第10期叡王戦(主催:株式会社不二家)は段位別予選が開幕。7月2日(火)には五段戦と七段戦の計4局が行われました。このうち、関西将棋会館で行われた宮本広志五段―高田明浩五段の一戦は117手で高田五段が勝利。高田五段はこのあと行われた古森悠太五段戦も制してベスト8進出を決めています。

勝負所は序盤に

本予選は段位別に組み分けられた棋士がトーナメント形式で本戦進出を目指すもの。五段戦では24名が1つの本戦枠をめぐって争います。振り駒が行われた本局は後手となった宮本五段が得意の三間飛車を志向、先手の高田五段は独自の急戦策で迎え撃つ対抗形に進みます。

先に工夫を見せたのは宮本五段でした。狙われそうな角を1マス上がったのは桂跳ねが当たりになるのを避ける意味合いではあるものの、その代償として居飛車からの飛車先交換を許すだけに意表の一着。実戦はここから不安定な振り飛車陣を巧みに攻略した高田五段の快勝譜となりました。

押さえ込みの快勝譜

首尾よく飛車を活用した高田五段は敵陣に竜を作って一段落。手順のなかで桂損はするものの、振り飛車の大駒を押さえ込めば十分にお釣りがくると見ています。なんとか暴れようとする宮本五段が桂を差し出して強引なさばきを求めたとき、これを取らずに竜を引き上げたのが冷静な一手でした。

局面は後手の飛車がさばけず先手優勢。手番を握った高田五段はここでおもむろに角道を開けて本格的な攻めを開始しました。終局時刻は12時25分(持ち時間各1時間)、攻め合いに突入しながらも最後までリードを保った高田五段が後手玉を寄せ切って勝利。

高田流急戦策の一日

全体を振り返ると、角道を開けずに右桂を跳ねる高田五段独自の急戦策が奏功し、さばきを目指そうとする宮本五段の粘りを許さず、リードを拡大した押さえ込みの快勝譜となりました。敗れた宮本五段は局後、中盤で先手からの飛車引きの好手を軽視したことを明かしました。

高田五段はこの日の午後に行われた古森五段戦でも右桂を生かした急戦を炸裂させ快勝。予選突破まであと3連勝としています。

水留啓(将棋情報局)

  • 高田五段は連勝で今年度8勝3敗と好調を維持(未放映のテレビ対局を除く)

    高田五段は連勝で今年度8勝3敗と好調を維持(未放映のテレビ対局を除く)