若手の胎動、子どもの笑顔が輝いた「ツアー・オブ・ジャパン」野島裕史&大会組織委員会委員長・栗村修「後半4ステージ」を振り返る
声優界随一のサイクリスト・野島裕史がパーソナリティをつとめ、自転車をテーマにお届けするTOKYO FMのラジオ番組「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」。6月23日(日)の放送は、前回に引き続き、5月に開催された日本最大の自転車ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン2024(TOJ)」特集。大会組織委員会委員長の栗村修さんとともに後半4ステージ(綿半 信州飯田ステージ、富士山ステージ、市制施行70周年記念 相模原ステージ、SPEEDチャンネル 東京ステージ)を振り返ります。

(左から)パーソナリティの野島裕史、栗村修さん

◆焼肉の匂いが漂うなか、大きなドラマが!

野島:今回は、前回の放送に引き続き5月におこなわれた日本最大の国際自転車ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン2024」を振り返るということで、この方をお迎えしています。自己紹介をお願いします!

栗村:世界が泣いたTOJ、オジサン1週間号泣です! 栗村修でございます。先週、今週とTOJの素晴らしさを伝えるためにやってまいりました。

野島:一般財団法人「日本自転車普及協会」の理事であり、UCI公認・日本最大の国際自転車ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長をつとめていらっしゃいます栗村修さんです。改めて、今週もよろしくお願いします。

5月19日(日)~26日(日)の8日間、8ステージでおこなわれた「ツアー・オブ・ジャパン2024」。前回は前半戦、堺、京都、いなべ、美濃の4ステージを振り返りましたが、今回はステージ後半を振り返り、栗村さんが最も印象に残ったシーンや出来事を発表していきたいと思います。早速ひとつ目をお願いします!

栗村:「第5ステージ・綿半 信州飯田、焼肉の匂いを切り裂いた2世選手のとてつもない勝利」でお願いします。

野島:そうそう、(綿半 信州飯田は)おなじみの焼肉の匂いがするコースです。

栗村:各ステージいろいろな特徴があるのですが、この綿半 信州飯田ステージ、今年から“綿半”の冠がついたんですけど、ここの特徴は“焼肉”です。飯田市は、「人口1万人当たりの焼肉店舗数全国1位」だそうで……。毎年、コースの沿道でも観客の皆さんが焼肉をしていて、これがものすごい匂いを漂わせているんですよね。

野島:あれは自分が選手だったらどんな気持ちになるんだろうと思います。

栗村:終盤エネルギーが切れてきたときは止まって食べたいですよね。(選手は)タンパク質が摂りたいですから(笑)。

野島:ですよね! そして(焼肉の)煙が立ち込めるなか、選手は駆け抜けるという。

栗村:ここで輝いたのがニコラス・ヴィノクロフ選手で、彼は自転車ファンにはおなじみの“カザフスタンの英雄”的存在として「ツール・ド・フランス」などでも活躍したアレクサンドル・ヴィノクロフ大佐の息子さんなんです。

双子でアスタナ・カザクスタン・ディベロップメントチーム(育成チーム)として出場したんですけど、彼は序盤から飛び出したんですね。これはギャンブル的な戦法で、大きな集団に捕まるとそこで終わってしまうことが多いのですが、ヴィノクロフ選手は最終周回に(大集団に)捕まるも、その瞬間にもう一度アタックして勝つという漫画チックな勝ち方をしてくれました。

彼もU-23(23歳以下)の非常に若い選手で、今年のTOJのコンセプト“ツアー・オブ・ジャパン ニュージェネレーション”にピッタリ合う走りで、積極的に前に出て力で勝利を勝ち取る走りを見せてくれました。

さらに、先週お話した美濃ステージでのオーストラリア人親子の号泣じゃないですけど、ヴィノクロフ選手が優勝したとき、彼のお父さんは同時期開催の「ジロ・デ・イタリア」という世界で2番目に大きいレースに参加していたトップチームに帯同していたんですけど、イタリアから(祝福の言葉を)Instagramにアップしていたんですよ。

野島:お父さんもご覧になっていたんですね。

栗村:多分「ジロ・デ・イタリア」より「ツアー・オブ・ジャパン」のほうが気になっていたんじゃないですかね。

野島:お父さんとしてはそうかもしれないですね。

◆脅威の激坂、チャンピオンも“マンマミーヤ!”

