サマソニ大阪が万博記念公園に移転した理由、新たな環境で「異次元の景色」を演出

8月17日(土)、18日(日)に東京と大阪で開催されるサマーソニック2024。2025年の大阪・関西万博開催を控えて、大阪公演は舞洲スポーツアイランドから万博記念公園に会場を移転。主催者側の「1970年大阪が世界の中心となり、あらゆるカルチャーの集合地点となった聖地で、時空を超えた奇跡の開催」という公式コメントが示すように、今回のサマーソニック大阪@万博記念公園はロケーションも含めてたくさんの楽しみ方がありそうだ。サマソニ大阪を長年にわたり制作・運営してきた、キョードー関西の齋藤 誠さんに話を聞いた。

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—まずは齋藤さんのサマーソニック大阪でのポジションや、普段どういったことをされているのか教えていただいてもよろしいでしょうか。

齋藤:サマーソニック大阪の実施責任者という立場です。ご存じのように、サマソニは東京と大阪で入れ替わりでやっておりますが、東京と大阪では会場のつくりもインフラもまったく異なるなかで、大阪ならではのフェス作りを責任持って決めています。自分は他にも大阪でRadio Crazy(「FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY」)などのフェスにも長年関わらせていただいておりますが、一つ言えるのはさまざまな課題について合議制で決まるものは少ないということ。皆でどんどんアイデアを出して、それが間違っていようが正しかろうが、誰かが「これでいく」って決めないとフェスはできないと思うんです。大勢のスタッフそれぞれに個人のファインプレーがあったり失敗があったりするなかで、お互いを信じてフォローしながらやっていく。そういう意味では企画も運営方法も、いろんな方針によって固められるんですけど、それらの責任を自分が背負うという形です。本番中は、ゆっくりとアーティストを観て回ったり、たまにあるハプニングやクレームに対応したりしつつも、スタッフが頑張ってくれるおかげでマイペースにライブを観る時間も頂いております。

—サマソニ大阪の会場を舞洲スポーツアイランドから万博記念公園に移転しようという話は、いつ頃から浮上していたのでしょうか?

齋藤:もともとサマーソニックは20年以上の歴史のなかで、舞洲でずっと開催してきたわけではなくて。それこそ幕張メッセとマリンスタジアムのように、インテックス大阪とその隣の大きな野外広場みたいな会場の2カ所開催で、東京に近い形でスタートしていて。そこが都市開発で使えなくなり舞洲に移り、舞洲で長い期間やってきたんです。既に発表している通り、移転の理由は2025年の大阪・関西万博による土地利用の影響です。舞洲では島の半分ぐらいのエリアで工事が始まっていて、サマーソニックの規模で(舞洲を)使うのは今年からは無理だろうなというのは、2022年の秋ぐらいにはある程度予測をし、いろんな候補地を当たっておりましたね。ただ「代わりにここでやってください」と代替地を準備してくれるわけではないですから、自分たちでゼロから場所選びをするしかない。大阪以外の可能性も含めて探していて、最悪の場合、何年か大阪をお休みする選択肢も考えていましたが、そこはできるだけないように。そして、サマソニの主催者であるクリエイティブマン・プロダクションの清水(直樹)社長とも話をして、大阪で継続させようということでいろんな場所をリサーチして、関係各所のご尽力により、1970年に大阪万博があった吹田の万博記念公園で開催できることになったという運びです。

そもそも今回の移転に関わらず、吹田の万博記念公園は関東でいうところのひたちなか(ひたち海浜公園)のような場所で、自然もあって面積も広いですし、ここ全体を使ったフェスをやりたいなって何年も前から個人的に思っていたんですね。ただ公園を全面利用するのは物理的にも不可能ですし、公園の一般開放の問題もあったんですが、今回ご縁があって使わせていただけることになりました。2025年の関西万博の影響で引っ越しをする先が、70年に開催された万博の会場っていうストーリーがなければ、吹田の万博記念公園では開催できなかったと思います。それは本当にいろんな方のご尽力があって実現できたことですね。うちの会社がやりたいって言ってできるものではないので。(公園の)一部を借りてやることはできるんですが、今回のように全面を借りてやらせていただけることは、かなり特別なことなんです。

—なるほど。万博絡みのストーリー以外で、万博記念公園が魅力的だったポイントは他にありますか?

