「どんなマンションを買いたいか?」・・そう聞かれたら、どんなマンションを思い浮かべるでしょうか? タワーマンションと呼ばれる高層マンション? もしくはそこまで高さのない低層マンションでしょうか?

今回改めて注目したいのは「低層マンション」です。タワーマンション(タワマン)に比べて、取り立てて語られることはあまりありません。ですが、低層マンションならではの魅力やメリットがあります。低層マンションに絞って探されている方も多くいます。

今回は低層マンションに住むことのメリットに焦点を当て、その快適さや暮らしやすさについてご紹介してみたいと思います。

  • 画像はイメージ / PIXTA

■「低層マンション」7つのメリット

ここでは「低層マンション」を「7階建て以下のマンション」として定義します。では早速、低層マンションならではの良いところを紹介していきましょう。

1.エリアに縛られずに豊富な候補の中から選べる
2.プライベート空間の趣が強い
3.コミュニティが小規模で距離が近い
4.エレベーター待ちのストレスが少ない
5.月々の管理費の負担が少ない
6.静かな住環境や周辺環境が得られる
7.窓を開けたり、洗濯物を干すことができる

【1】エリアに縛られずに豊富な候補の中から選べる

大きな敷地面積が必要となる高層マンションに対して、比較的小さな面積でも建てることができる低層マンション。東京首都圏の特に都心部において、タワーマンションが建設可能な土地は限られます。そのため、中古マンションの売出物件数を見ると、圧倒的に低層マンションの方が多くなります。

下記は、東京首都圏の都心部における中古マンションの売り出し物件数を、タワーマンションと低層マンションで分けてマップに落としてみたものです。左がタワーマンション、右が低層マンション。圧倒的に数に差があることがわかるかと思います。またタワーマンションがあるエリアは、都内でも偏りがあることもわかります。

  • 資料提供: ハウスマート

※「タワーマンション」を20階建以上、「低層マンション」を7階建以下として定義しています
※円の大きさは、売り出し物件数の多さを表しています
※2023年12月現時点でのデータです

あらかじめエリアが決まっている場合は、豊富な物件数から選ぶことができる低層マンションの方が希望物件が見つかりやすいでしょう。逆にいうと、タワーマンションに住みたい場合は、必然的にエリアが限定されていくことになります。

【2】プライベート空間の趣が強い

タワーマンションは高層建築物の建設が許可されている市街地や駅近立地、再開発エリアに建てられています。そのため、マンションの下層部にスーパーなどの商業施設が設計されているタワーマンションは、住民以外の人の往来があることが通常。一方、低層マンションは駅周辺や商業エリアからは少し距離をおいたエリアに多く建設されています。そのため、住民以外はわざわざ足を踏み入れることがない住宅街に立地しているため、基本的には人の往来が少ないエリアになります。騒々しい場所や不用意に知らない人が行き来する場所に住むのは落ち着かない、という方は低層マンションがベターでしょう。

【3】コミュニティが小規模で距離が近い

低層マンションは階層が少ない分、数十戸という規模感になります。そのぶん、タワーマンションのような100戸や場合によっては1000戸を超える大規模マンションに比べて、住民同士で顔を覚えられるほどの規模感のコミュニティに暮らすことができます。

また、人数が少ないぶん、マンション管理観点でも意思疎通がとりやすい、といったことはあるでしょう。

【4】エレベーター待ちのストレスが少ない

低層であるぶん、エレベーター待ちでイライラする、住戸からエントランスまで降りるのに時間がかかる、というようなエレベーターに関連するストレスは少ないでしょう。

また、タワーマンションへの心配事としてよく言われるのは災害時。タワーマンションでは地震時にエレベーターが停止することがないよう対策がとられていますが、それでも完全に止まらないという心配がないとはいえません。高層階であるほど階段で降りるのは大変にはなるでしょう。不安な方は、より地上に近い低層マンションを選ぶと精神的な不安は解消できるかもしれません。ただし、低層であることが防災に対しての絶対的な強さにつながるかと言われると一概にはいえません。「防災」の対象となる災害は、地震ばかりではなく水害、火災も含まれるためです。防災に対する対策という観点では、地盤や周辺の建物状況なども考える必要があります。低いから安心、高いから不安、ということではないということは念頭に置いておきましょう。

