「仕入れが命」と言われる買取業。特に、店舗買取では、店舗に足を運ぶ顧客への接客態度が、その仕入れの成否に影響を与えることが少なくありません。そのため、買取ビジネスを成功させるためには、買取業における接客のポイントを知っておく必要があるのです。
そこでこの記事では、買取業での接客の重要ポイントを詳しくまとめました。査定、買い取りなど特殊な業務が必要な買取業だからこそ、その接客術を良く理解し身に付けておきましょう。
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■買取業における全体的な接客のポイント
店舗で買い取りを行う店舗買取では、顧客が来店したら受付をし、持ち込まれた商品の検品・査定を行います。査定が終了し、提示した査定額に顧客が納得すれば、商品を買い取り代金を現金で支払います。
こうした買い取りの流れの中で、意識したい接客ポイントはいくつもありますが、まずは、顧客の来店から退店までの全体を通して重要になる点について見てみましょう。
<身だしなみを整え、言葉遣いに気を付ける>
これは買取業に限りませんが、接客を行う大前提として、身だしなみを整えることは非常に重要です。「メラビアンの法則」では、コミュニケーションにおける影響の大きさは、言語情報が7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%のウェイトを占めると言われています。
つまり、顧客と買取交渉というコミュニケーションを進めるうえで、身だしなみを整えることは欠かせない要素なのです。制服がある場合は適切に着用し、髪の毛やひげ、眉毛なども整えておきましょう。
また、相手を不快にさせない言葉遣いも大切です。相手の年齢に関わらず敬語を使うことはもちろんのこと、買い取りのため訪れてくれた顧客への敬意が伝わる話し方で接客しましょう。
<低姿勢な接客態度を心がける>
買取業では、常に低姿勢な態度で顧客に接することも重要なポイントの1つです。買取業務の場合、顧客が買い取りを希望して来店し、買い取りが成立すると店側が代金を支払うという仕組みから、商品を販売する時と比べて店側の接客が丁寧でないケースも一部で見られます。
また、中には無理な金額での買い取りを要求してくる顧客もいるため、あえて「うちではこの金額でないと買い取りません」という強気な態度で接客する店舗もあります。
しかし、顧客の無理な要求に応える必要はないものの、強気な態度で接客していると、リピーターがつかなかったり店の評判を落としたりして、結果的に経営がうまくいかなくなる恐れがあるでしょう。買取店は多くありますので、接客態度が悪いという評判が流れれば、顧客が近隣の競合他社へ流れていってしまうことは充分に考えられます。
反対に、来店してくれた顧客に対して「買い取らせていただく」という低姿勢でいると、顧客に良い印象が与えられます。それが次回の来店や良い口コミにつながっていきますので、常に低姿勢での接客を心がけるようにしましょう。
<笑顔で接客する>
どのような接客でも笑顔は大切ですが、買取業においても笑顔は欠かせないポイントです。相手に良い印象を与える、または気分良くさせるためという意味合いもありますが、買取業では特に「相手に安心してもらう」ために笑顔は重要です。
顧客によっては、買い取りが初めてというケースもあるでしょうし、買取店は小さい店舗も多いため、狭い空間で店員と対面し交渉することに不安を感じる人もいるかもしれません。笑顔で接客することで顧客の不安が和らげば、安心して商品を売却してもらえ、スムーズな買い取りにもつながるでしょう。
ただし、買取交渉は真面目なシーンでもあるため、笑顔を心がけつつ真剣な態度を崩さないことも忘れてはいけません。
<顧客の話をよく聞く>
顧客の不安を和らげるためには、笑顔で接客するだけでなく、顧客の話をよく聞くようにしましょう。店員が一方的に話をたたみかけるだけでは、顧客の不安は大きくなり、店に対しての信頼感まで失ってしまう恐れさえあります。
また、手放すことを決めた品物も、元々は顧客が大切に愛用していたものかもしれません。「大切な品物を買い取らせていただく」という気持ちで、相手の話を最後まで傾聴する姿勢を持ちましょう。
■査定や検品、査定額提示における接客ポイントとは
ここまで、買取業の接客において全体を通して重要な点を解説してきました。ここからは、査定や検品、査定額提示で重要なポイントを、それぞれご紹介します。
査定や検品で重要な接客のポイント
<長く待たされたと感じさせない工夫をする>
買取店では、商品の適切な査定を行うため、査定器具を用いて査定したり、店舗によってはテレビ電話で査定を行ったりする場合があります。その際、顧客から離れてバックヤードで査定しますが、商品の査定結果が出るまでに時間がかかってしまうケースもあります。
