ビジネスシーンにおいて、メールでやりとりをする際や文書を読んでいる際、またプレゼンテーションの際などに「しかしながら」という言葉を見聞きする場面も多いでしょう。ですがこの言葉には大きく2つの意味があるということをご存じの方は少ないかもしれません。

本記事では「しかしながら」の詳しい意味や具体的な使い方と注意点を紹介。「しかし」との違いや漢字表記、類語、英語表現もまとめました。

  • しかしながらとは

    「しかしながら」の意味やビジネスシーンでの使い方、英語表現などを紹介します

「しかしながら」の意味とは? - 大きく2つの意味がある

まずは、「しかしながら」の基本的な意味について見ていきましょう。

「しかしながら」の接続詞としての意味

「しかしながら」は、接続詞として使われることが多いです。

この「しかしながら」は「しかし」の改まった言い方で、意味としては今まで述べた事柄に対し、それと反対の事柄を述べるときや、話題を変えるときに用いる逆説の言葉です。「でも」や「だけど」「だけれども」などと近い意味合いです。

「しかしながら」には、「そうではあるが」「それはそうとして」というような、前半の部分をいったん肯定した上で、後半の部分を付け加えるといったニュアンスがあるのが特徴です。

また、「しかしながら」は、「しかし」や「だけど」と比べて丁寧な印象があるので、書き言葉やフォーマルな場面に向いています。

「しかしながら」の副詞としての意味

「しかしながら」には、「そのまま全部」「要するに」などの、副詞としての意味もあります。本来はこちらの意味で使われていましたが、中世中期~末期以降は、前述の接続詞としての意味で使われることがほとんどとなりました。

現在ではほとんど使いませんが、まれに出てくることがあるので覚えておきましょう。

「しかしながら」の漢字表記は「然し乍ら」「併し乍ら」

「しかしながら」は、漢字で「然し乍ら」「併し乍ら」と書きます。

「然」という漢字には「当然」のように肯定を表す意味が、「併」には並ぶ、あわせて、といった意味があります。「乍」は2つの動作が並行して行われることや、2つの異なるものを結びつけるといった意味があります。

日本の古典文章などで漢字表記をよく見かけますが、現代ではほとんど使われていません。メールやビジネス文書などの文章では、ひらがなで「しかしながら」と書くのが一般的です。

「しかしながら」と「しかし」の違い

先ほども触れましたが、「しかしながら」と似た言葉に「しかし」があります。「しかし」は「しかしながら」の略とも言われており、意味はほぼ同じと言っていいでしょう。

ただし「しかしながら」は主に書き言葉として使われ硬い印象があり、一方「しかし」は主に話し言葉で使われ、砕けた印象があります。また「しかし」には副詞としての意味はありません。

「しかしながら」のビジネスシーンでの使い方と例文

  • 「しかしながら」の正しい使い方と例文

「しかしながら」は具体的に、どのように使うべきなのでしょうか。「しかしながら」の正しい使い方をご紹介します。

「しかしながら」の例文

「しかしながら」を使用した例文を基に、使い方のイメージを広げましょう。

  • 健康維持のためには毎日の運動が重要です。しかしながら、それを継続するのは難しいものです。
  • 売り上げは右肩上がりになっています。しかしながら、コストがかさみ、利益率が下がっているのが現状です。
  • あなたには優れたコミュニケーション能力があります。しかしながら、現在の業務にそれを生かし切れていないように見えます。
  • あなたの意見は正しい。しかしながら、実現するのは難しい。

下記で、使い方のポイントも押さえておきましょう。

「しかしながら」は強調、強めの反論をする場合に使う

「しかしながら」は、後半の言葉を強調するとき、また相手の言葉を受け入れつつも、自分の言葉を強調したい場合に使います。硬い印象があり、「しかし」などと比べて強めに感じる人も多いようです。

堂々と反論するニュアンスもあるため、使う相手や前後の言葉選びには慎重になる必要があります。

「しかしながら」は何度も使う言葉ではない

「しかしながら」は、一度のやり取りで何度も使う言葉ではありません。自分にとって大切なことを強調したいとき、相手の意見にどうしても反論しなければならないときにのみ使いましょう。

何度も使うと、相手に違和感を与えたり、意味合いが薄まったりしてしまうでしょう。

「しかしながら」を目上の人に使う際は、敬語やクッション言葉と併せて印象を和らげる

「しかしながら」は強い言葉であるため、相手の意見への反論に使う場合は、前後の言葉でフォローするように心掛けましょう。特に目上の人に使うときは注意が必要です。

例えば「失礼を承知で申し上げます。しかしながら…」「おっしゃる通りではありますが、しかしながら…」といった具合です。

「しかしながら」の言い換えに使える類語

  • 「しかしながら」の類義語

「しかしながら」と似た意味の言葉も確認しておきましょう。

けれども

「けれども」は、前後で内容が相反する内容を結びつける接続詞です。日常生活やビジネスシーンなど使う場面も多いでしょう。

例えば「君の言うことは素晴らしい。けれども行動が伴っていない」といった使い方をします。

ですが

「ですが」は「だが」を丁寧にした言い方で、前文を受け止めた上で、反対のことを述べるときの接続詞として使われます。

例えば「今は混んでいます。ですが、もう少しで席が空くかと思います」などと使います。

にもかかわらず

「にもかかわらず」も、前文と相反することを述べるときに使います。

「待ち合わせ時間を1時間も過ぎたのにもかかわらず、友人はまだ来ていない」「今日は疲れがたまっていた。にもかかわらず、休憩なしで頑張った」というように使います。

さながら

「しかしながら」の副詞としての意味の類語としては、「さながら」が挙げられます。そっくり、そのまま、全部、といった意味があります。

「しかしながら」の英語表記

  • 「しかしながら」の英語表記

「しかしながら」は、英語で「however」と訳すことができます。「けれども」「とはいえ」「どんなに~でも」などの意味があります。

例文は以下の通りです。

  • It's a very interesting book. However, too expensive for me.
    (とても興味深い本だ。しかしながら、私には高すぎる)

「however」は主にフォーマルな場で用いられますが、カジュアルな言い方としては「but」があります。

「しかしながら」を正しく使って丁寧なメールや文書を書こう

本記事では、「しかしながら」の意味や使い方について詳しくお伝えしました。

「しかしながら」は、日常でよく使う「しかし」とほとんど同義ですが、硬い印象があり、より強調したいことがあるときや、強めの反論をするときに使います。ビジネスシーンで文章を書くときや強い主張をしたいときは、今回紹介した「しかしながら」の使い方を参考にしてみてください。