さび病とは? 症状や発生時期など

さび病は、糸状菌によって引き起こされ、植物の葉や茎に斑点が現れる病気です。この名前は、斑点が鉄のさびに似ていることから来ています。
さび病は複数の種類があり、同じ植物に感染する同種寄生菌と、異なる植物に感染する異種寄生菌が存在します。感染が進行すると、植物の成長が阻害され、収穫量や品質に影響を与え、大きな被害をもたらすことも。

では、実際にどのような症状・特徴があるのか詳しく解説していきます。

さび病の主な症状

さび病の症状では、初期には褐色で楕円(だえん)形の斑点が葉や茎に現れます。これらの斑点は次第に大きくなり、植物の表皮が破れて胞子が拡散し、他の部分や他の植物に感染を広げます。
病状が重症化すると、葉全体が粉(胞子)で覆われ、植物の成長と収穫を著しく阻害し、最終的には枯死します。

発生時期は春・秋

さび病の原因である糸状菌は、9℃〜18℃の気温で発生し、24℃以上で繁殖がとまります。したがって、4〜5月および9〜10月の春と秋に発生が多くなります。さらに、過湿条件や肥料の過剰などの要因も、さび病の発生と進行に影響します。

人体への影響はない

さび病は植物の病気であり、人体に感染することはありません。
発生初期の葉や実の部分は、食べても一般的には問題ありません。ですが、さび病が進行すると、一部の植物では「ファイトアレキシン」という有害物質を生成することがあります。
さび病の症状が見られ、特に不安を感じる場合は食べるのを避けた方が良いでしょう。

さび病を発症する原因とは?

さび病はさまざまな理由で発症します。
ここでは原因菌と、その特徴について解説していきます。

原因は「糸状菌」

さび病はPuccinia属の糸状菌による植物病で、多くの種類が存在します。さび病には同種寄生菌と異種寄生菌があり、種類によって感染する作物が決まっています。
春や秋の湿った環境で発生しやすく、胞子が葉や茎に現れ、破れて他植物へ拡散します。
ちなみに、名前の似ている白さび病は、さび病とは異なる病気です。

病原菌は越夏・越冬する

さび病の病原菌は、被害を受けた葉や茎、こぼれ落ちた麦などに付着し、越夏・越冬します。夏の低気温や、初発生時期が早いと発生量が増え、特に10月の平均気温が高い場合、11~12月でも発生が見られます。また、栄養が不足して衰弱した植物は発病しやすくなります。そのため、適切な栽培管理がさび病の予防につながります。

さび病の種類とそれぞれの特徴

さび病と呼ばれるものには、赤さび病・黒さび病・白さび病・小さび病の4種類があります。それぞれ、どのような症状があるのか解説していきます。

赤さび病

赤さび病は、小麦に発生する病気です。葉や茎に赤褐色の胞子の塊が現れるのが特徴で、この病気が発生すると、20~30%も収穫量が減ってしまうおそれがあります。胞子が拡散し、他の小麦へ感染を広げていくので、農業の現場では予防や早期発見がとても重要です。

黒さび病

黒さび病は、植物に褐色の小斑を生じさせ、その表面が壊れると黒褐色の粉(夏胞子)を形成し、この夏胞子が他の作物に感染を広げます。秋になると冬胞子の塊を生成し、これが越冬して翌年も感染源となります。

白さび病

白さび病は、葉、茎、がく、花弁等に発生します。発病初期には葉の裏面に白から淡褐色の小斑点が現れ、これらの斑点は徐々に盛り上がり、最終的に直径3mm〜5mm程度のまるいいぼ状の病斑となります。

小さび病

小さび病は、大麦特有の病気であり、赤さび病に似た見た目をしていますが、胞子がやや小さいのが特徴です。この病気は、越夏または越冬した胞子が新しい作物に感染し、発症を引き起こします。土壌中の窒素成分が多く、暖冬多雨で春分の日の草丈が平年より高い年に多発するといわれています。

さび病を発症しやすい野菜や植物の例

さび病が発生しやすい野菜や植物にはどのようなものがあるのでしょうか。
特にさび病が出やすい作物について、それぞれ解説していきます。

ネギ属の野菜

ネギさび病はネギやタマネギ、ニンニクなどネギ属の野菜に影響し、特に6~7月と10月、また春期・秋期の低温多雨時に多発します。肥料不足も発病の原因の一つです。

前年秋に発病数が多かったり、冬の気温が高かったりすると、春の早期発症と多発につながります。17℃~23℃まで気温が上がってくると、胞子飛散量が増し、病気が更に広がってしまいます。

アブラナ科の野菜

アブラナ科野菜(ハクサイ、ダイコン、コマツナ等)の白さび病は3〜5月、10〜11月、特に雨の多い時期に多発し、土壌中の胞子が雨でまき上げられて、葉から感染します。葉表には小斑が現れ、胞子が白いパッチを形成するのが特徴です。

