詐欺広告問題で批判殺到のMeta、セックスワーカーのアカウント停止をめぐる謎 米

セックスワーカーがInstagramで詐欺の標的にされている。求められるMeta社の対応は? 米ポルノ業界のスーパースター、シェリ−・デヴィルがレポートする。

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トランスジェンダーのクリエイター、ラナ・マディソンさんはいつもと同じように、朝起きると携帯電話をつかんだ。

OnlyFansの収入を確認し(ちなみに上位0.06%圏内に入る売れっ子だ)、それからInstagramのDMをチェックした。FacebookとInstagramの親会社Metaが頻繁にアダルト系パフォーマーのページを削除するのだ。ラナさんも2つのアカウントにミニスカート姿の写真を投稿していた。ある男性からメッセージが来ていて(いつも相手は男と相場が決まっている)、アカウントを削除された時にはお力になりますよと書かれていた。ラナさんは無視した。問題が起きてもいないのに、なぜ解決策を提案してくるのかしらと不思議に思った。

翌朝ラナさんが目を覚ますと、メインのアカウントが消えていた。もう1つのアカウントに前日と同じ男からメッセージがあり、消えたページにアクセスできるようにしますよと持ち掛けられた。報酬は2000ドルだった。

「泥棒が盗みに入る家を事前に下見するように、その男も私を下調べしていたんじゃないかしら」とラナさん。「Instagramのアカウントを盗むぐらいなら、いっそ家に押し入ってくれたほうが良かったのに。強盗だったら、保険がきくでしょ。ソーシャルメディアのページを取られたら、先々の収入がごっそりなくなる。OnlyFansのクリエイターだから、Instagramのアカウントに保険を掛けることもできないし。悪夢だった。OnlyFansのクリエイターは毎日、こういう悪夢を経験している」。

こうした問題は筆者もよく知っている。アダルト業界で10年以上、熟女系のトップを張ってきたが、自分も含め友人たちのソーシャルメディアのアカウントが閉鎖されるのを何度も何度も目にしてきた。きまって最後は詐欺師がDMを送って来て、報酬と引き換えにアカウントを取り戻しますよと持ち掛ける。最悪なのは、しばしば向こうの思うつぼにハマることだ。1度成功すると、アダルト女優は繰り返し標的にされる。アダルト業界ではこの問題を大っぴらに話すのをためらう人が多かったが、詐欺師の正体や実態に関する手持ちの情報が少ない以上、Metaをはじめとする巨大IT企業に調査をしてもらうためにも、警鐘を鳴らすしかない(本記事の掲載に当たり、Metaはコメントを差し控えた)。

大勢のアダルト系パフォーマーが年に数回、こうした問題に直面している。例えばラナさんの場合、前にも1度詐欺に狙われたことがあったので、今回は金を払わなかった。数カ月前、Metaからアカウントを閉鎖された直後に別の男から連絡があった。この時は金を払い、男はどうにかしてアカウントの閉鎖を解除した。後日ラナさんが親しい友人に詐欺のことを話すと、3人が同じような詐欺師に遭遇していた。アカウントを再開できたケースも、できなかったケースもあった。気分の悪くなる話だった。

ありがたいことに、いまだに理由はさっぱり分からないが、Metaはラナさんのアカウント閉鎖を撤回した。Metaから弁明のメッセージは一切なかったが、Instagramに再びアクセスできるようになった。だがラナさんの友人はそこまで運が良くなかった。詐欺師に金を払ったが、なしのつぶてだった友人もいた。「3人の友人が同じ目に遭っていた」とラナさん。「しかも全員トランスジェンダーよ」。

