第82期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は6回戦が進行中。12月19日(火)には渡辺明九段―永瀬拓矢九段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、入玉模様の熱戦を209手で制した永瀬九段が4勝2敗として挑戦権争いに踏みとどまりました。
上位争い目指して
ともに3勝2敗と中位につける両者にとっては順位戦中盤の分水嶺。永瀬九段の先手で始まった本局は後手の渡辺九段が定跡形を外す趣向を披露して幕を開けました。角道を開けずに金銀の配備を急ぐのはいわゆる村田システムにも見られる力戦志向です。
角交換を経て局面は一段落。右玉に組み替えて様子を見た渡辺九段に対して永瀬九段は積極的な自陣角で局面打開を図ります。盤上右方で始まった戦いは左辺に飛び火しやがて全面戦争へ。首尾よく敵玉そばに馬を作った永瀬九段の勝利は目前かと思われました。
形勢混とん、入玉をめぐる争いに
決め手をつかめないまま、盤上は渡辺九段が連続の勝負手が実って次第に混とんとしてきます。敵陣すぐそばまで逃げ出した永瀬玉が渡辺玉と接近した局面がポイントとなりました。秒読みのなか、馬での王手を受けた永瀬九段は逃げ方の二択を迫られています。
永瀬九段が選んだ6筋からの入玉ルートは自然な一手ながら、直後に急所のと金を払われてみると急に攻めが細くなった印象で、しばらくは自玉の安全確保に専念せざるを得ない状況になりました。
気持ちつないで永瀬九段が再度突き放す
不本意な仕切り直しとなった終盤戦ですが、永瀬九段の気持ちは折れませんでした。寄せを目指す渡辺九段に対し、丁寧に成駒を量産して自玉を安全にしていく中、渡辺九段の攻めは徐々に細くなっていきました。
終局時刻は翌20日1時36分、最後は自玉の詰みを認めた渡辺九段が投了。終局直後の両者はすぐに難解な終盤の応酬について口頭で感想戦を開始しました。これで勝った永瀬九段は4勝2敗、敗れた渡辺九段は3勝3敗となっています。
水留 啓(将棋情報局)