国内輸送の約4割を担う内航海運において、”船員不足の解決”は喫緊の課題となっている。そこで日本内航海運組合総連合会(以下、内航総連)は10月24日、6級海技士を目指す人に向けた奨学金制度の新設を発表した。それによれば、1人最大100万円の奨学金を利用できるという。

  • 内航総連が創設する最大100万円の奨学金とは?本稿では簡単な説明を交えながら紹介していく

■奨学金の対象者は?

新設された奨学金の対象者となるのは、内航船員になるために『6級海技士第一種短期養成講習課程』に入学する、学業および人物が優秀である者。なお家計の状況からみて、奨学金の貸与が必要と認められる者に限られる。内航総連では年間50名を想定する。

そもそも6級海技士の短期養成講習とは、船員未経験者を対象とし、座学2.5カ月、乗船実習2カ月で実施されるものだ。ここ最近では毎年講習修了者の実に100名前後が内航船員として就職している。この実施機関は、尾道海技学院、および日本海洋資格センターにある。

貸与金額は、入学準備金(学費相当)を25万円または50万円から選択し、学資金(宿泊費、食費、旅費相当)も25万円または50万円から選択する。つまり1人最大で100万円が貸与される。選考方法については「内航総連における選考委員会において決定し、海技教育財団の了承を得るもの」としている。

ちなみに尾道海技学院、および日本海洋資格センターはどちらも西日本を拠点とした機関。したがって関東など、それ以外の地域に住んでいる人にとって、受講の際にかかる宿泊費や旅費がネックになっていた。そこで新設された奨学金には、宿泊費、旅費などが考慮されている。

奨学生は、貸与を受けた奨学金を『6級海技士第一種養成講習』を修了した月の翌月から6月を経過した月から貸与額の全額を月賦(毎月)、半年賦(年2回)、年賦の別で海技教育財団に返還する必要がある。奨学金の返還額は月額2万円となっている。

この新たな奨学金制度は、内航総連、海洋共育センター、海技教育財団が連携して創設したもの。内航総連が創設・運営に関わる経費を拠出する。海技教育財団は、海洋共育センター(窓口となる)を通じて6級短期養成機関、および奨学金の対象者に入学準備金および学資金を支払う。

今後のスケジュールとして、2024年(令和6年)1月上旬には入学願書の受付を開始。4月上旬に奨学生を決定するとともに、奨学金の貸与を開始する見込みとなっている。

内航総連の栗林宏吉会長は「6級海技士の短期養成講習は、平成21年度に創設されて以来、貴重な人材の供給源として重要な役割を果たしてきました。内航総連としては、奨学金が有効に活用されていくように取り組んでいきます。講習の受講者の増加を、切に期待しております」と挨拶。

  • 日本内航海運組合総連合会 会長の栗林宏吉氏

また、海洋共育センターの畝河内毅理事長は「コロナ禍の影響もあり、ここ数年はどうしても100名以上の卒業生を送り出すことができずにおりました。しかしこの度の奨学金制度により、船員を志す人が受講しやすくなりました。これを契機にして、今後5年間で卒業生を年間200名ほどまで増加させていきたいと考えております」と説明。

  • 海洋共育センター 理事長の畝河内毅氏

そして海技教育財団の野間清二理事長は「内航総連様からお話をいただきました。私たちには、これまで様々な奨学金制度を運用してきたノウハウがあります。今回の新しい奨学金制度については、船員確保につながる重要なツールと考えています。その趣旨に大いに賛同しましたので、お引き受けしました。微力ながら現場における即戦力の確保に貢献できれば、と考えています」とした。

  • 海技教育財団 理事長の野間清二氏