第50期棋王戦コナミグループ杯(共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟主催)は予選が大詰め。6月8日(土)には第2ブロックの高野智史六段―杉本和陽五段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、終盤の勝負手を通した杉本五段が144手で逆転勝利。自身初となる挑戦者決定トーナメント進出を決めました。

最後の枠はどちらに

本予選は20名程度からなる山を勝ち抜いた8名が本戦に進むもの。33の本戦枠のうち32名分はすでに決まっています。振り駒が行われた本局は後手となった杉本五段が得意の三間飛車穴熊を展開、対する高野六段は自玉を8八の地点に収めて持久戦調の構えを取ります。

戦いの中でミレニアム囲いの堅陣を完成させた高野六段は徐々に指しやすさを手にします。自然な指し手で飛車先の勢力を逆転させたのが始まり。2筋を制圧し、飛車先の突破を確実なものにしました。杉本五段も金のタダ捨ての勝負手で飛車成りのルートを作って盤上は激戦の終盤へ。

二度のタダ捨てが光る

駒得の先手が有利ながら、両者一分将棋間近の場面で杉本五段が勝負手を放ちます。タダのところに桂を放り込んだのが当たりを強める手筋。自陣に据えた香との協力で歩の取り込みが厳しく残ります。先手としてはこの桂を銀で取って守りの要の金を残す手が優りました。

勝負手を通した杉本五段は敵玉への確実な寄せの道をたどります。受けなしとみた高野六段が最後の反撃に出たとき、じっと自陣に銀を打って逆転の余地を消したのが受けの決め手。終局時刻は18時48分、攻防ともに見込みなしと認めた高野六段が投了を告げました。

水留啓(将棋情報局)

  • 桂馬のタダ捨ての勝負手を通して逆転勝利を収めた杉本五段

    桂馬のタダ捨ての勝負手を通して逆転勝利を収めた杉本五段