齋藤:ステージを作りやすい広場が点在していることもそうですし、モノレールや阪急、JRといった公共交通機関で成立するようなロケーションにあるっていうのが一つ大きいです。舞洲はシャトルバスが生命線なんですね。地方のフェスの宿命なんですけど、できるだけそこのお客さんの負担を減らしたいって思いが長年ありまして。吹田の万博記念公園は、もちろん近隣のシャトルバス、ツアーバスも走るんですけども、メインの動線として電車とモノレールで来場できるところが最大のメリットですね。

—駅降りたら目の前に会場があるんですよね。

齋藤:すぐですし、近隣に大きな商業施設もある。公園の中と外でずいぶん違うんです。中に入ると自然が豊かで小動物がいるような大きな公園で。でもひとたび外に出ると公共交通機関のアクセスがよくて商業施設もあり、高速道路の出口も近くて、最高の場所ですよね。

—以前、サマソニ大阪の担当でもあるクリエイティブマン・プロダクションの安藤(竜平)さんにお話を聞いたときに、「舞洲の会場では、楽屋もタイトで各ステージも近いし移動もすぐできる。夕陽と海が一望できるロケーションが大阪らしくて、大阪の良さでもある」と話してくれました。2016年のレディオヘッドのステージはコーチェラみたいな雰囲気だったとか。舞洲にまつわる話で、齋藤さんにとって特別なエピソードは何かありますか?

齋藤:舞洲のロケーションは自分も大好きで、先週も土日に、ジャイガ(「OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 2024」)という邦楽のフェスをうちのチームでやったんですが、おっしゃるように、ロッジがエリアの中心にあり、アーティストの楽屋とスタッフとが一体化するようなつくりになっていて。2日間天気が良くて、当然暑くて逃げ場もあんまりないんですけど、夕焼けが見える15時以降は本当に素晴らしいロケーションなんですね。贅沢ですけど、それは当たり前のように毎年体感していまして。ただ基本的には外ですので、天候の影響をもろに受けるエリアではあるんです。雷による中断とか、それによって時間が押したことはあるんですけど、幸い中止したことは自分の記憶にはなくて。

印象深いのは2019年、20周年のサマーソニックです。東京と大阪、3DAYSやったんですが、本当に素晴らしいラインナップで、チケットも完売して。大阪の初日のヘッドライナーがレッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)だったんですけど、台風の影響を受けてしまって。九州の方に抜けていった台風に関西も巻き込まれて、(開催日前日の)木曜日の夜ぐらいからとんでもない風が吹いてたんですよ。風も強く、金曜日の初日が迎えられるのかどうかっていう状況でした。次の日が本番なのに木曜の夜中まで、スタッフがテントに集まって養生したり、せっかく建てたテントも全部ばらしたりしてましたね。結局のところ風速20m近くなりましたから、ステージの大きな屋根を下げざるを得なかった。要するに全ての作業がストップしてしまって、2時か3時ぐらいまで動けなくて、朝一から作業ができたんですが、前日何もできなかった分の作業を本番の朝にやったので、その分どんどん開演の時間が押して、ステージに上がれなかったバンドもたくさんいたんです。レッド・ホット・チリ・ペッパーズだから、持ち込まれる機材の物量もものすごく多くて作業が全然捗らなくて。1日かけてやる作業を当日の朝からやっているので当然なんですけど。

東京から来てくれた何組かのアーティストが裏でスタンバイをしているんですが、楽器も組んでて衣装も着て、あとはもうステージに乗せるだけっていう状態で、「すみません。間に合いません」っていうのを、1組目、2組目、3組目、4組目と言い続けて、どんどんキャンセルになっていくのが、本当に残念でお客さんとアーティストに申し訳ない気持ちで一杯でした。

新ロケーションならではの注目ポイント

—ありがとうございます。サマソニに話を戻しますと、新ロケーションならではの注目ポイントって何かありますか?

