“ぐっさん”こと山口智充が日本を飛び出し、ベトナムへ。自ら届け物を携え、現地で奮闘する人たちに会いに行く。今回訪ねたのは、ホーチミンに世界でも珍しいカカオのテーマパークを作った遠藤亜矢子さん。大阪で暮らす父・昭夫さん(76)、母・博子さん(74)が届けたおもいとは―。

繊細な味わいのオリジナルチョコで若者の心を捉える

ぐっさんがやってきたのは、亜矢子さんがホーチミンで2年前にオープンした「ビノンチョコレートショップ&カフェ」。店にはチョコレートドリンクなどを楽しむ若者たちが集っている。また店内で販売しているオリジナルの「スティックチョコ」は、フレーバーが18種類も。そのうちのひとつで、ベトナム産カカオ65%というチョコを試食したぐっさんは、「ふわっと香る、芳醇でフルーティーな感覚…これは全種類食べたいなあ!」とそのおいしさに感激する。

実は亜矢子さんによると、ベトナムの人はあまりチョコレート好きではないのだそう。そんな中、亜矢子さんのチョコは人気インフルエンサーに注目されたことから広まったといい、カカオの風味を感じる繊細な味わいがチョコに馴染みのなかった若者の心を捉えている。

チョコレートジェラートがきっかけでカカオのテーマパークを開業

そんな亜矢子さんが運営しているのが、ホーチミンから車で2時間、バリアブンタウにあるカカオのテーマパーク「ビノンカカオパーク」。カカオを栽培する農園からチョコレート作りまでを見学・体験できる世界唯一ともいわれる施設で、日本企業の協力もあって2019年に開業した。日本人は社長の亜矢子さんだけで、農園担当やチョコの製造担当など地元のベトナム人が多数携わっている。農園にはカカオの木が900本植えられ、木になった実を間近で見られるのもこのテーマパークならでは。ぐっさんも、熟してオレンジ色になった実の収穫を体験する。実を割ると、出てきたのはフルーティーな風味の果肉。新鮮な果肉はカカオを栽培しているところでしか食べられない貴重なものであり、この果肉の種がチョコレートの原料になる。

小さなときから海外で働きたかったという亜矢子さんは、父のアドバイスもあり様々な面で安定性や将来性があるベトナムに注目。そしてベトナムと日本をつなぐ商社に勤めていたときに現地で夫・雄介さんと出会い結婚した。数年後、雄介さんの帰任が決まった一方、一緒に帰国して会社員生活を続けるのか悩んだ亜矢子さんは一念発起して脱サラ。ベトナムに残って2016年にジェラート店を開いた。そこで商品のひとつだったチョコレートジェラートのおいしさに惹かれ、ベトナム産のカカオに興味を持つように。さらに農家でカカオの育て方を学んでいるときに、もう使われていないカカオ農園があると聞き、契約。外国人で唯一、カカオの栽培から手掛けるチョコ作りを始めたのだった。

苗から育った木に実がつくようになるまで、3~4年ほど。2019年にオープンした農園ではようやく昨年から実の収穫ができるようになった。

常に新たな味を模索する亜矢子さんに、ぐっさんが新たなフレーバーを提案!

ベトナム産カカオの持つ独特の味わい。亜矢子さんは、まだまだ秘められた可能性を引き出すべく、常に新たな味を模索している。そんなチョコ作りを一身に背負っているのが、ショコラティエのチュオンさん。精力的に開発を続ける彼のお手伝いになればと、今回ぐっさんも地元の市場で食材を探し、新たなフレーバーを提案することに。不安そうな表情のチュオンさんをよそに、ぐっさんが選んだセリやゴーヤ、一押しのニンニクを使ってチョコを試作してみるが、果たしてその味は…?

まだまだ夢は始まったばかりの娘へ、両親からの届け物は―

日本を離れ13年。父・昭夫さんは娘を「勝手にどんどん自分でやっていくタイプ」と評し、母・博子さんも「帰ってきてもいいんじゃないのって思うんですけども…どこがゴールなのかなと思って」と心配しているが、まだまだ夢は始まったばかり。

そんな亜矢子さんへ、ぐっさんが届けたのは母が筆をとった絵。そこには娘がビノンカカオパークでカカオを収穫する姿が描かれていた。心配しながらも応援してくれている両親の想いを受け取り、笑顔がこぼれる亜矢子さん。そして「私たちのスローガンが『カカオでみんなを幸せにするために』。なので私たちももっともっと頑張っておいしいチョコレートを作って、それを還元させて農家の人にも喜んでもらって…そういう大きな循環を作ることができればいいなと思っています」とさらなる夢を語るのだった。