査定に時間がかかると、店員が目の前にいないこともあり、顧客は「一人で長く待たされている」「ほったらかしにされている」と感じてしまうものです。それが店舗への不満になるだけでなく、査定結果への不満につながることも考えられますので、査定の間に顧客が「長く待たされた」と感じないよう工夫をしておきましょう。
たとえば、お茶やコーヒー、お菓子を提供する、店内にテレビを設置する、雑誌を置いておくなどです。
また、事前に査定時間の目安を伝えておくのも効果的でしょう。もしくは呼び出し番号を発行すれば、査定が終わるまでの時間を有効に使ってもらうことができます。
商品のジャンルや品数によっては査定時間が長くなってしまうことがありますが、それが顧客の不満につながらないよう、対策を立てておきましょう。
<身分証明書は査定よりも先に確認する>
古物商や道具商、美術商を営む店舗が第三者の私物を買い取る場合、顧客の身分証明書の確認と、その内容を店側が控える対応が義務付けられています。また、その旨を顧客に同意してもらう必要もあります。
顧客によっては、来店時に身分証明書を持っていない場合もありますので、査定の前にまず身分証明書の確認が必要なことを伝えましょう。
顧客の来店後、いきなり商品を預かって査定を始めてしまうと、あとから「身分証明書がなかった」と気づいた時に買い取りができず、顧客と店側の双方に時間のロスが生じてしまいます。このような事態にならないよう、身分証明書の確認は先に行っておくのがベストでしょう。
<顧客立ち合いのもと査定や検品を行う>
店舗の構造や査定方法にもよりますが、可能なら顧客の目の前で商品の査定や検品を行うのが望ましいでしょう。また、衣類のポケット、バッグの中に私物が残っていないか事前に口頭で確認することも必要です。
特に、デジタルカメラなど精密機器の動作確認を行う場合、顧客のいないバックヤードで不具合を発見してしまうと、顧客とのトラブルに発展する恐れがあります。そうした事態を防ぐため、できる限り顧客立ち合いのもと査定・検品を行いましょう。
査定額提示で重要な接客のポイント
<査定額に不満を持たせない>
顧客が希望する買取金額と、店舗が提示する査定額には、ほとんどのケースで差があるものです。購入当時は高価な品物でも、買取店に持ち込む頃には、トレンドの変化や経年劣化などの理由でほとんど値段がつけられなくなっていることも珍しくありません。
しかし、それを「この商品は今は需要がなく、値段がつけられません」など直接的な言葉で伝えてしまうと、顧客が不満を抱く一因となってしまいます。
そこで、たとえ値段がつけられない商品でも「大切に使われていたんですね」などの一言を添えて顧客を気遣いましょう。こうした一言があることで顧客の捉え方が変わり、査定額がつかなくても不満を防ぐことが期待できます。
また、顧客の希望する買取金額より査定額が低い場合でも、「本来は○○円でしかお買取りできませんが、今回は○○円で買い取らせていただくのはいかがでしょうか」といった言い方をすると、納得してくれる顧客も多いです。
<強引に買い取られたと思わせない>
顧客には「このくらいの金額で買い取ってほしい」という希望額がありますが、実際の査定額が予想よりあまりに低いと、売らずに手元に置いておこうとする人も多いものです。顧客が明らかに査定額に不満を持っているのにも関わらず、店が強引に買い取ろうとすると、顧客には強い不満が残ってしまいます。
売却するまで、品物はあくまで顧客の持ち物です。それをふまえ、顧客の意思を尊重し、「強引に買い取られた」と思われるような接客は避けるようにしましょう。
また、自分の店舗で積極的に買取・販売していない商品が持ち込まれた場合は、それとなく他店での売却をアドバイスすると、店への信頼感がアップし次回の来店につながる可能性があります。
<買取金額の内訳の書面を提示する>
査定が終了し買取金額を提示する際は、買取金額の内訳を書面で提示しましょう。口頭で合計金額を伝えるだけですと、後からトラブルを引き起こしてしまうリスクがあります。
買取金額に納得してしまうためにも、書面で各品目とそれぞれの査定額、そして最終合計査定額を明記しておきましょう。
また、書面の提示とともに、「この商品はこのような理由で、相場よりも買取金額が低くなっています」など口頭での説明も加えると、丁寧な印象を与えリピーターの獲得につながります。
■買取ビジネスの成功に接客術は欠かせない
買取業は「安く仕入れて高く売る」ことで成り立つビジネスですが、その成功には、商品の買い取りを希望する顧客への丁寧で誠実な接客態度が欠かせません。買取ビジネスは不況に強く、安定的な経営が目指せる業種ですが、その分参入者が多く、悪い評判が立てば近くのライバル店に顧客を奪われてしまうリスクもあるからです。
買取業を営むなら、商品を持ち込んでくれた顧客への感謝を常に忘れず、気持ちよく商品を手放してもらえるような接客を心がけましょう。