来たる土用の丑の日に先駆け、「外食チェーンのうな丼チェック 2024」が開催された。

人気の大手外食チェーンが販売するうな丼を鰻のプロが食べ比べ、ナンバーワンを決めるこの企画。主催は、うな丼チェック2024実行委員会で5回目の開催となっている。

  • 大手外食チェーン6社のうな丼チェック2024!1位はどうなる?

今年は厳正なる審査の結果、3位はすき家、2位はキッチンオリジン、そして栄えある1位はなんと……あのお店!!

「去年より全然レベルが上がっている」とプロも唸った今大会の様子と結果について、その一部始終をレポートしよう。

■プロ3名が外食チェーンのうなぎメニューをジャッジ!

業界注目度が高く、その年の売上を左右するとも言われる「外食チェーンのうな丼チェック」。

うなぎ業界を盛り上げる目的で開催され、昨年までは「鰻と丼の情報発信サイト」が4年連続で実施していたが、今年から「うな丼チェック2024実行委員会」がその運営を担うこととなった(共催は恒健社)。

今大会で食べ比べたのは全国に店舗を持つ外食チェーン大手でも美味しいうな丼を提供している「オリジン弁当」「ガスト」「くら寿司」「すき家」「松屋」「吉野家」(アイウエオ順)で、実行委員会で事前審査を行って選ばれた6社。昨年の覇者は松屋で、すき家が1度、ガストは2度、1位になっている。

  • 6社のうな丼が出そろった

今回は東京亀戸の鰻の名店『八べえ』の二代目である山﨑裕八氏が評価委員長を務め、東京春日の老舗『わたべ』の渡部善隆氏、主に神奈川を中心に展開する『鰻々亭』グループの長谷川みゆき氏が評価員として参加した。山﨑氏の参加は昨年に続き2度目。

  • 今大会の評価員たち。左から渡部さん、長谷川さん、そして評価委員長の山﨑さん

評価員は各社のうなぎメニューを「見た目の美しさ」「焼き具合」「切り身の取り方」「うなぎの食感」「香り」「蒲焼きの味付け」「美味しさ感、満足感」「ご飯の美味しさ」「タレの味付け、蒲焼きとの相性」「薬味(山椒)の美味しさ」の10項目を8点満点でそれぞれ審査。最終的に3者の採点表を集計し、その合計点で順位を決める。

  • うな丼チェックの評価リストは10項目!

評価中のルールは公平性を期すため、【1】同じ日時に購入したものを同じタイミングで食べること、【2】評価員はどの店の商品を食べているかわからない状態で試食すること、【3】評価員同士が点数に影響を与えないよう物理的な敷居を設けて黙食すること――など、料理評価方法としては世界的な規準に従って、厳格に定められている。

  • 試食は匿名性を担保するため店名を伏せ、容器も移し替え、A〜Fに振り分けて実施

実行委員長からひととおりのルール説明を受けたのち、いよいよ実食スタート。会場に緊張感が走る。

  • 真剣にうな丼と向き合う3人

静寂に包まれる会場。評価員たちは黙々と試食&採点表への記入を繰り返していく。試食を終えた評価員たちは各自、外観チェックへと進む。

外観チェックでは、焼き具合を見ているが、特に皮面に焼きを入れるのが難しいため、評価員は箸を使って6社の蒲焼きをひっくり返して、皮の焼き具合を見ているという。

■厳正なるジャッジを終え、総合評価討論会へ!

約20分に及んだ審査を終え、どこか肩の荷が下りた様子の評価員たち。裏で集計している間に、大会は総合評価討論会へと移行した。ファシリテーターを務めたのは、鰻と丼の情報発信サイトの元編集長で、初回から実行委員長を務める中西純一氏(恒健社書籍編集部編集長)である。

  • 緊張が解けてやっと笑顔になる3人

中西 みなさん、お疲れ様でした! まずは各社のうなぎを食べ比べた感想をお願いします。

長谷川 単体で食べるのではなく、一斉に食べ比べたことで味の違いがよくわかりました。うなぎの質や味、タレの風味などはそれぞれ違いがありましたが、比較的どのうなぎも美味しかったと思います。

渡部 僕も全体的に美味しかったのが印象的でした。身も箸で切れるほど柔らかかったし、こんなにレベルが高いものなんだなって驚いています。自分の好みのうなぎもあったので、お店にも食べに行きたいですね。

山﨑 全体的に去年より美味しくなっていますね。お店の顔ぶれは一緒ですが、どこもクオリティが上がっています。去年は正直、「缶詰のうなぎか?」と思うようなものもあったのですが、今年は全然違いました。

中西 本当に毎年レベルが上がってきているんですよ。一昨年は ウナギのサイズが大きくなったんですよね。肉厚ですし。前はもっと薄っぺらかったり、小さかったりしたのですが、我々のようにグラム数まで計る人間が出てきたので……(笑)。タレにこだわる店も増えましたね。

山﨑 以前は、みたらし団子のタレみたいな味のものもありましたよね。

中西 そこも各社が研究していて、例えばタレにウナギの骨の粉末を入れてウナギらしい味を出すなど、工夫が見られるようになりました。ちなみに、値段はどの会社も1000〜1200円くらいですが、コスパ的な面はいかがでしょう?

渡部 全然ありだと思います。やっぱりすごく企業努力されてるな、と。正直、怖いくらいですよ。こんな値段でやられちゃうとねぇ……(笑)。

中西 6社の中で特に良かったものはありますか?

