例年と比較して3分の1程度に減少

2021年と2022年の2年連続でマツタケの生産量が全国1位だった長野県。2023年の10月23日、県内の山間部でマツタケを採取・販売する「ナトリックス@山で生きる(@yamaotoko173)」さんは、今年のマツタケの収穫状況について、Xに次のように投稿しました。

松茸農家の裏側。やっぱり収穫や出荷は楽しい。これがあるから真夏の地獄のような芝かき作業も頑張れるんだよね。手前がお得意様用の特上〜上物。引くくらい高値でも購入してくれるから感謝。頑張りを認められてるみたいで嬉しい。不作だったけどあとちょいで松茸山代金が回収できそうだ。

— ナトリックス@山で生きる (@yamaotoko173)

人工栽培ができず、その生育が気候に大きく左右されるマツタケ。一般的に夏の低温や多雨がマツタケの発生を促すといわれています。今年の長野県は例年を上回る暑さに見舞われ、降水量が少なかったため、不作につながったのではないかという声があがっています。

取材に応じてくれたナトリックスさんは、マツタケが生育しやすいように山の芝刈りや日当たりの調整に取り組んでいますが、2023年の収穫量は「例年の3分の1程度」とのこと。「長野県内でも私の山やその周囲はなんとかマツタケ山代金は取り返せましたが、少し離れた地域は全く取れなかったようです」と、長野県内のマツタケ農家の実態について話しています。

マツタケの収穫量は、価格にも影響を与えます。ナトリックスさんは、2023年のマツタケの販売価格について「収穫量が減ると単価が上がる。今年は例年の1.5倍ほどの価格で販売できている」と答えました。

岩手県では豊作。丹波篠山産は3本で93万円!

長野県のマツタケが不作だった一方で、「北海道や岩手県は豊作と聞いている」(ナトリックスさん)とも。

岩手県では猛暑の影響で例年より収穫の時期が遅れ、9月半ばから店頭で販売が始まりました。2023年9月の東京都中央卸売市場でのマツタケ取扱数量は、昨年よりも約6000kg多い2万2727kg(輸入物含む)。平均価格は昨年の2分の1ほどになっています。

国産マツタケの価格は収穫量だけでなく、状態や産地によっても変わります。ブランド産地である丹波篠山(たんばささやま)では、地元の旅館「丹波篠山 近又(きんまた)」が最高級のマツタケを3本(198グラム)93万円で落札したことが話題に。なお、昨年は同じ旅館が過去最高の大きさといわれる1本(17センチ、120グラム)を95万円で落札しています。

近又が落札したマツタケ(近又の運営会社であるより引用)

近年では気候変動に加え、マツタケが育つ森林が少なくなったり、管理が行き届かなくなったりしていることから収穫量が減少し、マツタケの希少価値は上がっています。農家や消費者にとって素直に喜べない状況が続く一方で、「希少で高価だからこそ憧れる」一面も。現在のところマツタケの価格が下がる要因はなく、庶民の高根の花であり続けることだけは確かなようです。