帝国データバンクは、2024年5月の企業倒産件数についての調査・分析を6月10日に発表した。同調査は、2024年5月1日~5月31日までの期間、負債1000万円以上の法的整理による倒産を対象に実施したもの。

  • 2024年5月倒産件数 推移

企業の倒産件数は1016件(前年同月694件、46.4%増)と、2012年5月(1013件)以来、12年ぶりに1000件を超えた。25カ月連続で前年同月を上回り、前年同月より322件増加。増加数はリーマン・ショック直後の2008年9月(337件増)に次ぐ2番目の多さだった

また、負債総額は1260億9700万円(前年同月2797億4000万円、54.9%減)と、3カ月連続で前年同月を下回ったという。

  • 業種別 倒産件数

業種別にみると、全7業種で前年同月を上回った。最多は「サービス業」(前年同月159件→244件、53.5%増)、次いで「小売業」(同150件→224件、49.3%増)、「建設業」(同136件→190件、39.7%増)が続いた。

業種を細かくみると、「運輸・通信業」では、ドライバー不足などに直面している「道路貨物運送」(同13件→45件)が3倍を超え、2000年以降で過去最多となった。

  • 倒産主因別

主因別にみると、「販売不振」が823件で最も多く、全体の81.0%を占めた。また、「売掛金回収難」(同2件→6件、200.0%増)などを含めた「不況型倒産」の合計は843件(同563件、49.7%増)だった。

「経営者の病気、死亡」(前年同月24件→47件、95.8%増)が前年同月から大幅に増加し、2000年以降で最多。一方、「放漫経営」(同14件→13件、7.1%減)は5カ月ぶりに前年同月を下回った。

  • 地域別

地域別にみると、全9地域で前年同月を上回った。「関東」は、「東京」(同126件→208件)で大幅に増加し、件数を押し上げた。「近畿」(同157件→243件、54.8%増)は、「大阪」(同80件→133件)や「京都」(同17件→32件)の増加もあり、2カ月ぶりに200件超えとなった。

このほか、「中部」(前年同月88件→125件、42.0%増)は、3カ月連続で100件を超え、とくに「愛知」(同44件→65件)が大幅に増加。また、「九州」(同57件→99件、73.7%増)は、5月としては2000年以降で最多となった。

円安に伴う輸入コストの上昇などによる影響を受けた「円安倒産」は、2023年度に63件判明し、前年度(52件)を21.2%上回った。5月も今年最多の8件判明し、2022年6月から24カ月連続の発生となっている。

帝国データバンクが5月17日に発表した「円安に関する企業の影響アンケート」によれば、円安進行で企業のおよそ3社に2社(63.9%)が、利益面でマイナスの影響を受けていたという。調査では、「一般に、倒産件数の特徴を考えると、価格転嫁が十分に進まない中小企業を中心に、年後半にかけて円安倒産が大幅に増加するおそれがある」とした。

加えて、6月末をもって、新型コロナ関連の資金繰り支援策が終了。7月以降、政府は一連の施策をコロナ禍前の支援水準に戻すとともに、事業者の経営改善・再生支援へと本格的に軸足を移すという。そのため、支援の手からこぼれ落ちる企業が一定数出てくると同社は推察している。

アフターコロナで業績回復が進む企業と、経営悪化から抜け出せない企業の“二極化"が進むなかで、企業倒産は年後半にかけて増加基調をさらに強める可能性がある。