山﨑 僕はAです。すごく柔らかくてビックリしました。蒸し方にもこだわってますよね。

  • Aのうなぎ。どこのお店なのか、その答え合わせは後ほど

長谷川 
Cも結構柔らかかったと思います。

渡部 そうですね。Cのうなぎはすごく柔らかくて、香りもよかった。焦げ感もちょうどよかったので、ご飯が進む味だなって感じました。


  • Cのうなぎ。答え合わせは後段で。タレのパッケージは極力見ないように!

中西 作り方については、AとBとEが「4度焼き」だそうです。通常は「3度焼き」で、明言してない店はおそらく「2度焼き」くらいかなと思います。

山﨑 昨年1位だった松屋さんは「4度焼き」でしたね。確か昨年は、満場一致で松屋さんが優勝だったんですよね。

中西 そうですね。ところでみなさん、ブラインド式で食べてみて、「これはあの店なんじゃないか」っていう当たりはつきましたか?

長谷川 難しかったのですが、ひとつだけ「もしかしたら」って思うものはありました。ついこの前、くら寿司さんに行ったのですが、その味とちょっと似てるなって思ったんです。

渡部 う〜ん、僕は今回のチェーン店のうなぎはどれも食べたことがないので、ちょっと想像がつかないですね。

中西 「特にここのうなぎはダメだった」というのはなかったですか?

山﨑 一個だけ、「結構、醤油とみりんの臭さが出ちゃってるな」と思ったタレはありました。

中西 外食チェーンって、うなぎだけを作ってるわけじゃないので、味付けは一番難しいですよね。特に牛丼チェーンは牛丼と合わせた「うな牛」もあって、牛丼のタレと合わせた味を考えないといけなかったりもしますし、ガストはファミレス、くら寿司は寿司チェーン。それぞれメインの料理に合わせたうなぎメニューを作っているので、どうしてもそれぞれ求める味が違ってくるっていう。

山﨑 なるほどですね。

中西 おっと、どうやら集計が終わったようです。それではいよいよ、店名と順位を発表しましょう。

■いよいよ結果発表! 昨年王者の松屋はまさかの……

  • 栄えある「外食チェーンのうな丼チェック 2024」第1位は?

中西 それではまず、店名から明かしましょうか。みなさんが「柔らかくて美味しい」と言っていたAは……ガストです!

山﨑 おお〜! じゃあ、ガストはだいぶ味が上がりましたね。


中西 一昨年まではガストが2連覇していますから。続いて、Bが吉野家。「柔らかくて香りもよかった」と評価されたCがキッチンオリジンで、Dがすき家、Eが松屋、Fがくら寿司ですね。

一同 なるほど〜。

  • 「外食うな丼チェック2024」評価集計表

中西 それでは順位を発表します。8点満点で10項目、これを3人ぶん合算するので、240点満点ということになります。ベスト3ですが、3位がすき家で156点、2位がキッチンオリジンで166点、そして見事1位に輝いたガストが172点。今年の上位は混戦で、各順位の差はだいたい6〜10点差くらいでしたね。4位はくら寿司ですが155点で、3位のすき家とはわずか1点の差でした。

  • すき家(D)のうなぎ。今回は3位と健闘!

山﨑 でも、「確かにそうだな」って感じの順位じゃないでしょうか。


渡部 そうですね。上と下は大体自分の感想とも合ってる感じがしますね。

長谷川 私も1位と最下位に対する評価は同じでした。

中西 ガストが特に「蒲焼き」の項目の点数がちょっと頭一つ抜けていました。 キッチンオリジンとくら寿司も「蒲焼き」についての評価は高く、キッチンオリジンとすき家はご飯とタレの項目では他社よりも高かったです。

山﨑 去年はダントツで1位だった「松屋」さんは、うなぎ自体に臭みはなかったのですが、ちょっとみりんの匂いは強かったかもしれません。今年はタレを変えたのかもしれませんね。それよりも、他のチェーンの味が昨年よりもレベルアップしていますよ。今年の「くら寿司」さんは、昨年までとは別物の美味しさでした。

中西 それでは最後に、みなさんそれぞれご感想をいただけますか?

長谷川 チェーン店のうなぎはもうこんなに美味しく、しかも1000円台で食べられるんだって考えると、ちょっと怖いなぁと思いました(笑)。でも、個人的に好きなお店が見つかったので、今度行ってみたいと思います。

渡部 やっぱり自分はうなぎ専門店で働いているので、どうしてもチェーン店のうなぎを下に見ていたっていうとよくないですけど、あまり脅威には感じてなかったんです。でも、年々良くなっているということですし、自分もウカウカしていられないなと(笑)。もっと高みを目指さないといけないなと思いましたし、すごく勉強になりました。

山﨑 僕は去年も参加させていただきましたが、1年でこんなにレベルが上がるんだと驚きました。すごい企業努力ですし、来年はもっと怖いな(笑)。うなぎ専門店も見習って、みんなで業界をもっと底上げできればいいなって思いました。

中西 みなさん、ありがとうございました。専門店の皆さんも外食チェーンの進化に負けないように、ぜひ専門店同士で集まって勉強会を開催して、もっとうなぎ業界や飲食業界全体を盛り上げていってください!(笑)

  • 評価員のみなさん、お疲れ様でした!

今夏の土用の丑の日は7月24日(水)と8月5日(月)の両日。今回の結果を参考に、外食チェーンだけでなく、専門店でもぜひ美味しいうなぎを食べて、猛暑を元気に乗り切っていただきたい。

【うな丼チェック2024実行委員会 】
■評価委員長
東京・亀戸『八べえ』 二代目 山﨑裕八さん(写真中央)
https://hachibee.jp
●評価員
東京・春日『わたべ』 渡部善隆さん(写真左)
https://unagiyawatabe.com
横浜・鶴見『鰻々亭』 長谷川みゆきさん(写真右)
https://r.goope.jp/manmantei/