メルカリの子会社であるメルコインは2月15日、ビットコインを使って直接メルカリの商品を購入できるサービスを開始した。購入時点のビットコインの価格を元に決済が行える形になり、同社では今後さらにサービスを拡充し、メルカリを「世界で最もビットコインが使われている場所」(メルコインCEO中村奎太氏)にしたい考えだ。

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    メルコインCEOの中村奎太氏

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    メルカリの購入にビットコインが直接使えるように

昨年3月、メルカリアプリ内でビットコインを購入できるサービス開始

メルコインは、メルカリアプリ内でビットコインを購入できるサービスを2023年3月から提供している。メルカリの売上金をビットコイン購入の原資に使えて、さらにメルカリアプリ内から簡単に購入できる点が特徴で、1円単位でビットコインと交換できる。「1ビットコイン当たり何円」ではなく、「1円あたり何ビットコイン」という表現で分かりやすさにも配慮してきた。

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    メルカリのビットコイン取引サービス。メルカリアプリ内から簡単に購入でき、分かりやすさを重視したことで利用者が拡大した

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    アプリ内でビットコインの現在価値が確認できるが、円ベースの表記で分かりやすさを重視したという

その結果、昨年10月までに100万ユーザーを獲得。同時期に業界では150万ユーザーが拡大しており、そのうちの7割に当たる100万ユーザーをメルコインが稼いだ形で、メルコインが「マスアダプションに向けて牽引できている」と中村氏は自賛する。

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    7カ月で100万ユーザーを獲得。業界全体の新規ユーザーの内の7割をたたき出したという

10月以降の利用数は公表されていないが、中村氏は好調に推移しているという認識を示し、利用率も非公表だが、「売上金以外でビットコインを購入している人もいて好評」(中村氏)という状況だという。

現状は、ビットコイン購入の49%がメルカリの売上金を使用しており、値上がりした段階で売却して残高に戻してメルカリの購入代金に使った人は48%いた。購入商品もおもちゃ・ホビー、エンタメ、レディースなどの分野で、一般的なメルカリでの買い物に使われていると分析されており、中村氏は「いつものメルカリの購入行動と変わらず、いつもの体験の中でビットコインが浸透してきている」と指摘する。

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    売上金をビットコインに変え、ビットコインを売却してメルカリで購入するという消費行動が確認できるようになっているという

新たにビットコインによる決済機能を提供開始

これまでは主に「ビットコインを持つ」という点を重視していたメルコインだが、「ビットコインを保有したが使い道が分からない」など、利用目的が見出せないという声があり、さらにビットコイン利用者の83%がビットコインでそのままメルカリの支払いをしたいと回答していることから、「ビットコインを使う」サービスとして、新たにビットコインによる決済機能を提供する。

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    8割以上がビットコインを買い物に使いたいと考えている

具体的な使い方としては、通常のメルカリでの買い物に際して、決済手段としてビットコインを選択するだけ。ポイント、残高、メルカードといった従来の決済手段との組み合わせが可能で、その中にビットコインの支払いが追加される形。

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    これまでの購入時の操作とはほぼ変わらず、決済手段にビットコインが追加された形

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    実際の画面。商品を選んで「購入手続きへ」

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    決済手段でポイントや残高などを選択する中で、同様にビットコインが選択できるように

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    ビットコインはリアルタイムに値動きしており、この画面でも「当社レート」がリアルタイムに変動している。そのため、「同意して設定する」を押した段階でのレートが確定するそうだ

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    最終的にポイントや残高を組み合わせて支払いができる

ビットコインはリアルタイムに値動きしており、購入手続においてビットコインの使用額を決定した時点での価格で確定して決済が行われる。利用者の手続きは特になく、ポイントなどと同様の使い勝手という簡便性が特徴だ。

これによって、「メルカリの30億を超える商品と暗号資産が交換されることになる。暗号資産を活用した大きな価値交換の手段が拡大する大きな第一歩になるのではないか」と中村氏。これまで、値動きを確認しながら売却して残高に戻してメルカリで使うというサイクルから、ダイレクトにメルカリで決済できるようになって、暗号資産の活用がさらに加速されると中村氏は期待する。

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    メルカリでビットコイン決済が可能になることで新しい体験価値が提供できる、と中村氏

ビットコインでの決済シーン拡大へ

メルコインでのビットコイン取引サービスは、「まずは身近に感じてもらいたい」(同)という観点から購入のハードルを下げて簡単に利用できることを重視していた。結果として利用者も拡大したが、機能的には購入と売却だけしかできなかった。今回、決済機能を搭載して、「使う」という利用シーンを追加した。

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    これまではビットコインの売却によって残高に戻す必要があった

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    これからは直接決済に利用できるようになり、よりシームレスなビットコイン体験が実現される

今後は、さらなる機能の拡充も検討する。例えばビットコインの購入では積立機能、利用シーンではメルカードの利用額の精算にビットコインを直接使えるようにするといった機能は検討されているそうだ。

現時点で日本では、ビットコインをそのまま決済に使えるリアル店舗やECサイトなどは少ないが、メルカードへの精算機能が追加されれば、疑似的にはビットコインでの決済シーンが拡大することになる。

海外では、スターバックス、バーガーキング、Uber Eatsなど、暗号資産を使った決済に対応したサービスが増えているという。すでにグローバルでは1.3兆円規模の市場となっており、2025年には1.6兆円規模まで拡大すると予想されているそうだ。

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    海外では暗号資産決済に対応したサービスが拡大しているという

暗号資産決済を提供する米Bitpayでは月間6万回の決済回数となっており、ビットコイン単体だと月間1.9万回、1秒間に0.007回程度の取引しか行われていない。それに対してメルカリのGMV(流通総額)は年1兆円規模で、1秒間に7.9個の商品が売れている。この購入にビットコインが使えるようになると、一気にビットコイン決済が拡大する可能性がある。

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    暗号資産決済市場は拡大中だが、メルカリの対応によってこれがさらに拡大すると見込む

そうしたことから、中村氏は「メルカリが世界有数のビットコインが利用される場所になるのではないかと考えている」とアピールする。そのためにも、まずはビットコイン決済への対応でユーザーの動向を検証して今後のサービス拡大に繋げる。

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    世界でも有数のビットコイン利用場所に成長させることが目標

将来的には、メルカリにおける物理的な商品以外に、デジタルアセットの取引にも拡大していきたい考え。他の暗号資産のアルトコインやNFTにも広げていくことも想定するが、メルカリ自体がデジタルアセットのマーケットプレイスへと進化する流れと歩みを合わせる必要があるため、このあたりは将来的な構想と位置づけている。

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    将来的にはデジタルアセットやアルトコインへとサービス範囲を拡大していく