「リファイニング建築って?」と聞かれても、「それ、自分にどんな関係が?」という人がほとんどでしょう。しかしこれが意外と関係あるんです。例えば、築年数が古いマンションのリノベ物件を購入したい人、新築マンションを購入して老後まで住みたい、もしくは老後に売却したい人、好立地で家賃オトクな物件を探したい人、さらにはマンション1棟所有している人も、知っておくと物件選びに役立つ知識となるでしょう。
建て替えでも大規模補修でもない、再生建築手法「リファイニング建築」
建物の資産価値がなくなるまでの法定耐用年数は鉄筋コンクリートで約50年。もちろん、物理的な老朽化も進みます。そうなった時の選択肢として建て替えか大規模補修というのが一般的な中、今注目を浴びているのが「リファイニング建築」なんです。
リファイニング建築は、青木茂建築工房代表の青木茂氏が1999年に提唱した再生建築手法。耐震補強などをしっかり実現しながら、建て替えに比べて工事費が70%程度、工事に伴うCO2排出量は70%以上削減できるなど、サステナブルを目指す現代社会にフィットすることから注目されてます。
建て替えでは高さ制限や、資材高騰による建築費がネックに
さて、今回見学に行った本駒込の物件は賃貸物件で、青木氏と三井不動産がタッグを組んだリファイニング建築物件の7棟目。青木氏が全国で手掛けたリファイニング建築物件としては、記念すべき100棟目です。外観は新築マンションそのもので素敵! この外観もリファイニング建築の恩恵を受けています。大規模補修を行った場合には耐震補正のためのV字補強材が使われて、外観や居住性が損なわれてしまうのだそう。
現場では青木氏や三井不動産の担当者、さらにオーナーの方にお話を伺うことができました。大規模補修となると、旧耐震基準の1981年6月より前に建てられているので耐震補強をする必要もある。建て替えとなると建築当時にはなかった日影規制による高さ制限があるため、7階建てを3〜4階建てにしかできないこと。そして、近年の資材高騰などが理由で想定以上に建築費がかかることが悩みだったとか。
その点、リファイニング建築ならば高さを維持でき、建築費を70%程度に抑えられる。耐震補強については、まずコンクリートの劣化や鉄筋の腐食などの情報から見る対応年数評価を第三者機関に依頼。検査結果をもとに、住居部分に邪魔にならないよう配慮しながらコンクリートの壁を挿入したりと、内側からしっかりと対震補強を行います。この建物の対応年数評価は今後88年も使えるという評価だったとか。
この建築手法は、建築物全体を構造的に支える骨組み以外は解体し、スケルトンの状態から新たなデザインの仕上げを施します。そのため外観がV字補強材などで損なわれることなく、各部屋のレイアウトやリフォームの自由度が高い。骨組み部分を残すため資材廃棄物は少なく、工事に伴うCO2も削減。また、解体費用などが抑えられるため工事費が70%程度に抑えられるのです。理にかなっていて、かつ環境に優しいというのは住人も気持ちがいいですよね。
このマンションでは、ニーズに合わせて2DKメインだった住戸を2LDKと1LDKの住戸に変更したのだとか。部屋のレイアウトや設備は新築マンションそのもの。最上階にはバルコニー付きの部屋もあり、7階建てを維持できたおかげで都心のマンションとは思えない見晴らしのいい景色が広がっていました。
賃料に関しては、募集時に新築と謳えないことから新築と比較して5%ほど安く設定。オーナー視点では再生前に10万円弱だった部屋を15万円程度で貸し出すことができるため、オーナーも住人もお得!実際、この物件は開始早々にほぼ満室となったそうです。
分譲の場合は住みながらの工事も可能ということで、今後さらに多くの建物でリファイニング建築が注目を集めていくでしょう。分譲マンションに住んでいる人、今後検討している人も知っていて損はない、建築の現場でした!