テレビ画面を注視していたかどうかがわかる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、18日に放送されたNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合 毎週日曜20:00~ほか)の第131話「月の下で」の視聴者分析をまとめた。

  • 吉高由里子 (C)NHK

    吉高由里子 (C)NHK

和紙の美しさに感激「あぁ…まことに良い紙を」

最も注目されたのは20時23分で、注目度77.4%。『源氏物語』が爆誕するシーンだ。

まひろ(吉高由里子)は左大臣・藤原道長(柄本佑)から、娘の中宮・藤原彰子(見上愛)を励ますための物語の執筆を依頼される。夫の一条天皇(塩野瑛久)から、寵愛を受けられない彰子を不憫に思ってのことだ。最初はためらっていたまひろだが、弟・藤原惟規(高杉真宙)に相談して得た助言によって迷いが晴れ、執筆を決意する。

まひろは道長に依頼を受ける旨と、物語を書くにふさわしい和紙を要望する手紙を送ると、すぐに道長が大量の和紙を持ってまひろの邸宅を訪れる。突然の左大臣の来訪に戸惑うまひろの従者たちと、不思議そうにその場の光景をじっと眺めているまひろの娘・藤原賢子(福元愛悠)。まひろの眼前に、鮮やかな青の包みにくるまれた膨大な量の和紙が並べられると、「お前が好んだ越前の紙だ。越前には美しい紙がある。私もいつか、あんな美しい紙に歌や物語を書いてみたい。と申したであろう。宋の言葉で」と、道長は言った。道長は、5年前の石山寺でのまひろとの会話を覚えていたのだ。

まひろは道長の言葉に驚き、そして和紙の美しさに感激した。「あぁ…まことに良い紙を、ありがとうございます。中宮様をお慰めできるよう、精いっぱい面白いものを書きたいと存じます」と、まひろが想いを伝えると、「うん。俺の願いを初めて聞いてくれたな」と、道長も満足そうだ。「まだ書き始めてもおりませぬ」まひろの一言で、2人はほほ笑みながら見つめ合った。

「さっきのが左大臣様?」「そうよ」福丸(勢登健雄)は信じられないといった面持ちでいと(信川清順)に尋ねる。「左大臣様がこんなとこ来るんだ…」「来るのよ」「すごいなこの家…」「すごいのよ」雲上人である左大臣を目の当たりにして驚がくする福丸の様子に、いとは誇らしい気持ちになった。その夜、まひろはさっそく筆を走らせると、書き上げた物語を道長へと手渡した。

  • 『光る君へ』第31話の毎分注視データ

「まひろが大先生の顔になっている」

注目された理由は、放送開始から8か月、ついに始まった『源氏物語』の執筆に視聴者の注目が集まったと考えられる。

左大臣・藤原道長は、亡くなった皇后・藤原定子(高畑充希)にいまだにとらわれている一条天皇の心を、自身の娘である中宮・藤原彰子に向けさせたいと考え、定子との思い出がちりばめられた清少納言(ファーストサマーウイカ)の『枕草子』を超える物語を、一条天皇に献上することを思いついた。そこには政治的な考えだけでなく、娘の幸せを願う父としての想いも含まれていた。道長にとってそのような複雑な胸中を打ち明けられるのは、ソウルメイトであるまひろだけだった。そんな道長からの依頼だからこそ、まひろも物語の執筆を了承したのではないか。

『光る君へ』の放送が始まって8か月。この間に丁寧に描かれてきたまひろと道長を中心とする人間模様と、登場人物それぞれの感情の動きが、非常に説得力のある『源氏物語』の誕生秘話に帰結していったと言えるのではないだろうか。

X(Twitter)では、「源氏物語に枕草子、いつまでも残る作品の誕生シーンが見られるなんてすごい大河だ」「ついに源氏物語が生まれる」「良い紙を前に嬉しそうなまひろがかわいい」「まひろが大先生の顔になっている」など、ようやく産声をあげた源氏物語に、多くの視聴者の興奮を伝えるコメントが投稿され、関連ワードがトレンド入りを果たした。

紙は610年に高句麗の僧から製造法が伝わったといわれ、改良を重ねてその品質を上げていった。平安時代でも非常に貴重な品であり、仏教の写経や公文書など、限られた用途でしか使われていなかった。世界最古の長編小説といわれる『源氏物語』も当然、紙がなければ現在まで伝わっていなかっただろう。そんな紙は偉大な発明であり、安価でいくらでも手に入る現代はとても恵まれた時代。越前和紙は紙の中でも特に貴重で高価なものだが、そんな越前和紙を大量に用意した道長の本気に感じ入ったまひろが、物語執筆の依頼を引き受けたのもうなずける。