JR西日本は18日、北陸新幹線の敦賀駅(2024年3月16日開業予定)にて乗換えシミュレーションの報道公開を実施した。JR西日本およびグループ会社の社員約900名が乗客役として参加。1日限りの大々的な実験となり、乗換えに関する課題があぶり出された。

  • 敦賀駅に停車していた北陸新幹線の車両

北陸新幹線は3月16日に金沢駅から敦賀駅まで延伸される。同日に開業する北陸新幹線の敦賀駅は3層構造となり、高さは約37mにもなる。1階は在来線特急ホーム(島式2面4線)、2階は乗換えコンコース、3階は新幹線ホーム(島式2面4線)となる。

北陸新幹線敦賀延伸にともない、大阪駅からの特急「サンダーバード」、名古屋駅・米原駅からの特急「しらさぎ」は敦賀駅止まりとなり、北陸新幹線と在来線特急列車の乗換えが発生する。そこで、スムーズな乗換えを実現すべく、駅舎にエスカレーター26基、エレベーター6基、乗換え改札機19通路を整備。実際にスムーズに乗り換えられるか、開業前にシミュレーションが行われた。

報道公開されたシミュレーションでは、北陸新幹線「つるぎ」から特急「サンダーバード」「しらさぎ」への乗換えを想定。3階の新幹線ホームから1階の在来線特急ホームへ移動することになる。乗換えに要する時間の目安を8分に設定した。このシミュレーションはあらゆる利用者を念頭に置き、車いす利用者なども想定。北陸新幹線、在来線特急列車ともに実際の車両を使用した。

  • 11時55分、北陸新幹線「つるぎ」の扉が開き、シミュレーションがはじまった

  • 乗換え改札機を抜け、1階の在来線特急ホームへ向かう

  • 34番線に名古屋行の特急「しらさぎ」が停車している

  • シミュレーションでは車いす利用者も想定。参加者全員の乗車を確認した後、「サンダーバード」「しらさぎ」の扉が閉まった

11時55分、北陸新幹線「つるぎ」の扉が開き、シミュレーションが始まった。乗客役の社員たちが続々と2階コンコースへ移動し、1階の在来線特急ホームをめざす。在来線特急ホームでは、33番線に大阪行の特急「サンダーバード」、34番線に名古屋行の特急「しらさぎ」が停車している。島式ホームということもあり、誤乗を防ぐため、駅員が何回も列車名と駅名を連呼した。

特急「サンダーバード」「しらさぎ」ともに参加者全員の乗車を確認し、扉が閉まった時点でシミュレーションは終了。北陸新幹線「つるぎ」の扉が開いてから、在来線特急列車の扉が閉まるまで10分以上を要した。結果的に乗換え目安時間の8分を超えることになり、課題を残した。

JR西日本金沢支社副支社長の岡久資氏は、シミュレーションの結果に関して、2階の乗換えコンコースから1階の在来線特急ホームへ移動する際、改札機近くのエスカレーターに乗客が集中したことを課題に挙げた。駅構内および車内での放送を工夫する必要性も指摘した。

  • 京都・大阪・名古屋方面へは敦賀駅で在来線特急列車への乗換えが必要となる

  • 2階の乗換えコンコース。幅が広くとられている

  • ずらりと並んだ乗換え改札機

ところで、筆者は今回の報道公開を取材するため、大阪駅から敦賀駅まで特急「サンダーバード」に乗車した。大阪駅から敦賀駅まで約80分、京都駅から敦賀駅までは約50分である。

特急列車の場合、乗車から60分前後が乗客にとって最もリラックスしている時間帯ではないかと思う。実際に「サンダーバード」に乗車している間も、車内で睡眠している乗客を見かけるなど、のんびりとした雰囲気が漂っていた。

  • 1階へのエスカレーター付近

  • シミュレーションでは実際の車両を利用した

敦賀駅のある敦賀市は人口約6万人であり、決してビルが並ぶ都会ではない。車窓を眺めると、のどかな風景からいきなり高さ37mの新駅舎が目に飛び込んでくる印象だった。北陸新幹線の開業後は、敦賀駅到着前に同駅が新幹線との乗換駅であることを車内放送で周知徹底する必要性があるだろう。丁寧な案内がなければ、大阪・京都方面からの所要時間や車窓風景などを考慮しても、車内での乗客の乗換え準備が遅れるように思った。