ついに黒字転換を迎え、新たな局面に入った「chocoZAP (チョコザップ)」。2024年3月期 決算説明会において「『質と量』両面での成長」を掲げた同社はいまどのような展望を持っているのだろうか。同社代表取締役社長の瀬戸健氏を直撃した。

  • 決算説明会を終えたライザップグル-プ 代表取締役社長 瀬戸健氏

「質と量」両面での成長を掲げるライザップグループ

ライザップグループは5月15日、2024年3月期 決算説明会をオンライン開催した。長らく赤字を計上してきたchocoZAPが収益に本格寄与し始めたことで、四半期には40億円以上の増益を達成し、その勢いはより増している。

  • RIZAPグループ2024年四半期の営業損益推移

そのようななかで発表されたchocoZAP事業の今期の投資計画は「満足度向上のため、今期の投資をサービスの進化に集中」だ。新たに200億円の投資を見込んでおり、うち新規店舗に100億円、既存店舗の新サービス導入に30億円、そして「ちょこっとサポート・コンシェルジュ」に70億円が投じられる予定となっている。

  • chocoZAP事業における今期の投資計画

ユーザーにとって注目のポイントは、ちょこっとサポート・コンシェルジュだろう。これによってRIZAPトレーナー500名、コンシェルジュ100名体制による品質向上が見込まれており、昨今不満の声が聞かれるchocoZAPの機器メンテナンスや店舗清掃、備品補充を中心としたユーザーサポートの改善が期待できる。

  • ちょこっとサポート・コンシェルジュの拡充による品質向上を目指す

また、3月に発表され注目が集まっている新サービスの導入店舗数を当初予定よりも大幅増加。6月末時点の計画として、カラオケは300店舗、ランドリーは400店舗、ピラティスは700店舗を見込んでいる。

  • 新サービスの導入店舗数は当初予定よりも大幅に増加された

「今期は既存店の品質・満足度向上に注力し、『質と量』両面での成長へ」を掲げたRIZAPグループ。同社代表取締役社長の瀬戸健氏の今期にかける思いについて伺った。

chocoZAP、今期の最優先事項は「満足度向上」

――決算報告会、おつかれさまでした。まずは2023年を振り返って、一年のご感想を伺いたいと思います。

本当に激動の一年でした。chocoZAPを始めてからまだ二年も経っていないわけですが、始めた当時が昔のことのように感じます。初心者の方でも気軽に簡単に便利に、24時間ご利用いただけるということが非常に多くの方に受け入れられ、本当にありがたいことだと思っています。

1,500店舗を達成するなかで新しいサービスも導入し、非常に強い手応えを感じています。ただ、新サービスをどんどん追加していくなかで、荒削りでご迷惑をおかけしている部分もたくさんあります。実際にやってみて初めて分かったことも多かったのです。一つひとつ改善を進めていますが、我々がやらなくてはならない課題も見えてきた一年だと思います。

  • 2023年度を「激動の一年」と語る瀬戸氏

――今回の決算発表会では「満足度向上」のための投資が目立っていましたね。

そうですね。chocoZAPのユーザーの多くは初心者であり、最近はご高齢の方も増えています。こういったみなさまに共通するのは、「(機器の)使い方が分からない」という点です。やはり使い始めではジムに人がいて、気軽に聞けることが重要だと思いました。

そういったみなさまに安心してスタートを切っていただきたい、というのが一番の思いですし、お客さまの悩みをもっと早く解決し、快適な環境作りを行う必要があると考えました。今回の投資は、その部分にしっかり向き合っていくという意味があります。

いままでもやってきたつもりではありましたが、いまがまさにお客さまの声にまっすぐ向き合うタイミングだと思いました。今期の最優先事項として、真摯に取り組んでいきたいと思います。

――「ちょこっとサポート」「コンシェルジュ」には70億円の投資を計画されていますが、狙いについてお聞かせください。

具体的に言えないことはいっぱいありますが(笑)、新しいことを始めるときはやはり人のサポートが必要です。AIと違って、人はそれまでの経験を活かしながら、新サービスに速やかに対応することができます。そういった部分の人の良さを活かしていきたいですね。

新サービスの展開を加速させるchocoZAP

――3月に発表された新サービスの展開を予定よりも大幅に加速する発表も行われていましたが、サービスの利用状況は?