齋藤:舞洲は緑の少ないところでしたが、今回は緑のど真ん中なので、同じステージで同じコンサートをやるにしても完全なるリニューアルだと思うんですよ。来る人にはまず自然を楽しんでほしいって思いがありますね。川が流れてたり小動物がいたり、虫もいたりするんですね。ある意味フジロックの自然に囲まれたロケーションであったり、サマーソニック東京やロック・イン・ジャパンのアクセス面での利便性だったり、それぞれの利点を得たフェスになると思います。ロケーション以外での新しいことでいうと、70年の万博の会場ですから、随所に遺産が残ってるんですね。1970年の大阪万博って、テクノロジーの変革期であり、カルチャーの集合地点でもあったと思うんです。なのでオブジェ一つ、デザイン一つにしても、公園の随所にあるサイケデリックな要素を自然の中に感じられるんですよ。当時のパビリオンの名残もあるので、そこに仕込んだ装飾も多いですし、あとは今、鉄鋼館っていうところで70年当時の万博の装飾や展示物を一部展示してあるんですね。通常の公園のオープン時間で有料で見られるんですけども、サマーソニック開催中は来場者は全員見られる。そこはタイムスリップしたような作りにもなっているので、見どころがめちゃくちゃあります。隣に新しくできた別館に、初代の太陽の塔の顔が飾られていて、すごく大きくて圧倒されるんですが、そこでもライブをやるんです。自然に溶け込んだフェスならではの装飾や展示物がたくさんあるので、いわゆる飲食ブースにしてもロケーションが全然違います。何もない更地に屋台が並んでいるのと、森の中に並んでいるのとでは全く違いますので。新しいサマーソニックとして楽しんでもらえれば、うれしいです。

—鉄鋼館・別館のステージは新しいステージですか?(※取材時は情報解禁前)

齋藤:「PAVILION」っていうステージになります。シンプルにライブのステージとして、ヒップホップやR&Bのアーティストを中心に集めてやります。

—ちなみにどなたが出られるんですか?

齋藤:大沢伸一さんやFPMの田中(知之)さんから、PAS TASTA、Licaxxx、Leinaまで、多様ですね。

—クラブイベントっぽいというか。

齋藤:そうなんですよ。今回の唯一の室内です。

—フリーテントエリアも今回充実してそうですよね。

齋藤:万博記念公園はアウトドアフェスも頻繁に開催されている公園ですので。大阪のキッスコーポレーションという会社にテント運営もやってもらって、今までのサマソニ大阪にはなかった装飾とか、デイキャンプとしてはボリュームのあるエリア分けになってると思います。

—齋藤さんは大阪で他にも多くのフェスやイベントを制作されていますが、大阪で海外アーティストのライブを同じ場所で観られること自体、今では貴重な体験という気がします。

齋藤:洋楽に関しては、東京だけで公演をやるアーティストも最近は多いんです。大阪や地方に行ってしまうと滞在費とか移動のコストなどの問題があって。もちろん地方に来てくれる海外アーティストもいますけど、極端な話ドームクラスとか、大きな会場になればなるほど、東京だけやって、次はアジアの他の国に行ってしまうことが多い。時代の流れとしてそういう動きはあるんですね。そのなかでこれだけの海外アーティストが一堂に会してアーティストロゴ、2日間で凝縮して観られるのはフェスでしかありえないと思います。東京と大阪で温度差が多少あるとは思うんですが、海外アーティストのラインナップがこれだけ揃っていることは誇らしいというか。それを受け入れる体制があるのも大阪ならではかな、という気はしますね。

—サマソニに出るような海外アーティストたちのライブを、大阪の人たちに届けることができるのはやりがいでもありますか?

