温泉と昭和が大好きな筆者は高校まで大阪で育ちました。関西では「城崎・有馬・白浜」がメジャーな温泉地として人気で、子どもの頃に何度か兵庫県の有馬温泉に行った記憶もあります。
関東に来てからは、昭和な街並みが残る熱海がお気に入り。しかし昨今、地道なPR活動が功を奏してか、熱海はZ世代含め再注目され大賑わいのようです。
賑わうのは良い反面、熱海が「映えスポット」「映えスイーツ」で混雑することに対して複雑な心境を抱く部分も。
「どこか近場でオジサン一人でもソロ温泉を楽しめる場所はないのかな……」と悶々としていると、「白浜へ飛行機で来ませんか、フライトは1時間程度ですよ」とお誘いが。
関東から和歌山の温泉に行くルートがあったか! と目から鱗が落ちた筆者、早速羽田から向かったのです。
羽田から75分で到着
1日3往復あるという飛行機で「南紀白浜空港」に到着。ここから市内まで車やバスでわずか10分程度! フライト時間は75分なので、1時間半程度で着くという驚きの近さ。これならソロ旅で気軽に行けますよね?
招待してくれたのは、昭和4年に創業された老舗ホテル「白良荘(しららそう)」を改装して誕生した「白良荘グランドホテル」さんです。同ホテルを運営するグランビスタ ホテル&リゾートは全国でホテルやレストランを手がけています。
関西人にはおなじみの白浜温泉にある、今年の11月には創業95周年を迎えるという同ホテル。歴史の長さを象徴するエピソードとして、「昔、祖父に連れてこられました」「自分の息子を連れてきました」などの話を宿泊者からよく聞くと支配人の西田訓さんは明かします。
そうした絆の強さが理由なのか、コロナ禍の期間も他のレジャー施設と比較すると、利用者が多かったとも言うのでした。
白浜温泉は道後温泉(愛媛県)、有馬温泉と合わせて、日本書紀、風土記などに登場することに基づいた「日本三古湯」としての歴史があることも人気の理由の一つでしょう。奈良時代から歴代天皇が訪れたという話ですから、そりゃあ半端ない。
近年は関東からの利用者も増えており、宿泊者全体の2割くらいが関東から来ているそうです。
白浜温泉と合わせて、大阪や京都観光もセットにしているようです、と営業担当を務める関聡司さんが補足してくれます。
白砂に感動
温泉に加えて魅力となるのが「白良浜と直結している唯一のホテル」ということ。つまり、敷地から道路など挟まず、そのまま裏の白良浜へ出られるのです。これは快適過ぎでしょう。
徒歩約30秒というビーチサイドでは、碧い海とサラサラの白砂が出迎えてくれます。このリゾート感と解放感は筆舌に尽くしがたいです。(語彙力よ……
なお、ほぼ全室オーシャンビューで、部屋から白良浜を楽しめるそうです。
昭和な街並みと海鮮を楽しむ
ビーチが素敵でもソロのオジサンだと、夏場などは周囲のリア充たちに囲まれてアウェイ感を抱くリスクもあります。安心してください、そういう時は白浜の街中を散歩するのです。
地方の街ならではの「いい塩梅」のリアルな昭和の雰囲気が色濃く残っていて、散策するにはもってこい。観光する場所ではないので、人通りも少なく、思う存分ソロ活を満喫できます。
いやぁ! 地方って本当にいいもんですね
もう少しアクティブに活動したいという人には、「海上釣り堀体験付き宿泊プラン」も今年の2月から用意されていました。
ホテルから車で10分程度に位置する「カタタの釣堀」と提携した、海釣りを体験できるアクティビティとなり、海上にある陸つながりの筏の上で海釣りを楽しめ、かつ釣った魚を一人一匹までその日の夕食として調理してもらえるのです。
マダイ(小鯛)・イサキ・アジなどが釣れる※ということで、釣り初心者の筆者もせっかくなので挑戦しました。※季節により釣れる魚は異なる