卵胞子が越冬し、0℃~25℃で分生子が発芽。感染からの潜伏期間は5~7日ほどです。とくに栄養過多な畑で蔓延(まんえん)しやすいといわれています。

花・植物類

バラ、アジサイ、キク、ユリ、コーヒー等、幅広い種類の草花や樹木に感染します。異種寄生菌も多く、「アジサイ×スズタケ」や「ベゴニア×コアカソ」などの種類の異なる植物同士の組み合わせで寄生、繁殖します。

これらの菌は二つの植物間で交互に寄生し繁殖するため、感染リスクを抑えるには、異なる植物を近くで栽培しないようにすると良いでしょう。

さび病に有効な農薬

さび病の防除には、農薬の散布が最も有効です。
さび病に有効な農薬の中でも、入手しやすいものを紹介します。

カリグリーン

カリグリーンはトマト類や野菜類など、幅広く使える有機農薬です。
炭酸水素カリウムを主成分とした家庭園芸用薬剤で、環境と人に優しく、発病後の治療効果に秀でています。農薬効果のほか、カリ肥料として植物の抵抗性を高めてくれる効果もあります。

ミツバチやクモなど有益な昆虫には無害で、野菜は散布翌日に収穫可能です。さらに、有機JAS規格にも準拠しています。

サンケイエムダイファー水和剤

サンケイエムダイファー水和剤は、バラやキク、カーネーションなどのさび病防除に使える薬剤。殺菌成分が高く、予防剤として使いやすい薬剤です。

アミスター20フロアブル

アミスター20フロアブルは、小麦の赤さび病や、ダイコン・カブの白さび病、ニンニク・ネギ・ラッキョウのさび病など、さまざまな作物のさび病対策に使える薬剤です。
シメジの仲間に由来する成分をもとにした殺菌剤で、雨に強く浸透移行性に優れています。

STサプロール乳剤

STサプロール乳剤は、野菜や果物、花などのさまざまな作物において、カビやバクテリアによる病害を防ぐ広域殺菌剤です。
さび病では、ネギやシソ、キクに使用できます。
使いやすい乳剤型で、雨にも強い特徴があり、早い段階での予防効果が期待できます。

STダコニール1000

STダコニール剤は、さび病の他、広範囲の病気(もち病、炭そ病、斑点病など)に効果を発揮する園芸用総合殺菌剤で、耐光性・耐雨性に優れ、残効性があります。抵抗性がつきにくく、計量しやすいフロアブルタイプで、散布後の葉汚れも少ないのが特徴です。

農薬以外に効果的なさび病の対処法

さび病の予防には、農薬を散布する以外にも、重曹や焼酎を使って防除を行うことができます。それぞれ、詳しく解説していきます。

重曹スプレー

家庭で簡単に自作できるものに、重曹スプレーがあります。重曹を水で溶き、作物に散布するだけなので手軽ですし、人体へも安全です。
農林水産省によると、重曹を濃度0.1%に薄めて使うと良いとのこと。ただし、濃度が高すぎると薬害が発生してしまうので注意しましょう。また、ニガウリの一部は重曹と相性が悪く、薬害の恐れがあるため使用は控えたほうが良いでしょう。

ストチュウスプレー

ストチュウスプレーは、酢、焼酎、木酢液をそれぞれ同じ割合で混ぜ合わせた自家製の植物忌避剤で、病害虫の予防・治療に用いられます。

基本的には原液を水で約150倍に薄め、対象の作物(ネギやニラなど)に散布します。さび病などの予防や治療に効果的で、病気発症後は2〜3日に1度、予防の場合は週に1回の使用がおすすめです。

使用するときは全体に散布するのではなく、スポット的に、かつ作物の状態を見ながら適量を心がけましょう。なお、さび病に限らず病気の予防や防除には、早めの対策・対応が重要です。普段から作物の様子をよく観察するようにしましょう。

健康な株を育てる

さび病を予防する上では、健康な株を育てることが重要・健康で強い株を育てるために、いくつかのポイントに注意しましょう。

適切な量の施肥を心がけましょう。肥料は多すぎても少なすぎても良くありません。
水やりはやり過ぎないように気をつけ、植物の根が腐らないようにしましょう。
日当たりと風通しを保って、植物が育ちやすい環境を作りましょう。
連作を避けることも大切です。同じ場所で同じ作物を続けて植えず、場所をずらしたり、作物を変えたりしましょう。場所が狭く、調整が難しい場合は接ぎ木の苗を使っても良いでしょう。

さび病は早めの対処が大切

さび病は、春と秋の、気温が低く湿度の高い時期に発生しやすい病気です。とくに暑い夏や寒い冬を乗り越えた後は、植物の元気もなくなり、病気への抵抗力も落ちている頃合いです。少しでも株が元気を取り戻せるように、日頃からしっかり栽培管理を行って、さび病にかかりにくい環境を作ってあげることが大切です。

予防として殺菌剤や重曹スプレーなどを散布することも大切です。日々の観察を欠かさずに、少しでもおかしいと感じたら、早め早めの対処を心がけましょう。