年末の大掃除で不要な自転車を処分して…という人は多い。言い換えると、年明けからは中古市場がグンと賑わいを見せるシーズンでもある。掘り出し物の中古車がすぐに見つかればいいが、簡単に超お買い得車が見つかるとは限らない。

そこで安物買いの銭失いをしないためのノウハウを身につけておこう。今回は都市伝説めいた素材にまつわる迷信や、消耗品についての注意点を説明しよう。

■フレーム素材で性能を早合点しない

自転車を選ぶときの基準にはいくつかあるが、フレーム素材も自転車の素性を知るに役立つのは間違いない。ただし、巷間言われていることの中には、同意しかねる点もいくつかある。

クロモリ
スポーツバイク用フレーム材として、クロモリ鋼はもっとも実績のある素材だ。現在もカスタムフレームの主力素材であり、独特の走行感やラグワークなど、エンスーなサイクリストからの支持も厚い。素材としては弾性率が高く、成形性、加工性、溶接性やコストパフォーマンスに優れているのが魅力だ。

しかし、サビのことを考えると、耐用年数は巷間言われるほど長くない。添加物のクロムによって酸化皮膜はできるが、添加量も少なく防錆性は高くないと考えるべき。100年後でも使えるような言われ方を散見するが、それは厳密にコンディションが管理されていればの話。錆びによってパイプが薄くなれば、当然のことながら強度や剛性は低下する。

アルミ
エントリーモデルに採用されるアルミ合金は、軽さとコストパフォーマンスを両立した素材。アルミと一口で言われることも多いが、純アルミがパイプに加工されることはない。スポーツバイクで使われるのは主に軽量性に優れた6000系(Al-Mg-Si系合金)と、強度に優れた7000系(Al-Zn-Mg-Cu系合金)の2種類だ。

パイプ内側から液体で圧力をかけて成形し、応力特性に応じて軽さと強さを両立した設計をしたフレームが多いのも特長で、熱処理によって特性も変わる。そのため素材から走行性能の方向性を探るのが難しい素材でもある。

一般にアルミフレームは剛性が高く、乗った感じが硬いと言われている。あながち間違いとは言えないが、アルミフレームの問題は弾性率が低く、振動の収まりが悪いため乗り心地が悪いことだ。同条件であれば、アルミはしなやかと言われるクロモリよりも、さらに軟らい素材である。その弱点を改善するために熱処理や変形加工など工夫されているのだ。

アルミフレームの課題を解決したいなら、ワイドタイヤで快適性を向上させるのが近道。28C以上のタイヤが装着できるか確認しよう。また、アルミフレームは金属疲労で溶接部にヒビが入るので、ダウンチューブの裏側や左側チェーンステーの溶接部をチェックしておこう。

カーボン
軽さと強さ、そしてしなやかさを兼ね備えるカーボンは、レーシングバイクに最適な素材だ。上質なカーボン繊維を使って、最適な加工が施されたフレームは軽量性、振動減衰性、重量剛性比など理想の素材と言える。

だが、製作する工程が複雑な分だけ、スペックだけで性能を判断できない。素材で性能を語ろうとしたり、理解しようとしないこと。中古車でカーボンフレームを買うときは、落車歴があるバイクは避けるのが安全だ。

カーボンは引っ張る方向の引張強度は高いが、圧縮方向の座屈には滅法弱い。したがって落車など、計算外の力が座屈方向に加わると壊れやすい。外見は大丈夫そうに見えても、内部で層間剥離が起きて性能が著しく低下している可能性もある。

怪しい傷があるときはやめておくのが無難である。また、10年以上前のアルミラグと接着していたフレームは、接着部に問題(表層剥離)を抱えている可能性があるのでコレクターズアイテムと割り切ろう。

■フォークコラムの長さをチェック

コンディションのいい人気モデルは、当然ながら、すぐに売れてしまう。狙っているモデルが見つかったら、すぐにでも買いたくなるだろうが、フレームサイズとステアリングコラムの長さをチェックしよう。

特にレーシングモデルはハンドルを低くするため、コラムを短くカットしていることも多い。別途、フロントフォークだけを購入できることもあるが、新品だと費用は驚くほど高価で現実的ではない。購入後にハンドル高でトラブらないように注意すること。

  • ステアリングコラムの長さはスペーサーの量から判断する。

■落車歴のバイクは避けるのが鉄則

続いては、事故車の見抜き方。専門業者がネットで販売しているバイクであれば、店員のお眼鏡にかなったバイクなので、大きなトラブルを抱えていることは極めて稀である。とはいえ、ちょっと知識のある人であばパーツを交換できるため、スポーツバイクの試用歴を正確に見抜くのは不可能だ。

だが、前オーナーがどのように自転車と関わってきたかのヒントは、細部に目をやるとヒントが現れる。

簡単なチェックポイントはブレーキレバーの先端、リアメカ、サドルの大きな擦り傷がヒントになる。大きな落車だとパーツを交換せざるを得ないので、1つ2つは交換してあることもあるが、3カ所すべてを交換していることは珍しいので、大きな傷があるバイクは避けよう。

  • ブラケットカバーは交換されているが、樹脂部分の擦り傷から落車したのが分かる。

フレーム関連のトラブルを写真だけで見抜くのは不可能だ。実際に見る機会があったとしても、初中級者が見抜くのは難しい。ここは売り主を信じるしかない。
レアモノやビンテージバイクは売り主が業者ではないことも多いし、掘り出し物もある。経験を積みながら、お宝探しも楽しいがリスクがあることは自覚しておこう。

■消耗品の寿命

中古である限り、どんなにキレイに見えてもメンテナンスしてから乗るのが基本。ハンドルの位置(高さ&距離)が決まったら、インナーケーブル&アウターライナーは交換しよう。

まだ新しいし…と思うかもしれないが、適正な長さに調整することでブレーキや変速タッチがよくなる。同様にディスクブレーキの場合はブレーキのオイルを交換する。また、ブレーキパッドも念のために新品に替えておきたい。

主なパーツの交換目安
●バーテープ/半年~1年に1度
●チェーン/3000~5000㎞。伸び率が0.75%を越えたら要交換
●タイヤ/3000~5000㎞。
●スプロケット&チェーンリング/チェーン交換2回ごとに。
●ブレーキパッド(リム)/3000~5000㎞。もしくは1年。
●ブレーキパッド(ディスク)/パッドの厚さが0.5㎜以下になったら。
●ディスクローター/ブレーキパッド交換2回ごとに。

上記の数値はあくまでも目安。ライダーの体重や走るコース、求めるパフォーマンスによって、さらに距離が短くなることもある。また、メンテナンス状態が悪ければ、もっと寿命は短くなる。

文・写真/菊地武洋