家を新築するとき、柱などの骨組みができたら行う上棟式。その際に、工事の安全とご近所へのお福分けのために餅まきをするのが一般的だ。

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ところが、山口県では餅まきの習慣が少々違うらしい。現地へ行って聞いてみた。

「餅まきって聞いたら絶対行く!」とずいぶん意気込みを感じる。

「なんかっつったらやるやんなあ」「イベントあったらまくよね」

ん?上棟式でやるものじゃないの?

どんなイベントでもまく」「餅まきをしたら人が集まるから

どうやら何かにつけて餅まきをするらしい。

しかも山口県民は餅まきがあると異様に燃えるようだ。

「戦い!子どもが取るから遠慮するとかない」

どうやら本気で餅を奪い合うようだ。

そこで、周南市のつつじ・ゆめ風車まつりへ行ってみた。

ごく普通の賑やかなお祭りだが、徐々にステージ前に人が集まり始める。

ステージ上ではスタッフが大量の餅を準備している。

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「それではケンカとケガのないように」というちょっと恐ろしいアナウンスで、餅まきが始まった!

用意されたのは2000個の餅。投げると、大勢が必死に受け取る。落ちたら拾う。一度に2つとってすかさずポケットに入れる。たしかに、大人は子どもに遠慮なんかしない。

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2分間で終了すると、あれだけ集まっていた人々があっという間に解散!餅をもらうためだけに集まっていたのだ!

参加した夫婦に聞くと「2人合わせて13個取りました」取りすぎじゃないの?

見せてもらうと紅白餅。「めっちゃうれしい!」とはしゃいでいた。

別の二人連れの女性に聞くと「燃え上がってついついムキになってしまう」「餅まきって聞いただけでワクワクします」

防府市の結婚式場では、新郎新婦がブーケではなく餅をトス!

山口県民が応援するサッカーチーム、レノファ山口の試合後には、選手たちが観客に餅をまく。町内会のイベントでも、地域の物産展でも、クリスマスイベントではサンタクロースが餅をまく。

この餅まきの戦い、どんな戦略で臨むのか。

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7個も餅をゲットした5歳の達人は「下を向く。上でキャッチは難しい。取ろうとしてた餅が下に落ちてきたら拾う。」

なるほど、無理にキャッチせず、落ちた餅を拾うのが効率的だね。

大人の達人が言うのは「欲しい欲しいとアピールする。子どもを使ってでも」

自分の存在をアピールするのがコツだ。

19歳女子の達人は「おじいちゃんは遠くに投げない。若いお兄さんは遠くに投げる。」なんと、投げる人の年齢を見極めるのだという。

とにかくみんな、ガチでマジ。

イベント開催する側は「餅をまくと集客が倍違う。」と言う。「できるだけ最後まで引きつけておいて、イベントの一番最後に餅まきをします」なるほどねえ。

「早くまくと、さっさと帰っちゃう」と笑う。

餅まき用の餅を作るお餅屋さんに聞くと「餅まき用の餅は1年間に2トン作ってます」そんなに?

山口県では上棟式以外でもなぜ餅まきをするのか?放送大学客員教員、金谷匡人さんに聞いた。

「山口県は三方を海で囲まれています。上棟式以外でも船おろしでまいたり、年の初めの船の乗り初めにまいたりしていました。大正14年に萩駅の開通式で餅がまかれた映像が残っています。次第に山口県民の中で行事・イベントに餅まきがつきものになっていったと考えられます」

そういうことかと思いつつ、だからってなぜあれほど大人も子どももガチなのかは謎。でもみなさん、楽しそうでいいね!