サントリーの創業者、鳥井信治郎が山崎の地でウイスキーづくりを始めて今年で100周年。シングルモルトウイスキー「山崎」ブランドは、国内での人気に加えて世界のウイスキー好きからも熱い視線を注がれています。サントリーでは日本最古となる山崎蒸溜所の主要施設をリニューアルし、11月から新たに2つの見学ツアーを展開。蒸溜所の魅力をいっそう体感できるようにリニューアルした施設は、一体どのように進化したのでしょうか?

  • 日本最古となる山崎蒸溜所の主要施設をリニューアルし、11月から新たに2つの見学ツアーを展開する

    日本最古となる山崎蒸溜所の主要施設をリニューアルし、11月から新たに2つの見学ツアーを展開する

1923年に建設に着手した、日本初の本格的なモルトウイスキー蒸溜所

山崎蒸溜所へは京都駅から電車で15分の山崎駅から徒歩10分ほど。天王山の麓の豊かな自然に抱かれ、万葉の歌に詠まれるほどの名水の地としても知られています。鳥井信治郎は1923年に、桂川、宇治川、木津川が合流する地形はウイスキーの熟成に適した湿潤なこの地で、日本初の本格的なモルトウイスキー蒸溜所の建設に着手しました。

山崎蒸溜所ではさまざまな発酵樽や蒸溜釜、熟成樽を使い分けながら、多彩な原酒を生み出しており、1968年には敷地内に、品質研究・技術開発用の小型蒸溜施設「パイロットディスティラリー」も設立、品質向上に向けた新たな技術開発や、原酒づくりに力を入れてきました。1980年代に国内のウイスキー需要が勢いを失った時期にも、山崎蒸溜所では製造設備の改修や新設を重ね、その改修後に仕込んだ原酒たちが10年以上の樽熟成を経て、2003年に「山崎12年」が世界的な酒類コンペティション「ISC」で日本初の金賞を受賞。さらに今年は「山崎25年」が、ISCの全部門エントリー約2,300品の頂点となる「シュプリーム チャンピオン スピリット」を初受賞しています。

  • 小型蒸溜施設、パイロットディスティラリー

緑豊かな山崎の杜を通り抜け、非日常体験へ

今回のリニューアルでは、そんな山崎蒸溜所ならではの歴史と魅力をいっそう体感してもらいたいと、新たな施設展示や見学ツアーを展開。新たな装いとして、エントランスや敷地内に、周辺エリアの山林地に生育する草木などを植栽し、緑地化した杜(もり)を形成。過去に山崎蒸溜所で活躍したポットスチル(蒸溜釜)の銅素材を再利用した門も設置しました。

  • ポットスチルを再利用した門

  • ウイスキー館は、蒸溜所で唯一創業当時から残る建物

門をくぐり抜けて木立の中を歩いていくと、ウイスキー館が見えてきます。杜を抜けていくうちに、「ウイスキーづくりの現場に来たんだなあと、日常から非日常へと気持ちが切り替わる場になれば」と、山崎蒸溜所工場長の藤井敬久さん。山崎蒸溜所で唯一の創業当時から残るこの建物は、今でも当時の梁を見ることができるなど、山崎の歴史を感じられる場所となっています。

創業当時から残る唯一の建物「ウイスキー館」と新たなテイスティングラウンジ

ウイスキー館の展示は、鳥井信治郎を軸にした「ウイスキーづくりの物語」を感じられる内容に改修し、山崎蒸溜所での多彩な原酒のつくり分けと、長期熟成に耐えうる原酒のつくり込みについての展示も充実させました。

  • 多彩な原酒ボトルに囲まれるテイスティングラウンジ

  • 窓の外に広がる“杜”を眺めるローチェア

新たに設けられたテイスティングラウンジは、この蒸溜所でつくられた多彩な原酒ボトルに囲まれ、森を眺めながらテイスティングができる、非日常空間にリニューアル。実際に稼働していたポットスチルを再利用したバーカウンター、原酒ボトルに向き合うスタンドテーブル、窓の外に広がる“杜”を眺めるローチェアなど、山崎蒸溜所でしかできない特別なウイスキー体験ができる場に。ここでは、サントリーシングルモルトウイスキー「山崎」ブランドはもちろん、サントリーウイスキーの各ブランド、さらにこの場所でしか味わえない原酒も楽しめます。

