日本中の町で、夕方になるとチャイムが聞こえる。さまざまな曲が使われるようだが、「夕焼け小焼け」のメロディは定番の一つ。いつの頃からか知らないが、多くの町でこの曲が流れると、子どもたちは「家に帰らなきゃ」と思うもの。

ところが千葉県柏市には、その夕方のチャイムにまつわる奇妙な文化があると聞いてやって来た。夕焼けに染まる頃、街中に優しく響くメロディー・・・おや?「夕焼け小焼け」じゃないか。ところが、公園にいた子どもたちに聞くと「もう帰ります、パンザマストが鳴ったんで。」と言うではないか。パンザマストっていったいなんだ?小さい子を連れたママさんも「私も子どもの頃からパンザマストって呼んでました。」どうやら柏市では「夕焼け小焼け」のチャイムをパンザマストと呼び続けてきたらしい。

流山市民ファミリーと一緒にいた柏市民女子にメロディを聞かせると「パンザマスト!」と即答するが、流山市民は「知らない」と言う。隣の市なのに知らないのか!柏市女子は「小さい頃から聞いて来たから。もう40年近く。言っちゃった!」とお茶目に笑う。流山市民のパパとママになんて呼んでたか聞いても「名前ない」「特になかった」と反応が薄い。柏市民女子はそれに対し「パンザマストだよ、教えてあげればよかったね」となぜか上から目線で言い続ける。

パンザマストを調べても、辞書にそんな言葉は載っていない。夕焼け小焼けの歌詞を調べてみたが、「パンザ」も「マスト」も出てこない。どうやったらこの曲が「パンザマスト」になるのか?

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今度は歌詞付きと歌詞なし「夕焼け小焼け」を柏市民に聞き比べてもらった。歌詞付きを聞くと「夕焼け小焼け」と答える。パンザマストじゃないんだ!歌詞なしを聞くと「パンザマスト」。いや同じメロディですよ!「歌詞がなければパンザマストになる」と説明する。

柏市内では、公園に「今何時?パンザマストを守りましょう」と書かれた標語が!

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健康ランドの利用規約に「パンザマストは季節により変わります」とさらりと書かれている。

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小学校でも先生が「パンザマストが鳴ったらお家に帰ってください。」と子どもたちに話している。子供たちも「はーい!」と元気に返事。普通に使われ、すっかり市民に定着しているのだ。

しかし、なぜ「パンザマスト」なのか?柏市役所に聞くと衝撃の事実が!なんと「パンザマスト」とは、音楽ではなく、スピーカーがついた柱の商品名だったのだ!正確には「パンザーマスト」と言い、ドイツ語で「鎧の柱」という意味らしい。

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夕方のチャイム放送が始まった昭和56年頃、柏市は広報誌で「放送にはパンザマストが使われています」と何度も名前を出していた。それがきっかけなのかは定かではないが、いつしか市民は「柱」ではなく、柱から流れる「メロディー」の方を「パンザマスト」と呼ぶようになったようだ。

最後に柏キッズに「パンザマストって呼ぶのは柏市だけなんだよ」と話すと「えー!知らなかった!」と驚く。「知ってはいけないことを知ってしまった!」とショックを受けている子もいた。

柏市だけの局地的な言い方「パンザマスト」。千葉県民でも知らない人が多いみたいだけど、そう呼び続けられているなんて面白いね!