東京・大手町の三井住友銀行東館アース・ガーデンで、8月10日から、ヘラルボニーが主催するアート展が始まります。ヘラルボニーは、「異彩を、放て。」をミッションに、主に知的に障害のある作家が生み出すアート作品を通じて、多彩な活動を展開しているアートエージェンシー。これまでJALや資生堂などさまざまなブランドや企業とコラボレーションし、異彩アートが放つ独創的なクリエイティブで商品デザインや空間プロデュースを行っています。

  • 「HERALBONY Art Prize 2024 Exhibition」会場風景

今年5月にはルイ・ヴィトンやクリスチャン・ディオールなどのメゾンを傘下に持つLVMHが設立した、革新的なスタートアップを評価する「LVMH Innovation Award 2024」にて、日本企業として初めてファイナリスト進出し、「Employee Experience, Diversity & Inclusion」カテゴリ賞を受賞。初の海外拠点としてフランス・パリに現地法人を設立し、世界最大級のスタートアップ集積施設「Station F」に拠点を構え、LVMHグループの75のメゾンとのコラボレーションの促進や、専門家によるアドバイスといったバックアップを受けながらの事業展開も予定しています。

  • 「HERALBONY Art Prize 2024」授賞式の様子

そんな注目の福祉実験カンパニーが、このほど、世界中の障害のある表現者を対象にした国際アートアワード「HERALBONY Art Prize 2024(ヘラルボニー・アート・プライズ)」を初主催しました。1人ひとりの作家としての才能を評価し、さらなる活躍の機会を生み出すことを目的に創設し、第1回目ながら、世界28カ国・924名のアーティストから、総数1,973点の作品の応募があったそう。

  • Co-CEOの松田崇弥さん(左)、松田文登さん(右)

同社Co-CEOの松田崇弥さんと松田文登さんは双子の兄弟で、4つ上に知的障害を伴う自閉症の兄がいます。「社会側からみて障害者という枠組みに入ったとたんに、『なんだかかわいそう』というアンコンシャスバイアスをかけられることに、違和感を感じていました。支援とか貢献とかSDGsとかCSRとかソーシャルデザインという言葉を使うことなく、純粋に作品として評価される枠組みを作っていけないか。そんな“強き一歩”が作られることで、障害のある人だけでなく、いろんな人たちの一歩が受容されていくような価値観をつくっていきたい」。“根本は、兄の幸せを願う選択をし続けるため”と、同アワードを創設したきっかけを語ります。

  • 「ヘラルボニー」は兄の翔太さんが7歳の頃に自由帳に記した言葉だ

今回、グランプリに輝いたのは、仙台市在住の浅野春香さんの作品「ヒョウカ」。「評価されたい」という自身の純粋な感情から制作された作品は、満月の夜の珊瑚の産卵をテーマに、切り広げた米袋に満点の星空や宇宙、満月などのモチーフが緻密に描かれています。20歳で統合失調症を発症後、入退院を繰り返しながら闘病を続けている浅野さん。「評価されたい」という欲求を「恥ずかしいこと」だと思っていたそうですが、ある人から「それもあなたの素直な気持ちの表れ」と言われたことをきっかけに、ありのままの気持ちを表現して良いのだと気づいたといいます。

  • グランプリに輝いた浅野春香さんの作品「ヒョウカ」

また、7名のアーティストが「企業賞」を受賞。受賞作品はゴールドスポンサー7社の企業のサービスやプロダクト、事業のいずれかへの起用を予定。たとえば丸井グループ賞の受賞作品はカードのデザインに、JAL賞の受賞作品はJAL機内での起用が予定されており、「受賞して終わりなのではなく、しっかりと出口も用意している」と松田崇弥さん。

  • ヘラルボニーと企業のコラボレーションアイテム

展覧会に展示されるのは、グランプリほか各賞受賞作品、そして最終審査に残った作品を含む全62点。世界11カ国から、海外作家20名、国内作家38名による多様で多彩な作品が集結しています。会期中には、ヘラルボニースタッフが作品を紹介する鑑賞ツアーや、夏休み企画として、小学生と保護者向けのアートクルーズも実施するそう。期間は8月10日から9月22日まで、入場は無料です。

■information
「HERALBONY Art Prize 2024 Exhibition」
会場:三井住友銀行東館 1F アース・ガーデン
期間:8月10日~9月22日(10:00~18:00)/入場無料