東京・上野の東京国立博物館で、建立900年 特別展「中尊寺金色堂」が始まりました。世界遺産にも登録される平泉の文化遺産のシンボルである金色堂は、外観も内観も仏像もすべてが金で覆われた絢爛豪華なお堂。そんなまばゆいばかりのお堂の中に入り込んだような空間で、国宝の仏像11体をはじめ、きらびやかな堂内荘厳具の数々を味わう貴重な機会となっています。
中尊寺金色堂は平安時代の末期に、奥州藤原氏初代の藤原清衡が建立した、東北地方現存最古の建造物。その名前が示すように、外観も内観も仏像も金で覆われ、‟皆金色(かいこんじき)”と称される、世界でも唯一無二のお堂です。
末法思想をふまえた浄土思想が流行し、「この世には期待しない」「来世で次のチャンスにかける」という時代に、藤原清衡が自身の極楽往生を願って、この世に極楽浄土を作り上げた金色堂。お堂の中には3つの須弥壇が設けられ、それぞれの内部に置かれた棺には、今も遺体が納められています。こうしたお墓のようなお堂というのは、現存しているものでは例をみないそうで、その最も重要な中央壇内部の棺に眠っているとされるのが藤原清衡。今回は、この中央壇に安置される国宝の仏像11体すべてを展示しています。
「須弥壇中央の壇に安置している仏像のうち、とりわけ阿弥陀三尊像は、ふっくらとした丸いお顔が特徴です。平安後期を代表するような仏像でありながら、鎌倉時代の仏像を先取りするような、はりのあるお顔で、ポンと押すとぷりっとはねかえってくるようです」と、同館 東洋室 主任研究員の児島大輔さんは金色堂の仏像の特徴を解説します。
阿弥陀三尊像の両脇に3体ずつ安置される6体の地蔵菩薩立像は、「万が一極楽往生できなくても、このお地蔵さんが救ってくれるというものすごい力を持ったお像なんですが、大変に可愛らしい」と児島さん。また、ほかではみられないような激しい動き見せる持国天・増長天の二天像にも注目。この頃の京都の貴族たちは、前例主義に則りあまり新しいことを好まない風潮だったそうですが、こうした仏像の作例からも、奥州藤原氏が新しい時代に先駆けた先進的なことをしていたことをうかがわせるといいます。
会場の大型モニターでは8KCGで原寸大に再現された金色堂とその内部を間近で体感でき、まるでお堂に入ってお参りするかのような雰囲気が味わえます。また、実際は縦に並んでいるお像が左右横並びに展示されているので、どの仏像もぐるりと360度で見ることができるのも同展の醍醐味。ふだん見ることができない角度からじっくりと堪能できるので、「一体一体のお像を、より親しく感じて頂ける。解像度がググっと上がると思います」と児島さん。
黄金に輝く金色堂を体感し、奥州藤原氏が平泉で築いた仏教文化の粋を味わえる同展は、4月14日まで開催中です。
■information
建立900年 特別展「中尊寺金色堂」
会場:東京国立博物館 本館 特別5室
期間:1月23日~4月14日(9:30~17:00)/月曜休、2/13休 ※ただし2/12・3/25は開館
観覧料:一般1,600円、大学生900円、高校生600円、中学生以下、心身に障害のある方及び付添者1名は無料