第83期順位戦B級2組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、6月12日(水)に1回戦計13局の一斉対局が各地の対局場で行われました。このうち東京・将棋会館で行われた横山泰明七段―伊藤匠七段の一戦は101手で伊藤七段が勝利。相居飛車力戦の中盤で抜け出して昇級後の初戦を飾りました。
横山七段の力戦策
前期C級1組を8勝2敗で駆け抜けた伊藤七段を待ち構えるのはB級1組から降級となった横山七段。両者の初手合いとなった本局は、横山七段が工夫を凝らします。角道を開ける手を保留して右銀をスルスルと繰り出したのは近年流行の兆しを見せつつある力戦策です。
早繰り銀の要領で飛車先突破を狙う後手に対し、先手の伊藤七段はうまい対策を打ち出しピンチを切り抜けます。当たりになっている角を見捨てて7筋のと金作りを急いだのが優れた大局観。後手陣は居玉と居角の愚形がたたって、手がつくと見た目以上にもろい形です。
鮮烈のB2デビュー
駒の取り合いが一段落した局面でさらに伊藤七段に好手が出ます。遊び駒となっていた右銀を立て直したのは、飛車筋を通しつつ持ち駒の桂の価値を高める味よい手。99分の長考のすえに横山七段は根性の自陣角で応じますが、受け一方の展開で形勢は好転しません。
夕食休憩が明けると伊藤七段のラッシュが始まります。右辺への端攻めで攻め駒を補充しつつ、左辺に角を打ち込んだのが絶品の決め手。先手からは角を切って飛車を交換する筋と飛車を切って銀を抜く筋が見合いとなっており、どう応じても先手の攻め駒が綺麗にさばけます。
終局時刻は21時57分、最後は自玉の受けなしを認めた横山七段が投了。居玉のままの先手玉には、最後まで王手がかかることはありませんでした。快勝でB級2組デビューを飾った伊藤七段は2回戦で郷田真隆九段と対戦します。
水留啓(将棋情報局)