6月15日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:25~)は、日本サッカー協会(JFA)の新会長・宮本恒靖が登場。サッカー界の抱える課題について、MCの勝村政信や解説の槙野智章らとトークを繰り広げた。

W杯アジア二次予選を無敗・無失点で首位通過し、最終予選へと駒を進めた日本代表。サッカーの機運が高まる一方で、日本サッカー界にはまだまだ課題や悩みが尽きない。そこで、番組ではサッカーファンたちから意見を募集。寄せられた様々な疑問や質問を宮本に答えてもらった。

まずは、日本代表の親善試合について。年に数回組まれる代表強化のための親善試合だが、過去5年の親善試合を見てみると、日本よりFIFAランキングが上位国との対戦は27試合中9試合。およそ7割の相手がランキング下位となっている。サッカーファンから届いた「親善試合の相手をもっと強豪国にしてほしい!」という声に、宮本は「強豪国にしたいとは常に思っています」と主張するが、そこには現実的な難しさもあった。

親善試合は監督の意向を汲みつつ、移動費などの各種条件を加味しながらマッチメイクしていくもの。日本代表を率いる森保一監督からは、南米の強豪国と試合をしたいというリクエストがあったそうで、実際に昨年はウルグアイやコロンビアとの対戦が実現している。

しかし、欧州の強豪と親善試合で対戦したのは、過去5年でドイツ戦の1試合のみ。宮本は「ヨーロッパはUEFAネーションズリーグというのをやっていて、そのネーションズリーグがユーロであったり、W杯の予選を兼ねているので、ヨーロッパの国とはやれないっていう前提ですね」と難しさを指摘。ドイツと親善試合が組めたのは、たまたまドイツの公式戦がなく、日程的にもうまくはまったためだったという。

また、欧州の強豪との試合はほとんどが敵地開催。これは移動を嫌がる国が多く、さらにインターナショナルマッチウィークで2試合を行う場合、この2試合間の移動に関して5時間以上はかけられないというレギュレーション上の問題があるからなのだとか。例えば、スペインがアジアで親善試合を行う場合、日本と対戦するなら、もう1試合は韓国など、5時間以内で移動できる国でなければ試合が組めないことになる。宮本は「これは選手を守るっていう意味でそうなっているんですけど、そういう意味でちょっと強い国との親善試合を組みづらいというところがあります」と明かした。

さらに、強い代表を作るためには欠かせない国内リーグの強化についても、サッカーファンからはこんな疑問が飛び出した。現在、Jクラブを指揮するにはS級ライセンスの取得が必要になるが、「監督にS級ライセンスは必要?」という意見も。2017年にS級ライセンスを取得している宮本は「ライセンスを取るにあたって、例えば、運動生理学とか心理学とか含めて、戦術以外も学ぶのは、選手を守るっていうことにつながるので、そういう観点ではすごく必要だとは思っています」と答える。

去年11月にA級ライセンスを取得している槙野も、かつては“不要派”だったが、「実際に選手としてプレーしていた中で、すぐに監督をやらせてほしい、(S級ライセンスは)いらないじゃんって思ってましたけど、いざ選手からタッチラインの外に出たときに、自分の気持ちがガラッと変わった」と吐露。宮本の言う通り、戦術以外の勉強が必要になるため、制度として「必ずあったほうがいい」と強調した。

片や現在B級ライセンスを取得し、指導者の道も視野に入れる南葛SCの稲本潤一は、取得までのプロセスに言及する。VTRで出演した稲本は「ライセンスを取る過程が面倒くさいっていう人はけっこういるんです。やり方を多少見直してほしいなという気持ちもあります」と訴えた。

S級ライセンスを取得するには、A級の取得かつ1年間以上の指導実績が必要となり、その上で座学・実習、2週間以上の研修を重ねることになる。最短でも取得まで1年はかかる現状に、宮本も「Jリーグのローカルルールとして、例えばJ3のクラブの監督はS級ライセンスを持たなくてもいいですっていうルールを作ることも可能性としてはあるし、現役選手でしっかりした経歴がある人に関しては優遇するとか、そういうことも考えていかなければいけない」と明言。竹﨑由佳アナウンサーからの「これから内容でしたり、道のりみたいなものは変わっていく可能性も?」という問いかけには「十分あります」と力強く返していた。

さらに、サッカーをする環境面に関しても、サッカーファンからは「思いっきりボールが蹴られる環境が欲しい!」という切実な声が届く。現在、首都圏では安全面などを理由に、約72%の公園でボール遊びができず、放課後に校庭を開放していない小学校も増えるなど、子どもたちの遊び場が減少傾向にある。サッカー人口を増やすには子どもたちが気軽にサッカーを楽しめる環境が必須だが、この課題に宮本は「日本サッカーを応援する自治体連盟というのがあって、サッカーしてもいいです、注意しながらやりましょうとか、条例を変えるようお願いをするのは全然やれることなので」と説明。日本サッカーを応援する自治体連盟とは、サッカーを通じた地域活性化を目的に発足した425市町村が加盟する連盟で、宮本は各自治体のトップに呼びかけていくことを誓った。

他にも、審判のレベル向上や、女子サッカーの普及などについてもトークが展開。それぞれの課題に真摯に応えようとする宮本に、勝村は「宮本さん一人が全部背負うわけではないので。素晴らしいチームを作っていっていただければ、自ずと結果が出てくるのかなっていう。そこでも、やっぱり宮本さんはキャプテンでもあるので、皆さん期待していると思います。ぜひよろしくお願いします」とエールを送った。