ヒューリック杯第95期棋聖戦(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)は二次予選が進行中。11月27日(月)には第8ブロックの松尾歩八段-飯島栄治八段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、横歩取りの力戦を103手で制した松尾八段が決勝トーナメント進出まであと1勝としました。

飯島八段の工夫

飯島八段は及川拓馬七段に勝っての2回戦進出、松尾八段は本局からの登場です。振り駒が行われた本局は後手となった飯島八段の注文で横歩取り調の出だしへ。定跡形に進むかと思われた局面で、飛車先の歩交換を保留して玉を上がったのが飯島八段の用意でした。

飯島八段の工夫は続きます。20手目に突いた1筋の端歩突きは何気ない一着ながら、実戦のように桂頭を攻められた際に角による王手を緩和している意味合いがありました。盤上は二枚角を手にした先手の松尾八段がうまく攻めをつなげるかが焦点になっています。

松尾八段リードも...

攻防の自陣角を立て続けに打った松尾八段は、今度は盤上と駒台にあった2枚の桂をうまく使って後手の玉頭に照準を合わせます。この「角角桂桂」のコンビネーションが機能して形勢は松尾八段に傾きますが、終盤の入り口に事件が待っていました。

気分よく攻め続ける松尾八段ですが、落ちている桂を取るのに金を使った手を後悔することに。ここは代えて角成りで取るのが正しかったという結論で、本譜は飯島八段の受けの好手がありにわかに形勢は逆転の様相を呈します。

詰めろ逃れの詰めろで決着

持ち時間が切迫する状況で盤上は最終盤へ。飛車での王手を受けた飯島八段がサッと玉を引いた手が敗着となりました。これに対しては先手から金を取りながらの角成りが詰めろ逃れの詰めろ。松尾八段としては手順に自玉の逃げ道を確保できたのが奏功しました。

終局時刻は17時23分、王手の連続で迫る飯島八段が詰みなしと認めたことで松尾八段の勝利が決まりました。勝った松尾八段は次戦で決勝トーナメント入りを懸けて糸谷哲郎八段―山崎隆之八段戦の勝者と対戦します。

  • 松尾八段は直近10戦で7勝3敗と好調をキープ(未放映のテレビ対局除く)

    松尾八段は直近10戦で7勝3敗と好調をキープ(未放映のテレビ対局除く)

水留 啓(将棋情報局)

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