小池栄子と仲野太賀がW主演するフジテレビ系ドラマ 『新宿野戦病院』(毎週水曜22:00~)。日本の医師免許を持たないアメリカ国籍の元軍医(小池)と、美容皮膚科医(仲野)が、新宿・歌舞伎町を舞台に“救急医療”で奮闘するという、脚本家・宮藤官九郎初の医療ドラマだ。
演出を務めるのは、フジテレビ・エグゼクティブディレクターの河毛俊作監督。80年代は『君の瞳をタイホする!』や『抱きしめたい!』(ともに88年)といったトレンディードラマの先駆け的作品を手掛け、90年代には『沙粧妙子-最後の事件-』(95年)や、『ギフト』(97年)、『きらきらひかる』(98年)など、ハードで社会派な名作も数多く演出してきた。
そんな河毛監督に、今作の制作秘話はもちろん、宮藤氏に医療ドラマを依頼した経緯、“役者・宮藤官九郎”との出会いなどを聞いた――。
フジでは長く書かれていなかったから…
宮藤官九郎脚本ドラマと言えば、2000年の長瀬智也主演『池袋ウエストゲートパーク』を皮切りに、熱狂的ファンを巻き込んで映画化までされた岡田准一主演『木更津キャッツアイ』(02年)、直近では1月クールに放送され話題作となった阿部サダヲ主演『不適切にもほどがある!』など、TBSでの作品が目立つが、過去に一度だけフジテレビで執筆したのが、織田裕二主演『ロケット・ボーイ』(01年)。この作品の演出を手がけたのが、河毛監督だ。
今回、どのような経緯で23年ぶりにタッグを組むことになったのか。
「コロナが始まった頃、4年前くらい前かな。宮藤さんが『俺の家の話』(21年、TBS)を書いてる時だったんだけど、僕から連絡したんです。ずっとTBSさんでやられてきて、日テレさんでもやってきたけど、フジでは長く書かれていなかったから、僕が元気なうちに一緒にやりたいなって。
どんなジャンルがいいかという話をしたら、医療ドラマをやったことがないって返ってきたんです。実は僕の中で、今回のベースとなるような企画を考えていて、それが、変わった人たちが集まる病院の、ある種ちょっと危険な街の“赤ひげ”みたいな話。そこで、“こんな話はどう?”って聞いたのがきっかけですね」(河毛監督、以下同)
「衣食住」の“衣”は“医”でもある
そのアイデアは、河毛監督が04年に担当した江口洋介主演の『救命病棟24時』第4シリーズでの取材から生まれたものだという。
「医療監修の先生に、救命医療には大変な患者さんもお見えになると聞いていたんです。例えば、何度も同じ人が運ばれてくるということがあるんだけど、そういう話は『救命病棟―』では扱いづらかったんですね。だけど、そういうところに光を当てるって言ったら変だけど、そんな話を宮藤さんとやったら面白いんじゃないかと思ったんです。
“衣食住”という言葉があるけど、僕はその“衣”を、医療の“医”でもあるなって思っていて。やっぱり人間が生きていく上で“医”は必要不可欠なインフラじゃないですか。だからこそ医療をいろんな角度から描くべきだし、これだけたくさんの医療ドラマがあって、天才外科医とかそういう話も面白いかもしれないけど、もっと違う角度の医療ドラマを宮藤さんとだったらできるんじゃないかと思いました」