米労働省が8月2日に発表した7月雇用統計の主な結果は、【1】非農業部門雇用者数11.4万人増、【2】失業率4.3%、【3】平均時給35.07ドル(前月比+0.2%)、前年比+3.6%)という内容であった。

  • 7月雇用統計まとめ

【1】雇用者数

7月の非農業部門雇用者数(季節調整済)は前月比11.4万人増と市場予想の17.5万人増を下回った。また、5月分が2.7万人、6月分が0.2万人それぞれ下方修正された。米国の雇用情勢の基調を判断する上で重要視される3カ月平均の増加幅は17.0万人となり、6月に記録した約3年半ぶり低水準(16.8万人)付近にとどまった。

  • 米非農業部門雇用者数の推移

【2】失業率

7月の失業率(季節調整済)は4.3%と前月および市場予想の4.1%を上回り、4カ月連続で上昇。2021年10月以来の水準に悪化した。フルタイムの職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)も前月の7.4%から7.8%へ上昇。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は62.7%となり、前月と変わらずの62.6%を見込んでいた市場予想を上回った。職探しを再開するなどの求職者が増えたことで失業率が上昇した面もあったと考えられる

  • 米失業率と労働参加率の推移

【3】平均時給

7月の平均時給(季節調整済、全従業員)は35.07ドルと前月の修正値34.99ドルから0.08ドル増加。伸び率は前月比+0.2%、前年比+3.6%で、いずれも市場予想(+0.3%、+3.7%)を下回った。前年比の伸び率は2カ月連続で鈍化。2021年5月以来の低い伸びとなり、賃金インフレ圧力が低下していることが浮き彫りになった。

  • 米平均時給の推移

まとめ

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が7月末の会見で9月の利下げ開始を示唆したことから大いに注目された米7月雇用統計は、「雇用の下振れリスクは、今や現実のものだ」としたパウエル議長の予言通りに軟化を示した。中でも失業率は、FRBが6月に示した年末の予測値である4.2%を上回って上昇しており、市場に利下げを強く意識させる結果となった。賃金(平均時給)の伸びが鈍化したことも利下げ観測を後押しした。次回の8月雇用統計が著しく強い結果でない限り、FRBが9月17-18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げに着手することはほぼ間違いないと見て良いだろう。もっとも、米金利先物市場は早々と9月利下げを織り込み、利下げ幅が通常の2倍に相当する50bp(0.25%ポイント)になるとの織り込みも80%以上に急拡大した。この点から見ると、市場は米経済がソフトランディング(軟着陸)に失敗して、急激に景気が悪化するハードランディング(衝撃を伴う強硬着陸)に向かうとの観測を強めている模様だ。米7月雇用統計の結果はたしかに冴えなかったが、現時点でハードランディングシナリオを正当化するほどの悪化とまでは言えないだろう。その意味でも、9月6日に発表される次回8月雇用統計には、より大きな注目が集まりそうだ。