すごく反響がありますね。カラオケなんかはすぐに予約がいっぱいになる状況ですし、ランドリーの利用率も高いです。「もっと早く作って」という強い声が非常に多く、我々もそれを受けて一気に倍増を決めたという背景があります。お客さまが望んでらっしゃるというところが一番ですね。

カラオケ部屋はいろいろなことに使えるので、カラオケ以外でもご利用いただいているようです。例えばテレワークとか、楽器演奏の練習に使われているという声も聞きます。

――先日、SNSで「ランニング中の給水所」のように利用している方がいるという話も聞きました。

面白いですね、すごく良い使い方だと思います。足が遠のいてしまうのが一番良くないので、chocoZAPに来るきっかけになるなら我々はどんな使い方をしても良いと思っています。トイレだってなんだってかまわないんです。

――5月10日には静岡県の日本平PA(上り)に高速道路1号店を出されましたね。こちらの状況もぜひお聞かせください。

日本平PA(上り)店では、1カ月利用料をお支払いいただく従来のプランのほかに、長距離ドライバーの方に向けてご利用1回ごとに料金を支払う"都度払いプラン"にも対応したのですが、現在の比率は半々くらいか、やや都度払いプランが多いくらいです。

日本平PA(上り)の裏手はちょうど住宅街になっており、すでに会員になっている近隣の方のご利用もあるんですね。利用している他の店舗ではゴルフがない、ピラティスがまだ入っていないといった理由で利用している方もいらっしゃいました。スタートとしては順調にご利用いただいています。

長距離ドライバーの方にも気晴らしって重要じゃないですか。動かないから疲れるって言う話もあったりして、やっぱりそういう方こそリフレッシュのためにご利用いただきたいと思っています。

他のPA/SAへの展開は、NEXCO中日本さんといくつかの物件について具体的に協議中です。やはりその他のエリアも含めて点と点で繋がった方が利用者も絶対使いやすいと思いますから。

  • 静岡県の日本平PA(上り)に高速道路1号店が5月10日にオープンした

――キッズパークやMRI/CTなどはなかなか拡大が難しいと思うのですが、今後の予定は?

キッズパークは利用率だけでなく、非常にリピート率も高いんです。自分の時間を犠牲にして子育てをして疲れているご両親や、逆に子どもがスマホなどで遊ばざるを得ない状況に罪悪感をもっているご両親って多くいらっしゃると思うんですよ。自分も、子ども犠牲にせずに利用できるということで、とても反響があります。

やはりキッズパークは店舗に展開するには制約条件が多くて大変なのですが、お客さまが望まれているもの、価値があるものはハードルを乗り越えてでも強く推進したいと思っています。

MRI/CTは、まだ一カ所ということもあり、枠があるとすぐに埋まってしまいます。空きは常にゼロですね。いままでMRI/CTを受けたくても受けられなかった方は本当に多くいらっしゃるのだと思います。

いま我々は重症化予防のプログラムなどもどんどん確立しており、医療機関との連携を深めています。会員のみなさまが経済的に負担無く健康な身体を維持できるよう、拠点を増やしていきたいです。

  • 医療機関との連携を活かしたプラットフォームも今後展開予定だ

――最後に、ユーザーのみなさまへいま伝えたいメッセージがありましたらお願いします。

我々は、ユーザーがどのようなサービスを望んでいるのか、どんなサービスなら喜んでもらえるのか、サービスをご利用いただいたことでどんなことが起こるのか、試行錯誤をしながら、トライアンドエラーを繰り返しながらやっているというところがあります。

その裏返しとして、やっぱり想定していないことも起こったりして、ユーザーの肩にご迷惑をおかけしてしまうことも出てきているわけですね。ですから、そこで出た課題や問題を放置せずに、しっかり向き合うための資金を投じていきたいと思っています。

新しいライフスタイルや良い生活を送っていただけるような提案をし続けていきたいですから、そのために成長と品質は両立していかなくてはなりません。これまでも品質に関わる会議には多くの時間を割いてきましたが、品質が成長を追い抜くぐらいまでやらなくちゃいけないと感じています。

chocoZAPは、みなさまの生活にとって無くてはならない存在になっていきたい。そのために必要とされるサービスはどんどん進化させなくちゃいけない。もちろん、便利で簡単で楽しいというところは追求し続けるんですけれども、サービスをきっかけとして「運動が好きになった」「活動的になれた」「前向きになれた」、そういった価値を実感いただけるようなラインアップをこれからもご提案し続けたいなと思っています。