世界的なアートとカルチャーの発信地であるニューヨークのオシャレタウン・ブルックリンが、実は“ビールづくりの街”でもあることをご存じでしょうか? 1988年にブルックリンで地域密着型の個人経営として始まり、いまや世界的なクラフトビールブームを牽引する存在にもなっているのが、「Brooklyn Brewery(ブルックリン・ブルワリー)」。その創業者のスティーブ・ヒンディは元AP通信の記者で、飲酒がご法度の中東の国に滞在中になぜか(?)出会った味わい深いビールに魅了され、帰国後にブルックリンで新聞社に勤めるかたわら、自宅でビール製造を開始したのだとか。

19世紀には個性的なブルワリーが多数存在する、アメリカ最大のビール生産地のひとつだったブルックリンも、1980年代には産業が衰退して活気を失った、治安の悪いエリアとなっていました。スティーブたちは「ビールで街を元気にしたい」という思いから、街の活性化とビール産業の復権を目指して、ブルックリン・ブルワリーを設立。19世紀当時にブルックリンで人気のあったウィーンスタイルのラガーをレシピのベースとして、フラッグシップブランドの「ブルックリンラガー」を誕生させました。

  • ブルックリン・ブルワリー・ジャパン取締役副社長の牧原達郎さん。着用しているTシャツのロゴに注目

驚くのは、このブランドのロゴをデザインしたのが、かの有名な「I Love New York」ロゴの生みの親である、ミルトン・グレイザーだということ。「無名のブルワリーが頼める相手ではない」という周囲の声にも耳を貸さず、スティーブはミルトンにデザインを依頼。すると、その熱意にほだされたミルトンは、「ブルックリン・ブルワリーのビールを一生無料で飲める権利」を報酬にデザインを引き受けたという、誰かに喋りたくなるような“ちょっといい話”も。ちなみにロゴの「B」の白い筆記体の文字は、ビールの泡から着想を得たものです。

ブルックリン・ブルワリーは、「ローカル」「小規模」「コミュニティ」をキーワードに、地元のバーやアーティストたちと、ビールとカルチャーの手作りのイベントをたびたび開催。アートや音楽など“カルチャーをつなぐコネクター”として、ブルックリンの活性化を支援してきました。ブルワリーの発展とともにブルックリンの街も、ニューヨークのカルチャーを発信する、先進的でファッショナブルな現在の姿へと変貌を遂げたのです。

そんなストーリーを持つブルックリン・ブルワリーは、今年で35周年。2017年に日本でも事業を開始し、2020年には世界初となるフラッグシップ店「B by The Brooklyn Brewery」を、日本橋兜町にオープンさせています。店のスタッフは、美容師やミュージシャン、アーティストといった多様なバックグラウンドを持つ個性派ぞろい。そして“ブルックリンの文脈”を体現するように、アートや音楽と一緒に多様なビールが楽しめる場として、多様な人たちが集い、つながる場になっています。

このほど、その「B by The Brooklyn Brewery」でしか飲めなかったクラフトビール『ブルックリンパルプアートヘイジーIPA』が、全国のコンビニと「タップ・マルシェ」限定で、数量限定で発売を開始しました。ヘイジー(Hazy)とは“濁った”、IPAは“インディア・ペールエール”の略で、“ヘイジーIPA”はその名が示すように、濁りのあるオレンジ色や黄色の見た目が特徴のビールのこと。パッケージは日本のビールではちょっとお目にかかれないような、カラフルで“ポップアート”なデザイン。味わいはというと、トロピカルフルーツを思わせる香りと心地の良い苦味、ちょっぴりとろみもあって、これは相当クセになる!

  • 特別感が直感的に伝わる『ブルックリンパルプアートヘイジーIPA』のデザイン

また、発売記念イベントも開催されます。空き物件や取り壊し予定のビルなどの時限的空間を活用して“都市の隙間に空間メディアを出現させる”、期間限定アートプロジェクト「ソノ アイダ」とコラボレーションし、フラッグシップ店「B by The Brooklyn Brewery」にて、商品名でもある“パルプアート”をコンセプトにしたアート作品を展示。参加アーティストは、エネルギーを根底とした環境・社会現象をモチーフにした作品を展開する藤元明さんと、現代を映す鏡として「girl/オンナノコ」をモチーフにコミック描写の線画で女性を描くHogaleeさんの2人です。

  • 「ソノ アイダ」を主催するアーティストの藤元明さん

  • Hogaleeさんは“現代を映す鏡”として女性を描くアーティスト

ちなみに、なぜ「ソノ アイダ」とコラボしたのか? の答えは、両者のコンセプトやバックグラウンドの共通性もさることながら、「『ソノ アイダ』のアーティストたちに、ブルックリンラガーを提供していたから」。本家のブルックリン・ブルワリーが地元アーティストたちを支援していたような、“ブルックリン流”の縁から、今回のコラボレーションが生まれたというわけ。

2人のアーティストの作品は7月18日から8月1日まで、日本橋兜町「B by The Brooklyn Brewery」にて、期間限定で展示されます。ビールとアートが織りなす“ブルックリンの風”を生で感じたい! という人は、ぜひお店に足を運んではいかが?

■information
Brooklyn Brewery×ソノ アイダ 「ブルックリンパルプアートヘイジーIPA」発売記念コラボレーション展示
会場:B by The Brooklyn Brewery
期間:7月18日~8月1日