「認知症」行方不明者1.9万人で過去最多…GPS・アプリで早期発見の仕組み、各自治体の取り組みとは? 専門家が解説
モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。7月10日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「認知症の行方不明者およそ1万9,000人で過去最多 必要な対策は?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。


※写真はイメージです



◆認知症の行方不明者数、11年連続で過去最多を更新

去年1年間に全国の警察に届け出があった認知症やその疑いがあり、徘徊などで行方不明になった人数が、前年に比べて延べ人数330人増加の1万9,039人だったことが警察庁のまとめで分かりました。統計を取り始めた2012年から11年連続で過去最多を更新。2014年と比べても約1.8倍に急増しているということです。

塚越:警察庁によると、昨年1年間に届け出のあった1万9,039人のうち、およそ99%は届け出が受理されてから3日以内に見つかっていて、届け出から1年以上経過して発見された方も2人いました。

また全体の95%にあたる1万8,175人は去年のうちに生存して所在が確認されているのですが、一方で502名の方は遺体の状態で見つかっており、250人は去年のうちに発見されなかったということです。

吉田:行方不明になっても、95%の方は所在が確認されているんですね。どのような方法で所在を確認しているのですか?

塚越:警察庁が捜索に使われたツールを調べてみたところ、去年7月〜12月にはドローンで3人発見されました。崖下の川岸で身動きが取れなくなっていた70代の男性は、熱を感知するカメラを搭載したドローンで発見されたということです。

また、行方不明者の服や靴に取り付けたGPS機器を活用して発見された方が71人いました。例えば、埼玉県の70代の女性が翌日に仙台市内で発見されたケースもあったということで、GPSはこれからどんどん活用されるかなと思います。

◆GPS機器やアプリ利用で早期発見に 自治体によるレンタルも

ユージ:認知症で行方不明になってしまう方に対して、今、対策としてはどのようなことがおこなわれていますか?

塚越:早期発見ができたり、また安心して外出できるように後押しする取り組みがいろいろとおこなわれています。例えばアプリです。認知症の当事者が持ち歩くつえやリュックに、10桁のIDや電話番号を書いて貼る小さなステッカーがあります。このIDは無料のアプリ「みまもりあい」と連動していて、捜索を依頼する方が指定した500m~20kmまでの範囲で、ダウンロードしている地域の人たちに捜索依頼を出せます。

通知を受けた協力者は、スマホに表示される当事者の顔写真や特徴をもとに近所を見回り、発見した際は電話したり、IDを入力すると居場所などの情報が家族に伝わるというもの。

アプリの運営企業によれば、2017年4月に開始して以降、およそ200万件ダウンロードされているとのことです。2023年度の捜索依頼は4万5,075件に上っており、実際に協力者の連絡で保護されるケースもあるということです。ユーザーが増えれば増えるほど発見の可能性が高くなります。

他にも自治体がGPS機器を貸し出すケースもあります。群馬県前橋市では、ベルトポーチやコインケース、あるいは靴のなかに装着できるGPS機器を月額1,000円で貸し出しています。家族がコールセンターに問い合わせると場所を確認できます。8年前から始まった同サービスでは、これまでに計344台貸し出されており、7割以上が1時間以内に発見されたということです。

ユージ:靴のなかに入れるGPS機器は良いかもしれないですね!

塚越:さらにこの前橋市では、7桁の登録番号を書いたキーホルダーを無料で配布しており、行方不明者が発見されたときに番号と照合して人を特定する仕組みもあります。

また、福井県福井市では、登録した人にQRコードがついているシールを配布しており、行方不明のときなど発見した人がQRコードから家族に連絡するという仕組みを導入しています。QRコードのシールなどは、簡単で良いかなと思います。

ユージ:これだけ手軽で効果があるのは良いことだなと思います。

◆出先で何かあっても「どうにかなる」仕組みづくりが大切

ユージ:認知症で行方不明になってしまう方の現状を塚越さんはどうご覧になりましたか?

塚越さん:当事者や家族が、外出に対して不安なのはよくわかります。だからといってずっと家にいるのは当事者の健康にも良くありませんし、認知症の症状も進んでしまいます。

昨今は認知症の関係当事者たちでつくる団体もつくられており、当事者同士のコミュニケーションも盛んになっています。社会との関わりを保つことを重視し、地域社会での交流などもおこなわれています。これには家族の負担軽減の意味もありますし、認知症の当事者が外に出ることを妨げるのはよくないとも思います。

だからこそ、万が一のことがあってもGPSやQRコードといった情報技術をうまく活用して発見できる仕組みをつくることが大事です。ずっと家にいるのは難しいことですが、外出したときに何か起こっても、何とかできる状況を作る。あとは、地域に住んでいる方々が声かけをしたり、こういう取り組みがあると知ったりしておくことが大事だと思います。


吉田明世、塚越健司さん、ユージ



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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/