第82期順位戦C級2組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、最終11回戦全27局の一斉対局が3月12日(火)に各地の対局場で行われました。このうち、名古屋将棋対局場で行われた山本博志五段―藤本渚四段戦は千日手指し直しのすえ107手で藤本四段が勝利。三間飛車を得意の急戦で破って自力昇級を決めました。
激戦の昇級争い
3つの昇級枠を55名で争う今期のC級2組、11回戦を終えた段階で冨田誠也四段・高田明浩四段・藤本四段が8勝1敗で上位につけます。山本五段の先手番で始まった対局は藤本四段が居飛車穴熊を用いて三間飛車に対抗。しかし仕掛け直後に千日手が成立します。
指し直しとなり先手番を得た藤本四段は急戦を採用。三間飛車側の角道をこじ開け角交換から飛車をさばいたのは古くから指される仕掛けです。これに対し桂の活用を優先したのはこの戦法を知り尽くす山本五段の細かな工夫。駒のさばきを優先する狙いが見て取れます。
藤本四段の大局観光る
右辺での取り合いを経て戦いは一段落。藤本四段は自陣に引きつけた竜を、山本五段は4筋の拠点を主張して難解な中盤が続きます。黙っていては端に打った自陣角が遊ぶと見た山本五段はこの拠点からなだれ式に猛攻を開始しますが、本局は藤本四段の対応が光りました。
桂を打って金取りとされたとき、じっと歩を打って後手の飛車のほうの働きを止めたのが馬筋を生かした冷静な対応。一時的に金桂交換の駒損になるとはいえ、後手陣にくすぶる飛車をいじめれば十分お釣りがくるとしたのが藤本四段の確かな大局観を示した一手でした。
優位に立った藤本四段はその後も冷静に駒得を拡大。終局時刻は23時25分、最後は自玉の詰みを認めた山本五段の投了により藤本四段の自力昇級が決まりました。なお冨田四段と高田四段も勝ったためこの3人全員のC級1組昇級と五段昇段が決まっています。
水留啓(将棋情報局)