昨年11月、2023年1~9月のテレビ番組制作会社の倒産が、過去10年間で最多を更新したことを、東京商工リサーチが発表。コロナ禍で減少した受注が従前の規模まで回復せず、テレビメディア広告費の漸減傾向が続く厳しい環境が浮き彫りとなった。

そんな中で、右肩上がりで売上を伸ばしているのが、UNITED PRODUCTIONS。『トークサバイバー! ~トークが面白いと生き残れるドラマ~』(Netflix)、『千鳥の鬼レンチャン』(フジテレビ)といった人気バラエティの制作を手がけ、2019年から2023年の4年間で収益は2.7倍に拡大し、5~6年後には現在のさらに倍の収益規模を目指しているという。

なぜこの環境下で成長を続けているのか。「日本一のコンテンツサプライヤーになる」というミッションを掲げる森田篤社長に、今後の展望を含め話を聞いた――。

  • UNITED PRODUCTIONSの森田篤社長

    UNITED PRODUCTIONSの森田篤社長

合併を進める中でコロナ禍「これからという時に二重苦」

UNITED PRODUCTIONSの源流は、森田社長がディレクター仲間4人で2008年に創業した番組制作会社・フーリンラージ。「fool=バカ」と「enlarge=誇張」をかけ合わせて「思い切りバカをやる」という思いを込め、主にバラエティ番組を制作してきた。

『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日)、『櫻井・有吉THE夜会』『マツコの知らない世界』(TBS)といった人気番組を手がけ、順調に事業を展開してきたが、「もっと成長スピードを上げたい」と考えていた森田社長。

そんな中、ゲームセンター事業からエンタメ事業への転換を進める最中にあったKeyHolder社が、映像コンテンツを作れるプロダクションと経営者を求めていたことで、双方の思惑が一致。19年に同社の傘下に入り、豊富な資金力を背景に、さらなる成長を推進していくことになった。

その後、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS)や『全裸監督』(Netflix)などを制作していたイメージフィールドの一部事業を承継し、KeyHolder社傘下のKeyProductionと合併するタイミングで、フーリンラージから現在のUNITED PRODUCTIONSに社名変更。森田社長は「フーリンラージ」の社名に愛着があり、傘下に入る際もこの名前を残すことを第一条件にしていたほどだったが、「買収を進めていくうちに、フーリンラージ出身の社員が4分の1未満になったので、看板を下ろしました。でもブランドを一新して、いちから再スタートを切るという意味でも、この判断は正しかったと思います」と語る。

テレビ制作会社同士の合併はあまり事例がなく、ディレクターという業種が職人気質な部分もあって、風土が大きく異なる企業が一緒になることは、「めちゃくちゃ難しくて、そこは苦労しました(笑)」と吐露。

特に、イメージフィールドに関しては、民事再生手続を行った経緯に加え、ドラマ・映画の制作会社ということもあり、「文化が全く違う」事態に直面。「当初は自分の声が全然届かず、のれんに腕押しのような感じで、リーダーシップを発揮するのが難しかったです」という上、2020年春にはコロナ禍に突入したことで、「これからという時に二重苦のような感じで、経営者としては非常に苦しんだ時期でした」と振り返った。

『トークサバイバー!』がターニングポイントに

そんな厳しい時期を乗り越え、コロナも落ち着き、社員と丁寧なコミュニケーションを重ねることで、「2022年くらいから、ようやく一枚岩となってきて、フランケンシュタインのようなつぎはぎロボットのような状態から、本当に超合金合体マシーンのように機能するようになってきました」と手応えが。それを象徴するコンテンツが、この年に制作を担当した、元テレビ東京の佐久間宣行氏プロデュースによる『トークサバイバー! ~トークが面白いと生き残れるドラマ~』(Netflix)だった。

「佐久間さんとはテレ東時代から『あちこちオードリー』を制作してお付き合いがあったのですが、『トークサバイバー!』はドラマとバラエティが一体になった番組なので、弊社がドラマとバラエティの両方のプロダクション機能を持っているということで、お話を頂きました。Netflixも、ドラマ部分とバラエティ部分を別々の会社に発注することは想定していなかったようで、両ジャンルをしっかりつくれるプロダクションとして選んでいただいたのだと思います」

『トークサバイバー!』は今年2月にシーズン3の制作も決定する人気シリーズとなり、「どんどん規模も大きくなっていって、売上としてもインパクトのある作品になりました」と、ターニングポイントの1つになった。

  • 『千鳥の鬼レンチャン』(C)フジテレビ

2022年は、人気バラエティ番組『千鳥の鬼レンチャン』(フジテレビ)がレギュラー化した年でもある。翌年には、大型特番『FNS27時間テレビ』のメイン番組となって結果を残し、コア視聴率(13~49歳)の強さが評価され、同局の「社長賞」も受賞するなど今やフジの看板番組となっている。