第17回朝日杯将棋オープン戦(主催:朝日新聞社・日本将棋連盟)は、藤井聡太名人・竜王-斎藤慎太郎八段戦を含む本戦トーナメント1・2回戦の計6局が1月13日(土)・14日(日)に名古屋国際会議場で行われました。対局の結果、角換わりの熱戦を92手で制した藤井名人・竜王が2回戦に進出。その後の増田康宏七段戦も制してベスト4入りを決めています。

ファン注目の1回戦

多くのファンの拍手に包まれて対局者たちが登壇。振り駒が行われた本局は先手・斎藤八段の注文で角換わりに進展します。先手の腰掛け銀に対して後手となった藤井名人・竜王の作戦は早繰り銀の速攻策でした。持ち時間各40分の早指し戦、テンポよく指し手が進みます。

先手陣が最善形になる直前に藤井名人・竜王が仕掛けます。まず銀交換を含みに歩をぶつけ、続いて3筋の歩を突いたのは桂頭攻めを含みにした揺さぶり。先手はやむを得ず飛車を浮いて受けますが、空いた2筋の空間に角を打ち込んだのが流れるような仕掛けです。

圧巻の読みでしのいだ終盤戦

受けていてもキリがないと見た斎藤八段は馬を作り返して攻め合いに活路を見出しますが、自陣そばに迫るこの馬に対してガツンと金を体当たりしたのが藤井名人・竜王の読みの入った勝負手でした。しばらく受けに回ることになっても十分受けきれるという大局観です。

馬を切った斎藤八段は3筋に築いた拠点に金を打ち込んで攻撃続行。早指し戦ならではの勢いある攻めに思われましたが、ここで玉を立って顔面受けに出たのが藤井名人・竜王の勝着。裸にされた後手玉は風前の灯火のようでも、先手の攻め駒がどうしても1枚足りません。

猛攻をしのいだ藤井名人・竜王は満を持して反撃開始。終局時刻は11時43分(10時対局開始)、自玉の受けなしを認めた斎藤八段の投了で熱戦に幕が引かれました。勝った藤井名人・竜王は午後に行われた増田七段との角換わり戦も制してベスト4入りを決めています。

水留啓(将棋情報局)

  • 大盤解説会場に姿を見せた藤井名人・竜王は「玉が上部に逃げ出す形になって指しやすくなったか」と一局を総括(写真は第73期ALSOK杯王将戦七番勝負第1局のもの)

    大盤解説会場に姿を見せた藤井名人・竜王は「玉が上部に逃げ出す形になって指しやすくなったか」と一局を総括(写真は第73期ALSOK杯王将戦七番勝負第1局のもの)