ラナさんから話を聞いても驚かなかった。筆者も似たような状況を経験したことがある。だがアダルト業界の中でも、トランスジェンダーはとくにアカウント閉鎖や詐欺に遭遇しているようだ。詳しいデータはないものの、聞き伝えではトランスジェンダーの女性はシスジェンダーのパフォーマーよりもはるかにずっとソーシャルメディアで差別に遭っている。ソーシャルメディア各社からはアカウントを削除されるし、ネット荒らしからは毎日のように狙われ、嫌がらせを受けたり、家族の身元をバラされたりする。デジタル界でのトラブルを上げればキリがない。どういうわけか――おそらく通報回数が多いせいだろうが――ソーシャルメディア各社はシスジェンダーよりもトランスジェンダーのパフォーマーのアカウントを閉鎖することが多いように思われる。トランスの女性たちと仕事をした経験上からも、彼女たちはストーカーや嫌がらせやネット荒らしの被害に遭う回数がはるかに多い。彼女はトランスであるがゆえにインターネット上で罰せられているのだ。アカウント閉鎖が増えれば詐欺師からのメッセージも増える、という最悪のパターンが見えてくる。しかもAIの出現で詐欺件数はますます増えている。風俗および大手プラットフォームの状況について、重要な疑問がいくつか湧いてくる。

そうした疑問を理解する前に、まずは詐欺の流れを知っておく必要がある。よくある流れとしては、まずソーシャルメディアのアカウントの1つが閉鎖される。アカウントが閉鎖されたことをどうやって知ったのか、詳しいところは分からないが、偶然とは思えないほど間髪置かずに、いきなり赤の他人からX(Twitter)のDMやメールでメッセージが届く。送り主は、金を払えばアカウントを戻してやると約束する。Metaの関係者を名乗ってくる場合もある。

パフォーマーのアビゲイル・マックさんも、アカウントを閉鎖された直後にこうしたメッセージを受信した。「Instagramの社員の仕業だ」というのがマックさんの考えだ。「(奴らは)脅迫して金を巻き上げているのよ」

マックさんによると、ごく最近もMetaからアカウントを閉鎖され、1万5000ドルと引き換えにアカウントを再開すると持ち掛けるメッセージを受け取った。24時間以内に支払わないとアカウントを永久に削除する、とも書かれていた。マックさんは自分でなんとかしますと返答した。

「そしたら、いくらなら出せるかと訊かれた」とマックさん。「(奴らは)毎日そうやって金をせしめてるのよ。たいした詐欺だわ」。

もっと恐ろしいケースもある。「こんにちは、アカウントを閉鎖された時に備えて保存しておいて」というメッセージを受け取った後、ちちんぷいぷい、驚くことなかれ、アカウントが消えてしまうのだ。そして先のメッセージを受信し、愕然とする。

最悪なのは金を払った時だ。たいていはこれで上手く収まる。筆者もアカウントを取り戻せた。そのことには感謝しているが、ここで疑問が生じる。詐欺の具体的な手口は? セックスワーカーのInstagramのアカウントだけでなく、あらゆる人々のアカウントについてどこまで知っているのだろう? どうやってアカウント閉鎖を解除しているのだろう? セックスワーカーのアカウントを回収していない時は、どこで何をしているのか? 閉鎖を解除するにあたって、Metaとどんなやり取りをしているのか? 詐欺師にいったん金を払った後、何度もアカウント閉鎖に遭うのはなぜなのか?

「1度金を払うと、こいつはカモだと思われて繰り返してくる」とマックさんは言う。

最高2万ドル払ったのに、アカウントを再開できなかった子もいる。こうした詐欺師が女性にメッセージを送り、女性のアカウントを通報して、その後Twitterやメールなど別の手段で連絡しているのは大いに考えられることだ。10代の拒食症からスマホ依存症に至るまで、ソーシャルメディアの危険について様々な議論が行われているが、その割にはソーシャルワーカーが被っている被害についてはあまり世間に知られていない(大統領とファックしない限り、ポルノ女優がウォールストリートジャーナル紙の1面を飾ることはない)。詐欺の被害者が増える前に、Metaには是が非でも問題を調査し、原因を特定していただきたい。

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from Rolling Stone US