大谷翔平のバッティングに大きな”異変”が!? 8月はアーチ量産も打率急降…

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8月に入っても順調に本塁打数を伸ばし続ける大谷翔平選手。しかし、その陰で打率は急降下し、首位打者争いからは一歩後退、三冠王の夢はしぼみつつある。8月の大谷翔平選手の打撃に何が起こったのか?振り返れば打撃の変化の兆しは既に7月に現れていたかもしれない。今回は大谷選手の打撃内容の変化について分析してみた。(文:島倉孝之)
 
大谷翔平の各月の打率、長打率の推移

 現地時間8月18日のセントルイス・カージナルス戦で2戦連続の本塁打を打ち、8月の本塁打が既に4月、5月の月間本塁打数と同じ7本に達したロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手。同日終了時点の本塁打はナショナルリーグ1位の39本に達している。
 
 しかし、大谷選手はこのまま三冠王へ向けてまっしぐら…とはいかない。7月末の時点で.309を記録し、しばらくナショナルリーグ1位の座を保っていた打率は、8月19日終了時点で.290と2分近く低下した。
 
 同日時点で打率.309とリーグトップのマルセル・オズナ選手(アトランタ・ブレーブス)からも2分近く離されている。一方、大谷選手が8月1日~18日に打った12安打の半分以上が本塁打、75%が長打となっている。
 
 順調に本塁打を積み重ねる一方、打率は急降下した大谷翔平選手は、果たして不調なのか?好調なのか?今回は、8月の大谷選手の打撃の変化とその原因について探っていく。
 

 
 現地時間8月18日時点の今シーズンの大谷選手の各月の打率、長打率の推移は以下のようになる。

 
 例年より高く見える今季の大谷選手の打率は、実は毎月低下を続けていた。3~4月の数字が高くその後も大幅な低下はなかったためこれまで目立たなかったが、3割を切った8月に入ってその低下が顕著になった。
 
 長打率は、6月は7割近い数字が残り、その他の月も6割前後の数字を残していたが、8月に入って5割台前半にまで低下している。





打率降下の要因として考えられるのは…?

 8月の打率の低下に関わる要素として、四球の減少が挙げられる。8月18日終了時点で、大谷選手が8月に選んだ四球の数は5と、6月(20)、7月(17)と比べても格段に少ない。
 
 8月の四球の減少は、以下のように、BB%(打席数に対する四球の割合)、BB/K(四球数を三振数で除した数値)の推移でみるとより明らかになる。

 
 5月までは10%前後で推移していた大谷選手のBB%は、6~7月は16%前後に上昇した。しかし、これが8月になると、月別で最低の6.7%にまで低下した。BB/Kの推移も類似しているが、6月に上昇したこの指標は、7月に入り、後述の三振の増加を背景に5月までの水準に戻った。8月はさらに低下している。
 

 
 AB/HR(1ホームランあたりの打数)、K%(打席に対する三振数)の月別推移は以下のようになる。

 
 3~4月はK%が20%を切る一方でAB/HRの数字が18を超え、ロサンゼルス・エンゼルス在籍時の成績とは異なる傾向を示した。5~6月は三振の増加を抑えながら本塁打の割合を高めていった。
 
 この傾向が変わったのが7月である。7月のK%は30%を超え、過去3年の本人の過去の実績値と比べても高位になった。
 
 つまり7月はこれまでに比べて三振しやすくなったのだ。7月はAB/HRも上昇し本塁打のペースも低下した。これらの数字は、8月に入ると5月を上回る水準にまで回復した。
 
 8月は、7月に比べ本塁打は多く三振をしにくくなったが、打率の推移に反映されていない。







8月は「巧打者型」から「一発長打型」に?

 大谷選手の打撃内容の変化を裏付けるデータが1つある。それは、今季から導入されたスイング指標だ。米分析サイト『Baseball Savant』によれば、大谷選手の主なスイング指標は、月別に以下のように変化している。

 
 6月までと比較して、三振が急増した7月、打率が低下した8月の方が平均バットスピードは速くなっている。
 

 
 しかし、スクエア・アップ率(バットスピードと球速からの理論上の最大打球速度の80%超の打球(スクエア・アップ・スイング)を打てた割合)、ブラスト・スイング率(速いバットスピードでスクエア・アップ・スイングの打球を打てた割合)は、6~7月に大幅な低下をみせた。ただし後者は8月に若干回復した。
 
 平均バットスピードとスクエア・アップ率の相関の月別の変化を図示すると以下のようになる。6月までと7月以降が別次元にあるように見える。

 
 2つの指標は両立が難しく、平均バットスピードが上がればスクエア・アップ率は低下する傾向にある。大谷選手の場合、6月まではスクエア・アップ率の高い巧打者タイプの特性もあったが、7月以降はバットスピードの増加と引き換えにこの率が低下し、確実性が低いパワーヒッターの傾向に向かった。
 
 もう1つのスイングに関する指標として、スイング軌道距離(スイングの大きさ)が挙げられる。月を追うごとに数値が上昇していた。
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 4月:7.5ft(約2.3m)  5月:7.6ft(約2.3m) 6~8月:各7.8ft(約2.4m)
 
 以上から、8月の大谷選手の打撃の変化の要因として、以下の点が考えられる。8月に突然起こったものではなく、これまでの打撃の変化に伏線があったはずだ。
 
 ・シーズンの経過とともにスイングが大きくなり平均バットスピードが上昇した結果、スクエア・アップ率が低下し、7月の三振の増加につながった。
 ・7月は四球が多かったために大幅な打率の低下が防げたが、四球が減少した8月に打率の低下が目立つようになった。
 ・スイング軌道距離や平均バットスピードの増加が、8月の本塁打の割合の増加につながっている。
 
 こうした打撃の変化は、実はムーキー・ベッツ選手が6月中旬から2か月近く故障離脱していた時期とも符合する。自分で決めに行く打撃内容が増えたことが影響しているのか。
 
 現在はそのベッツ選手も復帰し、大谷選手はベッツ選手につなげばいい立場になった。ファンはどうしても三冠王を期待するが、大谷選手にとって今季それ以上に欲しいものはワールドチャンピオンだろう。
 
 この目標に向けチームの勝利に直結する打撃をすることが、打率を再び向上させる近道のように思える。



 
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【了】