従二位に昇叙し、1009年には2人そろって権大納言となる。ムーディーな音楽と共に女性としけこんだ問題の実資だが、この頃すでにワンランク上の正二位。まじめで堅物のイメージが定着している実資ではあるが、『古事談』には道長の五男である藤原教通と遊女を巡って争ったエピソードが伝わっており、実は女好きな一面があったようだ。

SNSでも「斉信と公任のところに実資が来たシーンがおもしろすぎて声が出た」「達者な御二方を前にした町田公任さまの奮闘に拍手喝采」「公任を慰めに来てくれるなんて実資殿やさしい」「いつもBGMがいい味を出してる」「3人の組み合わせが新しくて面白い」といった、斬新な3人によるコントに多くの視聴者が反応している。

藤原公任を演じる町田啓太は、公式サイトのインタビュー動画「君かたり」で、斉信に位を抜かれた公任の複雑な心境を語っている。斉信と実資に囲まれるシーンは、台本を読んだ時点で「あ、やばい」と思ったのだそう。町田公任の久々の見せ場となったが、きっちりとランクインするあたり、さすがは町田。『光る君へ』は、シリアスとコミカルの配分が非常に絶妙な作品だが、本シーンはコミカル要素の最たる場面ではないか。