  • 廃材になったウイスキーの瓶を使ったステンドグラスも

蒸溜所に来たからこそ味わえる、ウイスキーづくりの五感体験

さらに、蒸溜所に来たからこそ味わえる“五感体験”の強化として、11月から新たに2つの蒸溜所ツアーを開始。「サントリーシングルモルトウイスキー山崎」のウイスキーづくりの現場を五感で体験してもらうというもので、「山崎蒸溜所 ものづくりツアー」(80分3,000円)は製造工程の体験を強化し、「サントリーシングルモルトウイスキー山崎」、希少な「モルトウイスキー原酒」、「山崎ハイボール」がテイスティングできます。

  • 製造エリアの木桶発酵槽

  • 【写真】「仕込室の蒸し暑さや発酵室の冷たい空気、甘酸っぱい香り、蒸溜室のすさまじい熱気や貯蔵庫の静けさ、その中で響き渡る樽を叩くハンマーの音などを五感で感じて欲しい」と工場長

    熱気がすさまじい蒸溜室にはさまざまな蒸溜釜が並ぶ

  • 貯蔵庫では何千もの樽が熟成の時を待っている

いっぽう「山崎蒸溜所 ものづくりツアープレステージ」(120分10,000円)は、上記に加えてこれまで公開してこなかった製造エリアや実際のつくり手の作業の様子をつくり手が案内する、ウイスキー好きには垂涎のプレミアムなツアー。調度品やファニチャーにも山崎の歴史を感じる新ゲストルームで山崎の杜を窓から一望しながら「山崎12年」や希少な「モルトウイスキー原酒」などがテイスティングできる、特別なツアーとなっています。

  • 新ゲストルーム手前の廊下、一枚の絵のような大きな窓から杜を眺める

「仕込室の蒸し暑さや麦汁の甘い香り、発酵室のやや冷たい空気、フルーティーな香りに甘酸っぱい香り、蒸溜室の扉を開けると感じるすさまじい熱気や、貯蔵庫の静けさ、その静けさの中で響き渡る樽を叩くハンマーの音など、これまで以上にウイスキーづくりを五感で感じて頂きたいと考えています」(藤井さん)。

「町に溶け込んだこの蒸溜所を感じて欲しい」

  • 左からサントリー株式会社 チーフブレンダー 福與伸二さん、執行役員 ウイスキー事業部長 秋山信之さん、山崎蒸溜所 工場長 藤井敬久さん

五代目チーフブレンダーの福與伸二さんは、「京都駅から15分で来れて大阪からもそう遠くないにもかかわらず、ちょっと田舎の小さな町で、我々も長いことウイスキーを作らせていただいています。毎朝ここに来るときに、子供たちも歩いて学校へ行く、学校から帰ってくるのに出くわす、そんな地域に根差した蒸溜所です。そういう環境に今回は杜を作り、そこに入るとウイスキーの世界に没頭できる、そんな風に設計しました。一歩足を踏み入れてからは、よりウイスキーに直に触れられる体験をしていただきたいです」と、今回のリニューアルの魅力について語っていました。

  • 左に写っている道は、子供たちや近隣住民も通行する一般道

人気沸騰が予想されるツアーの申込は予約抽選式で、毎月の抽選受付期間にWEBからの応募となります。12月開催分までの抽選受付は終了しているため、1月開催分から抽選受付期間など詳細は公式サイトを確認のこと。ちなみに、製造工程見学なしで、山崎ウイスキー館内の展示やショップ、有料テイスティングラウンジを自由に見学できる「山崎ウイスキー館見学」もあり、こちらは無料で楽しめます。先着順でWEB予約が必要なので、詳細は公式サイトでご確認ください。

■information
サントリー 山崎蒸溜所
大阪府三島郡島本町山崎5-2-1