齋藤:そうですね。サマーソニックは東京と大阪で入れ替わりでやるスタイルを当たり前のように、20年以上やらせてもらっていますけど、よくよく考えると、これだけの洋楽アーティストが東京に一極集中している時代で、日替わりで東京、大阪に、機材も含めて何十人、何百人と移動してくれる。それは感謝しかないですよね。初日に東京でやってそのまま移動して2日目に大阪でやるって、敬遠する人も多いと思うんです。体力的な問題があったり、持ち込んだ照明や自分たちなりの演出を、土曜日に東京でやったものをばらして日曜日にまた大阪でできるようにするとなると、それなりの手間がかかる。なので我々はできるだけのおもてなしを、大阪ならではのケータリングやインフラを整えて、快適に過ごしてもらえるように力は入れています。

—齋藤さんのような方が大阪を支えてくださっているから、ここまで続いてるんだなとあらためて思いました。

齋藤:全てはスタッフのおかげです。社内外問わず。自分はやりたいことをワーワー言ってるだけです。

—最後に、今年のサマソニで齋藤さんが楽しみにしているアーティストのステージがあれば教えてください。

齋藤:いや、もう本当に絞るのは難しいです。邦楽アーティストも吟味されていて、Vaundyも大阪だけですしね。皆さんVaundyのライブをフェスとかで観る機会多いと思うんですけど、洋楽のラインナップに挟まれて万博記念公園の中で、限りなく自然に近いところでやるライブは凄いと思います。邦楽では羊文学も今回のロケーションに合うと思いますし、洋楽ではヘッドライナーは言わずもがななんですが、コーチェラに出ていたアーティストがそのまま東京と大阪で観られるのは、世界とつながっている感じもします。東京ではソニックマニアに出るアンダーワールドは、マウンテンステージのトリですから、黄昏から夜にかけて彼らの音楽を野外で聴けるのは、異次元な感じがするんじゃないかなと思ってますね。あとは純粋にアギレラ(クリスティーナ・アギレラ)は絶対観たいです。カムバック組が今年はかなり多いと思いますね。なので、先ほどお伝えしたようなコーチェラに出てるようなアーティストだったり、クリスティーナ・アギレラといった往年のアーティストだったり、客層は違うと思いますが野外の森の中で聴けるアンダーワールドだったり。それぞれのステージによって表情が違うと思いますし、そこにはまったアーティストは本当におすすめですね。

—大阪2日目のMOUNTAIN STAGEは海外のフェスみたいな並びですよね。

齋藤:そうなんですよ。観ていて今自分がどこにいるのか分からなくなると思います。もともと万博記念公園って夏にライトアップしてるんですけど、それに加えていろんな明かりの演出もあるので、異次元の景色になると思います。

—ロケーションも含めて、音楽を120%楽しめると。

齋藤:住宅街の中にある公園なので、できるだけご迷惑をかけないようにしないといけないなとは思っていて。いろんな方に理解をしていただきながら、都心の公園でフェスができることをなんとか証明したいと思います。

SUMMER SONIC 2024

2024年8⽉17⽇(⼟)18⽇(⽇)

東京会場:ZOZOマリンスタジアム & 幕張メッセ

⼤阪会場:万博記念公園

<東京会場>

開場 AM9:00 / 開演 AM11:00

チケット

・1DAYチケット ¥19,000(税込)

・2DAYチケット¥36,000(税込・枚数限定)

・プラチナチケット ¥33,000(税込・枚数限定)※サマソニ1DAY+プラチナ特典

<プラチナ特典>専⽤ヴューイングエリア/専⽤ラウンジ/専⽤トイレ/専⽤クローク/グッズ売

り場ファストレーン/ウェルカムドリンク/会場間専⽤シャトルバス

<大阪会場>

開場AM10:00 / 開演AM11:00

チケット

・1DAYチケット ¥16,500(税込)

・2DAYチケット¥32,000(税込・枚数限定)

・プラチナチケット ¥28,000(税込・枚数限定) ※サマソニ1DAY+プラチナ特典

<プラチナ特典>専用ヴューイングエリア/専用ラウンジ/専用トイレ/専用クローク/グッズ売り場ファストレーン/ウェルカムドリンク

※チケット代に万博記念公園入園料含む。

https://www.summersonic.com/