弘前大学と第一三共ヘルスケアは7月16日、「健康ライフサイエンス研究講座」の設置開設式を行った。弘前大学COI-NEXTは予防医療に焦点を当てた研究を、第一三共ヘルスケアは、生活者の睡眠、頭痛、口腔に関する研究を進めているという。

  • 弘前大学と第一三共ヘルスケアの「健康ライフサイエンス研究講座」関係者一同

弘前大学で「健康ライフサイエンス研究講座」開設

人生100年時代を迎えようとする中でライフスタイルは多様化し、健康に対する意識の高まりとともに「自分自身で健康を守り対処する」というセルフケアの考え方が広まりつつある。

弘前大学と第一三共ヘルスケアは7月16日、こういった時代のニーズに答えるために「健康ライフサイエンス研究講座」を開設し、連携を強める設置開会式を開催した。同講座はすでに3月1日よりスタートしており、さまざまな大学、企業、分野の研究者が一堂に会し、協力して新たな知識や発見を生み出すことが期待されている。

契約期間は2024年3月1日から、2027年3月31日までの3年間。設置場所は、弘前大学大学院医学研究科附属健康未来イノベーションセンターとなる。

  • 弘前大学医学部および弘前大学大学院 医学研究科

弘前大学COI-NEXTでは、この「健康ライフサイエンス研究講座」において「岩木健康増進プロジェクト」の超多項目健康ビッグデータを活用し、予防医療に焦点を当てた研究を進めているという。

また第一三共ヘルスケアは、生活者の睡眠、頭痛、口腔に関する研究を進め、得られた知見を製品開発や情報提供に活かすことで、生活者満足度の高いOTC医薬品、機能性スキンケア、オーラルケア、食品の開発に繋げたいとする。

「岩木健康増進プロジェクト」とは?

開設の大きなきっかけとなったのが、「岩木健康増進プロジェクト」だ。

超高齢化社会を迎え、高齢者における健康増進と医療費削減が課題となっている中、青森県は長年にわたり男女ともに平均寿命が全国最下位と、大きな課題を抱えている。この“短命県”という汚名を返上するため、弘前市と弘前大学は2005年より岩木地区で同プロジェクトをスタートさせた。

岩木健康増進プロジェクトでは、血液や脳波、口腔細菌、Fitbitを活用した睡眠データなど、一人あたり約3,000項目の健康データを1,000人規模で記録し続けている。一般的な医療データは来院した人からしか取れないが、同プロジェクトのデータは健康な人のデータも含んでおり、生活習慣なども含めて総合的に解析できることが大きな特長だ。20年にわたって記録され続けてきた健康・医療に関する情報は世界的にも類がなく、大変貴重なビッグデータと言える。

また、自治体や市民が積極的に調査に協力し、地域全体で健康問題に取り組んでいるというのも特色のひとつだろう。20年目を迎える本年からは岩木地区に限らず、弘前市全体まで対象地域を拡大しており、今後その価値はさらに向上していくことが期待されている。

研究講座に期待を込める第一三共ヘルスケアと弘前大学

「健康ライフサイエンス研究講座」の開設にあたり、第一三共ヘルスケア 代表取締役社長を務める内田高広氏は、「弘前大学COI-NEXTには、現在20社以上の企業が集まっています。こちらの研究者ネットワーキングを当社が入ることでさらに推進をしていき、この共同研究講座を通じて、新たな競争、新たなプロジェクトの創出も目指してまいりたいと考えております」と挨拶する。

  • 第一三共ヘルスケア 代表取締役社長 内田高広氏

内田氏は「岩木健康増進プロジェクト」を非常に高く評価しており、「これから先は、やはりデータをいかに活用し、解決策を提案していくかが求められる時代になると思います。岩木健康増進プロジェクトはすごいんですよ。血液検査も何本もやりますし、検体も何種類も持ってこられるんです。これだけの大きなデータは他にありません。1年目は一番膨らむタイミングだと思いますので、その間にどういったことを目指していくのかを明確にしたいと思っています」と期待を込めて話す。

また、弘前大学長の福田眞作氏は、「私は内科医でしたので、第一三共さまのメバロチンやクラビットなどの医薬品をたくさん使わせていただいていて、本当に医療面で貢献いただいているグループだと思っていました。そのようなメーカーと共同研究講座を締結できたことは、本学にとっても有益なことです。今回の締結は3年という期間ですが、さらに3年、また3年と長くお付き合いが続くことを期待しています」と挨拶を返した。

  • 弘前大学長 福田眞作氏

続いて弘前大学大学院 医学研究科 副研究科長の伊東健氏は、第一三共ヘルスケアの歴史について触れ、日本のイノベーションを牽引してきたグループのひとつと評価。そのうえで、「私ども弘前大学COI-NEXTは、まだ歩み始めて10数年。第一三共ヘルスケアさまには『頭のてっぺんから爪の先までカバーする“トータルヘルスケア”を目指す』という言葉がありますが、そのイノベーション文化を勉強させていただきながら、末永く一緒にやっていければと思っております」と意気込みを伝えた。

  • 弘前大学大学院 医学研究科 副研究科長 伊東健氏

弘前大学大学院 医学研究科 健康ライフサイエンス研究講座 教授を務める玉田嘉紀氏は、研究講座の内容に関して説明した後、「頭痛・睡眠は弘前大学COI-NEXTでとくに重点的に力を入れたいと思っていた分野でありまして、今後の研究の進展に非常に期待したいところです。また大学として最新の研究手法のノウハウを提供しまして、研究をサポートしていきたいと考えております」と述べる。

  • 弘前大学大学院 医学研究科 健康ライフサイエンス研究講座 教授 玉田嘉紀氏

昨今、大学の運営は非常に厳しく、十分な研究費を得ることが難しい状況もある。そういった中で弘前大学COI-NEXTに第一三共ヘルスケアが参画したことは、同拠点の経済基盤にも大きな影響を与えるだろう。今回の「健康ライフサイエンス研究講座」をきっかけに、健康に関する知識、知見が広がり、ひいては我々の生活の質向上につながることに期待したい。