杉咲花が主演を務める映画『朽ちないサクラ』が公開中。同作は『孤狼の血』『佐方貞人』『合理的にあり得ない』など数々のシリーズが映像化されている柚月裕子氏による同名小説の実写化作。県警の広報職員という本来は捜査する立場にない県警・広報職員の森口泉(杉咲花)が、親友の変死事件の謎を独自に調査し、事件の真相と次第に浮かび上がる“公安警察“の存在に迫っていく。

今回インタビューした萩原利久が演じるのは、主人公・泉の調査に協力する同期の警察官・磯川俊一。5年ぶりの共演となる杉咲花とのエピソードや本作を通して見つめた社会の姿、SNSとの距離感について話を聞いた。

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    萩原利久 撮影:宮田浩史

映画『朽ちないサクラ』でフレッシュな警察官を演じた萩原利久

――ミステリーらしい張り詰めた空気感が印象的な作品ですが、撮影現場の雰囲気はいかがでしたか。

ものすごくクリエイティブで素敵な現場でした。長回しでの撮影も多くて集中力が求められる場面が多かったんですが、各部門にプロフェッショナルな方たちがたくさんいて、全員が良いものを作ろうという意欲にあふれていたので、すごく感化されて最後までやりきれました。緊張感もありつつ、それが楽しかったし刺激にもなりましたね。

――萩原さん演じる磯川は、泉を慕う気持ちを隠してバディとして支えるという役どころです。どんな意識で作品に臨みましたか。

磯川としては「いかにクリーンであれるか」がテーマになったと思います。泉への好意は磯川の行動の動機の一つではあるけれど、その感情だけで動いているわけじゃない。彼なりに事件に向き合って火が点いた結果一緒に動いたはずなので、恋心というわかりやすい部分を出しすぎず、彼の姿をありのままに演じようと思いました。

全体で見ても、あれだけ個性の強い登場人物がひしめく中、磯川は色で言うなら白のような存在。濁りなく純粋に、出会った物事を受け止めるという部分は意識しました。

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――杉咲さんとの共演は映画『十二人の死にたい子どもたち』以来5年ぶりとなりますが、当時と比べて印象は変わりましたか。

僕らの世代の中では飛び抜けている方だという印象は当時から変わらないです。またぜひご一緒したいと思っていたので、今回機会に恵まれてすごく嬉しかったですね。なかなか得られない刺激が多い方なんです。

ただ、前回の共演では役的にほとんど話せていなくて、今回が実質初共演のような感覚でした。なので初めて会ったときも「久しぶり」よりは「はじめまして……」みたいな空気感だったと思います。

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――移動の車内で会話するシーンが何回か出てきましたが、2人の絶妙な距離感が表れていて、とても良かったです。

特別なことは本当に何もしていなくて、待ってる間に世間話をしていたくらいです。昨日何食べたかとか(笑)。あとは『十二人の死にたい子どもたち』の話なんかもしていました。本番中の緊迫感は全然なく、ざっくばらんに話せていたことで泉と磯川の関係性が出せていたなら良かったです。

SNSでの発信は「自分の言葉で100%伝えたい」

――組織内部の闇や人間関係がクローズアップされる本作ですが、今回の役を通して萩原さんご自身のものの見方や捉え方が変わったことはありますか。

この作品自体が、まさに現代の社会を表している印象があって。特殊な事件を扱っているけれど、作品に描かれている人々の考え方やスタンスは自分たちからそう遠くない部分にあると思うんです。

起きた事件は1つだけど、いろんな立場や考え方の人の視点がそれぞれ描かれていて、それが見えるのはすごく現代っぽい。今SNSも発達して誰もが情報をたやすく得られる時代になった分、ニュースの見出しをちょっと見ただけで中身を知ったような気になってしまいやすいところがあると思っていて。1つの事実に対していろいろな見方があって立場があることを考えるってすごく大事だと、改めて感じるようになりました。

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――萩原さんご自身がSNSを使う中で気をつけていることはありますか。

「自分の言葉で発信する」という部分はかなり意識しているかもしれないです。僕のSNSでの言葉ひとつとっても、読んだ方全員が同じ受け取り方をしているとは思っていないんです。だからこそ、嘘はつかず自分が感じたニュアンスを最大限伝えたいというか。

もしかしたら僕の言葉を見て良く思わないような受け取り方もあるかもしれない。それはもうしょうがないことだと思うので、もしそうなっても自分の思いを100%説明できる状態にはしておきたくて、一つひとつの言葉に気をつけて発信するようにはしています。

――SNSの反響はご覧になる方ですか。

そうですね。作品の感想を直接送ってくださる方も結構いらっしゃるので、それはもちろん見ています。僕は作品を見た上でどんなことを言っていただいても良いと思っているタイプなので、必ずしも面白かったという感想じゃなかったり、「ここが嫌だった」という内容だったりしても、興味を持っていただけているだけありがたいと思って、そういう意見も含めて結構気になる方ですね。

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――今回はロケがかなり長かったと伺いましたが、現地で印象に残ったことはありましたか?

いやー……今回僕、地方ロケらしいことは何もできてないんです。長期滞在がほぼなくて、撮っては東京に戻り、また撮りに行って東京に戻っての繰り返しで、みなさんと比べても全然満喫できていないと思います。

――そうだったんですね。そんなお忙しい毎日だと思いますが、プライベートの時間は取れていますか。

全然あります!……って言っちゃうと良いことか分かんないですけど(笑)。プライベートの時間はありますよ。ただ、今僕の最大の趣味であるバスケやサッカーがオフシーズンに入ってしまって見るものがなくなってしまって。次なる趣味として『eFootball』というゲームをこのところずっとやっています。

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――結構がっつりプレイするタイプでしょうか。

そうですね。昨日もちょうどお休みだったので、とりあえず朝起きたらゲームの電源つけて、そこから12時間くらいずっとプレイしてました。ゲーム友達がいるので、1日中プレイできてしまうという……。1日の予定を何も決めず好きなように過ごせるのが理想の過ごし方でもありますし、今Uber Eatsとかもあるので、家から一歩も出ずに生活が完結できちゃうんですよね。

――筋金入りですね。実際にプレイして体を動かしたくなってきたりは……?

あ、それで言うと、僕去年サッカーを始めたんです。普段のゲーム仲間がもともとサッカーをやっていて、誘ってくれて実際にチームでプレイしています。まだまだ下手くそなんですけど、そんな時間が良い息抜きになったりしています。

■萩原利久
1999年2月28日生まれ。埼玉県出身。主な出演作にドラマ『美しい彼』(21年・23年)、『月読くんの禁断お夜食』『真夏のシンデレラ』『たとえあなたを忘れても』(23年)、『めぐる未来』(24年)、映画『劇場版 美しい彼〜eternal〜』『おとななじみ』『キングダム運命の炎』『ミステリと言う勿れ』(23年)など。2024年7月クールドラマ『降り積もれ孤独な死よ』、映画『キングダム 大将軍の帰還』(7月12日公開)を控える。現在、バラエティ番組『萩原利久のwkwkはぎわランド』に出演中。また、年内に2nd写真集の発売も決定している。