野島:では、2つ目をお願いします。

栗村:「TOJのクイーンステージ、世界を驚かせた難易度!」ということで、複数日に渡って開催される自転車レースでは、一番厳しいステージや総合優勝を決めるステージのことを“クイーンステージ”と言います。「ツアー・オブ・ジャパン」では、それが富士山ステージで、そこには“ふじあざみライン”という悪名高き激坂があるんですよ。

野島:平均(勾配)が10%を超えているんですよね。

栗村:後半は特に酷くて、ずっと激坂が続いているんですけど、そこで優勝したのがJCL TEAM UKYOのジョバンニ・カルボーニ選手。第3ステージ・いなべに続く2勝目だったのですが、ここを制したことで総合優勝をグッと引き寄せる、そんな走りでした。

このカルボーニ選手は、先ほど話した「ジロ・デ・イタリア」の出場経験があります。そして、「ジロ・デ・イタリア」には“ゾンコラン”という有名な激坂の峠があるんですけど、彼は「(ふじあざみラインは)それを超える、世界でこんなにキツい登りはない」とまで言っていたんですね。さらに、終盤にはチームオーナーの片山右京さん曰く「マンマミーヤ!(なんてこった!)」と10回も言ったとか。

ここはフィニッシュ前のラスト50mくらいが一番つらいんですよ。もう(坂が)終わったかなと思ったら、とてつもない壁が最後にあって。それを見た瞬間のカルボーニ選手がまさにマンマミーヤって顔をしているんですよ。

野島:僕も登ったことがありますけど、激しく漕いでいると前輪が浮きそうになるんですよね。

栗村:“馬返し”っていうポイントがあって、そこはまさに馬もひっくり返る坂なんですけど、それがずっと続きます。「ジロ・デ・イタリア」を走ったことのある選手も驚いていました。

野島:これは世界に誇るといいますか、世界が嫌がるヒルクライムステージになっているということですね。

栗村:そうですね。こうしたことが選手間で広まって「ツアー・オブ・ジャパン」はアジア屈指の厳しいレースで、そこにモチベーションを持って若い選手が集まる。それがまさに新しいコンセプトですから、皆さんにどんどん広めていってほしいです。

野島:世界で話題になってほしいですね!

◆5年ぶりにTOJキッズが復活!

野島:それでは3つ目をお願いします!

栗村:「第7ステージ・相模原ステージ、子どもたちの笑顔が会場の素晴らしい雰囲気を作り出した」です。

野島:今回は温かいお話が多いですね。

栗村:そうなんです。以前から“TOJキッズ”という企画があり、子どもたちがレース会場に来て、自転車スクールで自転車の乗り方を学ぶことができます。さらにはTOJの素晴らしいところのひとつなんですが、地元の子どもたちが表彰台のプレゼンターをつとめているんです。ただ、これは(コロナ禍で)止まっていたんですよね。

大会前にこの番組でもお話させていただきましたが、今回そのTOJキッズが5年ぶりに復活し、これが各ステージにピッタリハマったんです。特に相模原ステージはいい天気で過去一番の観客が集まって、しかも相模原ステージはコロナ禍に生まれた(ステージな)ので、そもそもTOJキッズをやったことがなかったんです。

野島:そうなんですね!

栗村:相模原ステージはTOJキッズ初体験だったんですけど、子どもたちが見事にハマってくれたというか、みんな実にいい笑顔をしてくれました。レースも逃げ切りの展開だったのですが非常に素晴らしく、本当にたくさんの笑顔が見られたレースでした。

野島:子どもたちが表彰台に上がるのは評判がいいんじゃないですか?

栗村:そうですね。しかも、この後の東京ステージのプレゼンターの女の子はTOJキッズ史上最年少。お母さんと一緒じゃないと(ステージに)上がれない感じでしたが、(選手などと)ハイタッチをしてくれたり、もう完璧というか200万点で選手たちもみんな笑顔でした。

野島:表彰台で毎回選手がしゃがんで記念撮影をするのはなかなか新鮮な感じがしました(笑)。あとは、写真が家族写真みたいな雰囲気になっているのも面白かったですね。

◆栗村&野島が感動した、今大会を象徴するシーンとは?

