“ぐっさん”こと山口智充が日本を飛び出し、ベトナムへ。自ら届け物を携え、現地で奮闘する人たちに会いに行く。今回訪ねたのは、“ベトナム最後の楽園”と呼ばれ、日本人にはほとんど知られていない穴場の島・フーコック島で旅行代理店を経営する金子拓さん(48)。東京都で暮らす父・功さん(80)、母・和子さん(76)が届けたおもいとは―。

日本人にはまだ知られていない“最後の楽園”にぐっさんを案内

“ベトナム最後の楽園”と呼ばれ、美しい自然にあふれるフーコック島。昔ながらの漁村や暮らしが残る一方で、6年前に世界最長のケーブルカーが完成し、国をあげてのリゾート開発が急速に進んでいる。そこにビジネスチャンスを感じた拓さんは、2年前から島で唯一となる日本人による旅行代理店を始めた。

ビーチはアジア系や欧米人の観光客でにぎわうが、日本人の認知度はまだまだ低い。そこで「今回はぜひフーコック島の魅力をお伝えさせてもらえたら」と意気込む拓さんが、“最後の楽園”を余すところなく体感できるツアーにぐっさんを案内する。

まずはツアー最大の魅力である、美しい海が満喫できるシュノーケリングへ。イチオシのポイントは近くにある離島・メイルート島で、浅瀬には生きたサンゴの群れが一面に広がっている。このような光景が陸地のすぐ近くにあるのは世界的にも珍しく、しかもそれがシュノーケリングで簡単に見ることができるこの場所は、拓さんが自ら探し当てた穴場中の穴場だという。

さらにぐっさんは、パドルを使ってボードを漕ぐ「SUP」にチャレンジ。一方、拓さんはドローンを使って空からぐっさんの撮影を始める。収録された映像には、SUPを楽しむぐっさんと青い海、サンゴの群生というここでしか撮れない絶景が。このドローン撮影も、拓さんのアイデアで始めた独自サービスのひとつだそう。

フーコック島で生きるため85歳までの人生計画を立て、予定どおり44歳で旅行業界へ

以前は大手メーカーのエンジニアとしてベトナム工場で働いていた拓さん。精神的なゆとりもないまま走り続ける中、いつかは両親の故郷である徳島のような自然の多いところで暮らしたいと考えていた。そんな頃、38歳のときに休暇で訪れたのがフーコック島。豊かな自然と穏やかに流れる時間に魅了され、この島で生きたいと思うように。そして40歳から85歳までの人生計画を立てた拓さんは、その予定どおり44歳で会社を辞めると、全く経験がなかった旅行業界に転職。2年後の2020年、独立を果たし「フーコックジャパン」を設立した。

昨年にはベトナム人のゴックさんと結婚。会社の経営面をサポートしているゴックさんは、「彼は責任感が強いので、一緒に働くことに何の心配もありません」と信頼を寄せている。夫婦としても仕事のうえでも、拓さんにとって最高のパートナーだ。

翌日、ぐっさんが案内されたのはコショウの農園。実はベトナムのコショウ生産量は世界一で、フーコック島の特産品でもある。特にこの農園は香り高い上質なコショウが育つと評判なのだそう。しかも収穫した実は天日干しした後、見た目が良いものを一粒一粒手作業で選別している。そんな手間がかかる作業をぐっさんも体験。さらに、現地の選別の達人に対決を挑むが…。こうして選りすぐられた黒コショウを1粒食べてみると、その香ばしいおいしさに目を丸くするぐっさん。拓さんは「一部で開発が進む中でも、フーコックに元々ある自然や農園の雰囲気も味わってもらいたい」とこの地に案内する想いを明かす。

安定した職を捨て観光業に転身した息子へ、両親からの届け物は―

安定した職を捨て、未経験の観光業に転身した息子の決断に、父・功さんは「ものすごく反対して、3日間ぐらいベトナムに泊まり込んで説得した」と打ち明ける。

そんな大反対を押し切って、自身の旅行代理店を立ち上げ丸2年。「ゼロから自分で勉強してやってこれているし、すごく楽しい」と充実する息子へ、ぐっさんが手渡した両親からの届け物は、母が手作りした写真立て。そこには優しく微笑む両親の写真が収められていた。また手紙には、息子が伴侶に巡り会えたことを喜ぶ様子や、自分たちが元気に過ごしていること、息子を応援していることが綴られていた。両親が安心していると知って、安堵の表情になる拓さん。そしていつか島に来て、今の姿を見てほしいと願うのだった。