そうした前提の中で、流川Dは「例えば“僕のことどう思ってる?”という質問が同じでも、みんな背景が違うので、全く違う展開になっていくんです。『オモウマい店』も、店が違えば物語も違うので、人が違えば家族も違うんだというのを感じています。ただ、“こどもディレクター”をやってくれる方に出会うのはなかなか難しいので、ディレクター陣のみなさんには苦労をかけますが、たくさん足を使ってとにかく出会っていただいているという形です」と、制作スタイルを説明。

上出氏も「“飽き”という大きな壁は絶対にありますよね。でも、この番組は本当に家族のディテールのディテールに触れていくので、大きな物語としては同じに見えてしまうことでも、人間関係の底の底まで見ることができると、全く違う話なんです」と強調する。

バリエーションの豊富さは、家族の物語の内容だけでなく、撮り方にも表れてくる。

「一般の人が撮るので、“こういう関係の2人がこの空間でしゃべるとすれば、この配置で画角で…”というセオリーがゼロだから、同じことが絶対に起こり得ないんです。どんな映像が上がってくるのか、制作陣がワクワクする気持ちは、何年やってもきっと変わらないので、実はそこも強みなんじゃないかなと思います」(上出氏)

「取材相手の顔が写っていなくてもその場の空気が撮れていたり、それが面白いんです。“こどもディレクター”の方が自分にカメラを向けて独白するというのもありましたし、カメラの使い方っていっぱいあるんだなと思わせてもらっています」(流川D)

プロの仕事ではないだけに、メーカーのロゴが思い切り入った商品をその場から片付けることもなければ、会話が核心に入るタイミングで思わぬ人物がカットインしてくることも。上出氏は「よく“リアリティがある番組”という言い方をすることがありますが、もう“リアル”なんです」と表現した。

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家族とスタッフの数だけ広がる可能性

その撮影手法には、担当ディレクターの影響もあるといい、上出氏は「ディレクターとの最初のコンタクトによって、一つの方向性は決まってくるはずなんです。その出会ったディレクターのカメラの回し方とかインタビューの仕方とか、いろんなことが影響しているはずなので、どのディレクターとであるかというところの掛け算にもなって、可能性という意味ではとどまるところを知らないですよね」と期待。

それに加え、流川Dは「そのディレクターの背景や家族像によって、出会いも変わってくると思います。自分の家庭環境で思うところがあるディレクターだからこそ、この人にカメラを預けたんだという組み合わせもあるんです」と解説する。レギュラー化によってディレクターの数を増強しており、映し出される家族の物語が、さらにバリエーション豊かになる可能性を秘めている。