「人とのつながりがいかに幸せなことなのか実感」
松本の魅力を感じられる場所の一つが、インスタグラムだ。出演作やファッション誌の美しいオフショットのほか、思いを込めた長文の投稿も人気を呼んでいる。そんなインスタグラムで、松本は昨年9月の誕生日、「幸せというものにも初めて感じることができたかもしれません」と投稿していた。「幸せを初めて感じた」という言葉が気にかかり、松本が初めて感じた幸せの正体を聞くと、“人とのつながり”だと教えてくれた。
「こうやって取材を受けていることも、ただのお仕事ではなく、心と心を交わし合う時間だと思っているので、“幸せ”なんです。何かを人と深く理解し合えたり、一緒につらいことを乗り越えたり、喜びを分かち合えたり。人とそういう思いを共有できることを、すごく幸せだと感じます。これまで、人と関わる前に、まず自分自身を成長させなきゃいけない、世の中のいろんなことを理解しなくちゃいけないと思っていたから、とにかく一人でやっていこうという思いが強かったんです。でも、長い時間、孤独を体験したおかげで、今、人とのつながりがいかに幸せなことなのか実感できています。そう思えるようになったのは、突然でした。もしかしたら、じわじわと変化していたのかもしれないけど、ヘレンケラーが水にふれて『Water』と叫び、物に名前があるという概念に気付いたように、いろんなピースが一気にぶわっと重なる瞬間があったんです。本当に最近のお話です」
「やっぱり私は簡単な言葉で片付けられない」
松本のインスタグラムでは、出演作や出演CMの告知も、長文で投稿されることがある。松本が一つひとつの仕事にどんな情熱を持ち、どう向き合ったのかが伝わる、エッセイのような投稿も見どころの一つだ。「そんなふうに言っていただけて、本当にうれしいですし、報われます」と深々と頭を下げながら、松本は、仕事への姿勢、投稿へのこだわりについて語る。
「インスタグラムは、短い言葉でいいとか、長いと読まないとか重いと言われることもあります(笑)。確かにそうかもしれませんが、やっぱり私は簡単な言葉で片付けられなくて。15歳でお仕事を始めて、思うようにできてこなかったという24年分の思いや経験があるから、一つひとつのお仕事をいただけることは、当たり前ではないと思っているんです。長文を書くにはものすごく労力がいるし、時間がかかる。私にとって、言葉はすごく大切なもので、こうやってインタビューをさせていただいたあとも、自ら原稿を確認します。誰かに影響を与えてしまう、誰かを傷つけてしまうかもしれない、責任のあるお仕事であると自覚しているので、一語一句、なるべく語弊のないように、誤解のないようにしたいんです。そうすると、インスタグラムの投稿一つするにも、何時間どころじゃなく、何日もかかることがあります(笑)。だから、あまりたくさんは更新できなくて。言葉や表現に対してこだわりすぎて、時間がかかってしまったり、お仕事をご一緒する方々にご負担をかけてしまうことは悩みでもあります」
「3話までは、騙されたと思って見てください」
最後に、ドラマに出演する俳優に対する最も王道でド直球な「ドラマを楽しみにしている方へメッセージを」という質問を投げかけると、「この質問にお答えするのが、一番難しいんです」と、変化球の答えが返ってきた。「一つひとつのお仕事をいただけることは、当たり前じゃない」――つい先ほどの言葉が、上辺だけじゃなく、心からそう思っていることが実感できた瞬間だった。松本は、考えながら、ゆっくりと言葉を紡いでくれた。
「『ミス・ターゲット』は、回を重ねるごとに面白くなっていくドラマです。私は、実は『愛の不時着』を見始めたとき、『こういう王道、別に好みじゃないんだけどな』と5話まで耐えられなかったんですけど(笑)、『騙されたと思って、見続けてみて』と言われて見たら、6話から一気にドはまりしちゃって。『ミス・ターゲット』は、1話・2話ももちろん面白いのですが、お話がドライブしていく3話までは、騙されたと思って見てください。ピュアな大人の純愛が見られる貴重なドラマだと思うので、日曜の夜に楽しんでいただきたいです」
1984年生まれ、東京都出身。2000年に『六番目の小夜子』(NHK)で連続ドラマデビューし、2018年『ホリデイラブ』(テレビ朝日)で注目を集める。近年はドラマ『向こうの果て』(WOWOW)、『それでも愛を誓いますか?』(ABCテレビ・テレビ朝日系)、『東京、愛だの、恋だの』(Paravi)、『雨に叫べば』(Amazonプライム・ビデオ)で主演を務め、ドラマ『トクメイ! 警視庁特別会計係』(カンテレ)、映画『キリエのうた』などに出演。現在、ゴールデン・プライム帯連ドラ初主演となる『ミス・ターゲット』(ABCテレビ・テレビ朝日系)が放送されている。公開待機作に、映画『湖の女たち』(5月17日公開予定)がある。
■スタイリスト:後藤仁子
■ヘアメイク :AKEMI KIBE(PEACE MONKEY)