藤井聡太王座への挑戦権を争う第72期王座戦(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)は挑戦者決定トーナメントが大詰め。5月30日(水)には準々決勝の2局が東京・将棋会館で行われました。このうち、鈴木大介九段―佐々木大地七段の一戦は95手で鈴木九段が勝利。豪快なさばきでベスト4進出を決めました。

およそ3か月ぶりの再戦

鈴木九段は藤本渚五段に、佐々木七段は渡辺明九段にそれぞれ勝っての登場。振り駒で先手番を得た鈴木九段は三間飛車に組んで戦いに備えます。後手の7筋の歩突きが早いのに呼応した作戦選択で、3月頭に両者の間で行われた対局(棋王戦予選)と類似の進行となりました。

得意の袖飛車を断念して囲いの充実を求めた佐々木七段に対して鈴木九段は軽快な仕掛けでペースをつかみます。9筋に角を飛び出したのが「幽霊角」と呼ばれる揺さぶりの手筋で、手順に石田流の攻撃陣が完成。居飛車の天守閣美濃が完成していないのも好材料です。

教科書通りのさばき

後手が歩を連続で捨てたのは角を飛び出す狙い。振り飛車側は先に香損を許すだけに不利感がありますが、ここで遊び駒の角をぶつけて馬との交換を迫ったのが振り飛車党垂涎のさばきでした。折衝が一段落した局面は飛車の働きに大きな差がついており先手有利です。

非勢の佐々木七段が馬を引きつけ粘りに出たとき、遊び駒の桂を跳ね出したのが鈴木九段のさらなる継続手。敵飛のさばきを抑えるこの桂が成駒として金との交換になり先手優勢が確立されました。終局時刻は16時47分、逆転の見込みなしと認めた佐々木七段が投了。

勝った鈴木九段は本戦2連勝でベスト4に進出。次戦で挑戦者決定戦入りを懸けて永瀬拓矢九段と対戦します。

水留啓(将棋情報局)

  • 鈴木九段は持ち時間5時間のうち2時間以上を残す快勝でリベンジに成功

    鈴木九段は持ち時間5時間のうち2時間以上を残す快勝でリベンジに成功