地元のベテラン釣り師のような人が、目の前でガシガシ当たりを出す。しかし筆者はあたりが来ない……。
スタッフの方が撒き餌をし、そのサポートもあってか1匹釣り上げましたよ! なお、隣で釣っていた大阪のライターさんはマダイを何匹も釣り上げていましたが笑
もっと確実に新鮮な海鮮を食べたい! という場合は、釣り堀を運営する地元の会社が展開する「とれとれパーク」がおすすめ。
海鮮マーケット「とれとれ市場」、「海鮮寿司とれとれ市場」などが隣接する商業施設なので、確実にうまい海鮮を堪能できます。
前者は市場ですが、イートインスペースもある他、市場で買った商品をテイクアウトして食べられるので、いろいろ見て楽しめますよ。
温泉で癒やされる
最後にホテルの温泉と客室についても感想を。
まず温泉ですが、大浴場が2階「潮風」、1階「松風」の二つあり、時間帯で男女入れ替え制となっています。前者は白良浜を一望できる開放的な露天風呂が特徴、後者は潮騒が届く海の近さが特徴です。
温泉好きの筆者ですから、当然どちらも入りました。
まず夜に入った潮風は、海を眺めながら湯につかる楽しみと、風が強かったこともあるのか浜辺に打ち寄せる波の音も聞こえ、「これは潮風が当たりでしょう」と最初思っていました。1階の松風は衝立で外の景色は何も見えませんからね。
夕陽や朝日を楽しめる潮風一択と思いながら、翌日の早朝、誰もいない松風で湯につかると、なぜか音とイメージだけの波が心地よかったのです。なんでしょうね、潮騒の音が深く体にしみいる感じでめちゃくちゃリラックスできたのですよ。
多分ですが、ホテルの雰囲気も影響したと今考えると思います。
つまり、最新設備の整ったホテルでは決してなく、例えば廊下の天井が低かったり、客室の木の柱は長年の利用による傷や日光による色褪せなど、歳月の流れを感じさせたりしました。
と同時に、「昭和の建造物らしい重厚さ」もそこかしこに感じ取れるのです。これが筆者にはよかったのかなと。
つまり、古き良き昭和の空気感を感じ取り、それが同じくオールドスタイルの松風とマッチして心地よさにつながったのではという推測です。
令和の今、昭和を振り返るとスマホもないし、インターネットもなく不便でした。と同時に、令和と異なりコンプライアンスや多様性を問われない、ある意味「いい加減でおおらかな時代」でもありました。その残り香がこのホテルにはある気がします。
昭和天皇も宿泊された
この昭和感、実は客室にも脈々と息づいています。というか、まさに「昭和を代表」? するであろう場所があるのです。
ホテルの最上階である6階は「ロイヤルフロア」と呼ばれ、オーシャンビューを望める15室で構成されています。
そのうちの一つ、貴賓室「岬」は「実際に昭和天皇が宿泊された部屋」で、部屋の内装は当時のままと言います。その環境を体験できるのは、なかなか得難いでしょうね。
それ以外の14室も70平方メートルの広さを持つ和洋室で、やはり極上の体験を得ることができそうですね。
ちなみに貴賓室「岬」は2名1室利用で3万8,700円~、ロイヤルフロアの他の和洋室は2名1室利用で3万150円~、3~5階のスタンダードフロアのデラックス和室は2名1室利用で1万8,450円~となっています。
温泉に加えてさまざまな「昭和」を楽しめる白浜。また動物好きであれば、パンダが有名な「アドベンチャーワールド」を楽しむということもできます。
筆者は既に昭和を十分に堪能できて大満足でしたのでスルーしましたが、ここも関西では昔から有名なレジャー施設ですよね。
羽田から1時間半程度、良質な温泉と昭和な雰囲気など、ソロでふらりと寄るのに最適でしょう。こんないい感じの温泉地、関東からもどんどん行ってほしいですね。そうすると飛行機の便数も増えるでしょうし。
でも熱海のようになるのは……ちょっと複雑。