野島:最後、4つ目をお願いします。

栗村:「最終日、SPEEDチャンネル東京ステージ、声優界随一のサイクリストが魅せた1分逃げ」でございます。

野島:これはどういうことなんでしょう(笑)。

栗村:各ステージでレースが始まる前に、ゲストライダーの方々が(パレード走行を)走って、その後に(選手が)スタートするんですけど、そこで野島さんが魅せてくれました! 先週も話しましたが、大会前に私が野島さんに「1分先行してください」とお願いしていて、それを野島さんは見事にやりきってくださって。

野島:いや、だから(選手よりも)1分前にスタートしていますから(笑)。

栗村:それはいいんです。事実は事実、これは敢闘賞か何かを差し上げないといけないかなと。

野島:僕の印象としては、ぶっちゃけ(パレード走行は)いつも選手と近いところを走っているので、観客の皆さんは選手を見ているんですね。ですが、今回はゲストライダーに手を振ってくれたり、拍手をしてくださるのでとても気持ちよかったです。それにしても今年は本当にお客さんが多くて盛り上がっていましたね。

栗村:僕は(レース中)先導車に乗っていたので見ていないんですが、最後に一際盛り上がった瞬間があったと聞いています。今回は“ニュージェネレーション”をテーマに話してきましたが、レースには学生代表として京都産業大学が出ていたんですよね。

ただ、やはり厳しいTOJ、6人出走して最後まで生き残ったのは1人でした。その1人残った森田叶夢選手が最終ラップで飛び出し、その瞬間に会場が沸いたそうですね。

野島:そうなんです! あれはジーンときましたし、会場が盛り上がりました。あれこそ鳥肌ものでした。

栗村:彼は脚力・体力はあるものの、ちょっとメンタルに自信がない選手で、TOJ前も「僕、自信がないんです」って監督に漏らしていて。実は(レースの)スタート前に彼と話をしたんですよ。「もう最後だから何か魅せよう」と。

そこで「僕はそういうプレッシャーに弱いんで」みたいなことを言っていた彼が、最後の最後に自分を出して世界の若い選手に挑戦した。あの姿はある意味今年の大会を象徴するシーン、チャレンジでしたね。

野島:まさに! それを最初から言ってくださいよ!

栗村:そうですね(笑)。

◆2025年大会の展望、意気込みは?

野島:そんな中、今大会で見えた新たな課題、反省点を挙げるとしたらどんなことがありますか?

栗村:小さな課題は大会をおこなうとたくさん出てくるので、それはひとつずつ来年に向けて改善していかないといけないと思います。そして、課題としては“ニュージェネレーション”というところの完成形にはまだまだ程遠いんですよね。

今年投げたボールが各チーム、各選手、各指導者に届いて「選手を含めて日本全体を若返らそう!」と思っています。これは、ベテランがいらないということでは全くなくて、何のために、何を一番の価値観として捉えるべきなのかをもっと真摯に伝えていかないといけない。そういう意味では、まだ何も完成されていないので今後も継続していきたいと思っています。

野島:少し気が早いのですが、2025年大会の展望、意気込みなどはございますか?

栗村:今年は中期構想の1年目。いい部分がたくさんありましたが、そこに奢ることなく、引き続き構想を継続していくことと、あとは安全面。TOJは8日間という長丁場のレースなので、やはり僕自身後半になるにつれて疲れてきますから、安全ということは忘れずにやっていきたいと思っています。

野島:来年もいちファンとして期待しています。ぜひぜひ頑張っていただきたいと思いますが、あっという間に時間は過ぎてしまいました。しかも、今回は2週に渡ってお付き合いいただきました。

栗村:また呼んでください!

野島:お忙しいなか、ありがとうございました!

栗村:こちらこそ東京ステージ含め、ありがとうございました!

6月30日(日)「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」は、6月2日(日)に開催された「第20回Mt.富士ヒルクライム」振り返り特集をお届け。野島と自転車仲間「富士ヒルセブン」は目標を達成できたのか!? どうぞお楽しみに。

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<番組概要>

番組名:サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国24局ネット

放送日時:TOKYO FMは毎週日曜 朝5:00~5:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトおよびアプリ「AuDee(オーディー)」でご確認ください)

パーソナリティ:野島裕史

番組Webサイト:http://www.jfn.jp/toj