【5】月々の管理費の負担が少ない

住戸数が少ないぶん、低層マンションでは豪華な共用施設やソフトサービスがないことが多くなっています。ジムやプールなどの共用施設は管理費の高さにも直結するため、その分月々の管理費が少なくなります。ただし、低層マンションでもこうした設備が充実している場合は住戸数が少ない分、管理費等の負担が大きくなる場合があります。タワマンは住戸数が多い分スケールメリットが出ることで共用施設やサービスを提供できている、ともいえるので、これはマンションの仕様や住戸数によるところも大きいでしょう。

【6】静かな住環境や周辺環境が得られる

低層マンションの方が高層マンションに比べて、周囲の騒音に悩まされずに済むというケースもあります。これは、低層マンションが住環境を守るための都市計画上の規制がかけられたエリア(第一種低層住居専用地域など)に建てられていることが多いためです。幹線道路に面していない、車通りの少ない住宅地に建設されていることで、結果的に周辺が閑静であるという、立地的な要因です。また、タワマンは高層階であると周囲に音や風を遮るものがないため、遠方のサイレンや車による騒音、風の音などが想像以上に大きく響いて聞こえてきてしまうという構造上の要因もあります。

【7】窓を開けたり、洗濯物を干すことができる

タワーマンションでは、高層階で遮蔽物がないぶん開放感や眺望が得られます。一方で、風が強く吹きつけるため窓が開けられない仕様になっていたり、開け続けておくことが難しかったり・・また、万が一ものをベランダから落下させてしまった場合事故につながりうるため洗濯物や布団を干すことが禁止されているマンションも少なくありません。そのため、天気がいい日はできれば洗濯物を外に干したいという方や、窓を開けて風を通したいという人には低層マンションの方がおすすめです。ベランダがついていることも多いですし、1階であればテラスや庭がついているマンションもあります。

■タワマンは公共空間、低層マンションはプライベート空間

いかがでしたでしょうか。全体的な傾向として、マンションの敷地内、棟内の共用部で快適に過ごせる仕組みになっているのがタワーマンションであるとするなら、「自分や家族のスペース」として利用できる範疇で自由に快適に暮らしを楽しめるような設計になっているのが低層マンションである、ともいえるかもしれません。タワマンは公共空間の延長、低層マンションはプライベート空間の延長、という言い方もできそうです。

■低層マンションを選ぶ時の注意点

記事の冒頭でお伝えした通り、東京首都圏では低層マンションの方が圧倒的な棟数・戸数がありますので、この記事をお読みの方の中でも多くの方が低層マンションを選ばれることになるのではないかと思います。

特に高価格帯の低層マンションに絞って考えた場合、住戸数という視点で見ると2種類に大きく分かれます。

  • 低層で大規模=郊外のファミリー向け大規模開発マンション
  • 低層で小規模=都内の第一種低層住居専用地域などにある高級マンション

前者の場合、工場や企業の所有地だった広大な土地等がディベロッパーによって大型開発されたケースです。敷地内で複数棟建っていることも多く「板状マンション」などと呼ばれることもあります。

また後者は、武家屋敷跡であったり歴史ある高級住宅街とされる場所に立地する低層マンション。多くの場合、住環境を守るために都心部の駅近立地でも第一種低層住居専用地域や第1種中高層住居専用地域などに指定されており、不動産業界でブランドアドレスとして知られる場所に位置するマンションなので、将来的にも価格が下がることは考えづらいようなVIPマンションです。

気をつけたいのは、郊外のマンションの場合。大型開発の場合は駅を中心に、長期的な計画の元に大型商業施設や交通インフラを整えていくことがセットで行われますので、そうしたエリアのマンションは引き続き将来的な資産価値も保たれやすいでしょう。シンボル的なマンションであれば、エリア内でのステータスを保つこともできます。が、そうした計画がない土地や駅にポンと位置する低層マンションは・・将来性には疑問符がつくと言わざるをえません。マンションを購入する際には、ぜひその街が今後どのように発展し、賑わいや住みやすさを維持していくためにまちづくりを計画しているかを自治体HPなどで確認してみてください。先々、後悔するリスクを減らすことができるはずです。