1987年に刊行された内田春菊氏の人気漫画『南くんの恋人』。高橋由美子&武田真治で連続ドラマ化した1994年版を手掛けた岡田惠和氏の脚本で、「男女逆転バージョン」として新たに誕生したテレビ朝日系ドラマ『南くんが恋人!?』(毎週火曜21:00~ ※6日は休止、13日に第4話放送)が現在放送されている。
今作のヒロイン・堀切ちよみを演じているのは、女優の飯沼愛。2021年、女優発掘・育成オーディション『TBSスター育成プロジェクト 私が女優になる日_』で約9,000人の中から1位に選ばれ、ドラマ『VIVANT』や『マイ・セカンド・アオハル』(いずれもTBS)といった話題作への出演が続く飯沼が、今作でGP帯ドラマ初主演を飾っている。今回は飯沼に、94年版南くん・武田から受けたアドバイスや、15センチの手のひらサイズになった南くんを演じるFANTASTICS八木勇征の印象、今後の見どころについて話を聞いた。
『南くん』ちよみ役に抜てきされ驚き
――歴史ある『南くん』シリーズへの出演が決まったときの心境を教えてください。
あの『南くん』シリーズのちよみを私が演じることになるなんて、最初は驚きしかありませんでした。でもやっぱりうれしくて、今回は小さくなるのが南くんだったりと、これまでと違う展開もあるので、どんな作品になるんだろうとワクワクする気持ちもありました。
――今回はゴールデンプライム帯連ドラ初主演ということで、会見では錚々たるベテランキャストの皆さまがいる中で座長として真ん中に立たれましたが、緊張しましたか。
会見はかなり緊張しました。会見で皆さんから素敵なお言葉をたくさんいただいたのですが、褒められることにあまり慣れていないのでドキドキしてしまって。
――祖母役の加賀まりこさんや母役の木村佳乃さんが「娘みたい」「かわいい」と仰っていて、かわいがられているのが伝わってきました。
いつも「ちゃんと食べてる?」「今日は早く帰れるの?」と、娘のように心配してくださっています。
登場人物皆を好きにさせる岡田惠和氏の脚本
――飯沼さんは、オーディション番組で岡田さんの脚本に挑戦したというご縁もあり、ドラマ発表時には「岡田惠和さんの作品をやりたいとずっと思っていました」とコメントされていましたが、改めて岡田さんの脚本の魅力を教えてください。
キャラクター一人ひとりが愛おしく感じられるところが大好きです。ちよみたち、メインとなる登場人物はもちろん、あまりフォーカスが当たらないようなキャラクターも皆、愛してしまうというか。一人ひとりに愛がこもっていて、まるっと皆を好きにさせる、そんな魅力があると思います。
南くん役・八木勇征とは別々に撮影
――南くんを演じる八木さんとは会見でも息ぴったりでしたが、八木さんの印象を教えてください。
穏やかで、他愛もない話にもいつも付き合ってくださる、素敵な方です。ちよみと15センチの南くんとのシーンは別々に撮影しているので、「このシーンこうだったよ」「昨日の撮影はどうだった?」と、お互いの撮影について会うたびに話しています。
――別々に撮影するのは難しいですか。
私は15センチサイズの人形を南くんに見立ててお芝居をしているのですが、難しいです。武田さんたちが、何の違和感もなくファンタジックな世界観を作り上げていたのがどれほどすごいことか、自分がやってみて初めて痛感しました。
武田真治のアドバイスに救われる
――武田さんの時代は、人形相手じゃなく、15センチのチョコバーを相手にお芝居をされていたとか。“恋人が15センチになる”役を演じた先輩・武田さんからのアドバイスは。
武田さん自らアドバイスしたいと仰ってくださって、技術的なことや作品に対する向き合い方まで、いろんなお話を聞くことができました。ちよみという魅力的なキャラクターを、私が表現できるか不安ですと相談したら、「岡田さんの本が自然と導いてくれるから、あまり力み過ぎなくて大丈夫だよ」と言ってくださって、救われたというか。その言葉を信じて、自分を信じて、楽しんで撮影できるようになりました。
これからの『南くん』にはシリアスな展開も
――飯沼さんから見た、ちよみの魅力を教えてください。
ちよみは、とにかく愛情深い女の子です。南くんや家族に対する愛はもちろん、たとえば、ライバルの美鈴コーチ(演・武田玲奈)にも。普通なら、美鈴コーチに対して嫌な態度をとってしまったり、嫌悪感を抱いてしまっても、おかしくないのに、南くんがいなくなって不安や葛藤を抱える美鈴コーチの気持ちさえも、ちよみは理解しようとするんです。この状況で美鈴コーチのことも心配できるなんて、本当に優しい子だと感じます。
――ちよみの恋人である南くんの魅力は。
第1話で、南くんが試合でいいプレーをしたときや試合に勝ったとき、ちよみに向かっていろんなサインやピースをしていたように、南くんはいつもちよみのことを見てくれているんです。恋人だからというだけじゃなく、一人の人間として大切にしてくれていて、だからちよみは安心できるし、南くんが心の支えになっているんだなと、演じていて感じます。南くんは地元のスターというハードルの高い役どころですが、八木さんが演じることで説得力にあふれていて。回を重ねるたびに、南くんの魅力に夢中になる視聴者の方が増えていくと思うので、私も楽しみです。
――では最後に、今後の『南くんが恋人!?』の見どころを教えてください。
南くんが15センチになったばかりのときのちよみは「かわいい」「今、この時間を楽しもう」と明るく受け止めていましたが、これから2人の周りにいろんな問題が起こって、現実を知っていって、「一緒にいられて楽しい」という気持ちだけではいられなくなってしまいます。爽やかで楽しいコメディから、少しずつ、リアルでシリアスなドラマが展開されていくので、この先もぜひご覧ください。
2003年8月5日生まれ、香川県出身。2021年に「TBSスター育成プロジェクト『私が女優になる日_』」で応募総数9,000人の中からグランプリに輝き、同年放送された同局のよるおびドラマ『この初恋はフィクションです』で女優デビューにして初主演を務めた。近年の出演作にドラマ『パパとムスメの7日間』、『アトムの童』、『VIVANT』、『マイ・セカンド・アオハル』など。