ヤマハ発動機が手掛けるe-Bike「YPJ」シリーズのファンイベント「YPJ Fan Meeting 2023〜Natural Holiday〜」が9月23日、静岡県富士宮市の富士山YMCAグローバル・エコ・ヴィレッジで開催された。 富士山の麓に広がる大自然を感じられるロケーションのもと、ヤマハの最新電動アシスト自転車の魅力を楽しめる同イベントの様子を取材した。
e-Bikeに特化したライディングレッスンと大試乗会を実施
富士宮の大自然を体験しながら、試乗などを通じてヤマハの電動アシスト自転車やe-Bikeの楽しさ、魅力を伝えることを目的に開催されている「YPJ Fan Meeting」。今年は100名以上のオーナー、200名以上の一般参加者の事前予約があり、東海地方だけでなく関東・関西などの遠方からも多くの人が訪れた。
富士宮での開催は昨年に引き続き今回で2回目。富士宮市が街づくりや観光の一環で「YPJ」の活用を進めていることなども背景となり、同地で開催されているという。
イベント当日は朝からあいにくの雨模様で肌寒さも感じられたが、お昼頃には天候も回復。目玉コンテンツのひとつである「YPJ」3モデルの大試乗は多くの人で賑わいを見せていた。
「YPJ-MT Pro」21台、「WABASH RT」10台、「YPJ-XC」5台の計36台を用意。やはりフラッグシップモデルである「YPJ-MT Pro」が一番人気とのことで、参加者たちは濡れた荒い芝の起伏に富む約700mのロングコースを走行し、その走破性の高さを体感したようだ。e-MTB自体の取扱や試乗ができる店舗自体が数としては限られていることもあってか、この機会に3種類全てを試乗するという人も少なくなかったという。
午前と午後の計2回が行われた「e-MTBライディングレッスン」も、本イベントの人気コンテンツのひとつだ。上級・中級・初級の3つのクラスに分かれ、ポジショニングや走行時の目線、ブレーキングのコツ、登りの姿勢や下りの姿勢やペダリングの考え方などをプロの講師が直接伝授。
オフロードでのe-Bikeに特化したライディングレッスンは珍しいらしく、「オトナの乗り物であるe-Bikeのポテンシャルを、1円たりとも無駄にせずに引き出す」ためのノウハウを伝えていた。
「電動アシストが旅を楽しむ余裕をつくってくれる」
富士宮観光協会の協力のもと、「YPJガイドツアー」も午前と午後の2回に分かれて開催された。富士山YMCA グローバル・エコ・ヴィレッジを起点に富士山の麓、朝霧高原エリアを走る約1時間のコースは2種類を用意。周辺の牧場などを巡る「らくのうコース」では、広大な草原の景色が広がるフォトスポットなどを巡ったという。
また、メインステージでは旅行家の藤原かんいち・ヒロコ夫妻のトークイベントも実施された。旅行家&イラストレーターとして活動するかんいちさんは、クラウドファンディングで『e-Bikeで30日間日本縦断』を成功させた後、新プロジェクトとしてe-Bikeによる日本一周に夫婦でチャレンジ中。この夏、94日間かけて東日本4600キロを夫婦で無事走破し、その様子をSNSなどで発進してきたという。
「まず三国峠を越えるのが最初の恐怖でした。「早く峠を越えたい」と思って、つい頑張ってしまうと呼吸が荒くなって心拍数も上がってしまうんですけど、「電動アシストのサポートをしっかり受けて、もっとゆっくりしたスピードのほうがラクだよ」と言われて。その感覚を掴んでからは登りが怖くなくなりました」(ヒロコさん)
スペアのバッテリーやパソコン、テント一式など、約30キロの荷物を積んで走ったというかんいちさんは、「だいたい走る日は70キロぐらい、一番距離を走った日だと120キロとか。雨の日は休んだり、合間に観光したり。e-Bikeの旅と普通の自転車の旅との大きな違いは旅を楽しむ余裕をつくってくれるところ」とのこと。今度は西日本編として来年3月頃から夫婦で沖縄などを巡る旅に出かけるという。
「来年の夏に西日本を走ろうと考えていたんですが、今年の夏が暑すぎたので。3月ぐらいから3ヶ月ほどかけて旅をしたいなと。まずは紀伊半島のほうへ向かって関西、四国、九州、沖縄と巡って、そこから日本海側を通って戻ってくるという時計回りのルートの予定です」(かんいちさん)
ヒロコさんは「旅から帰ってきたら情報とモノが溢れていて、それだけで疲れるんですが、旅をしている間は走ることに目いっぱい集中できる。あんなに贅沢な時間って普段なかなかないんだなと思いました」と、東日本を巡った旅を振り返っていた。
コンストラクターの出展ブースも充実
また、自転車とキャンプをテーマにした「旅フェスティバル」を主催する「BIKE&CAMP」の野地教弥氏は、キャンプツーリングの魅力やバイクパッキングの楽しさなどをステージで語った。
「自転車の良さって移動自体が楽しいというところにあると思っています。今までキャンプツーリングってなかなか大変で敷居が高かったんですけど、いろんなことに躊躇がなくなる点がe-Bikeの革命的なところですね。たくさんの荷物を積むことに対してもそうですし、自転車って乗っているとスピードを落としたくないという欲求が基本ありますが、急停止や発進がラクなe-Bikeだと立ち止まることへの躊躇も一切なくなる。また、自転車の熟練度の差をバッテリーが埋めてくれることもe-Bikeならではの良さです」
e-Bikeは旅やキャンプの相性が良いアイテムのようで、「YPJ」の操作性の高さについても言及していた。
「もちろんスポーツとして早く走るライディングもありますが、自転車は本来の成り立ちからしてもラクに走るためのもの。すぐ立ち止まれて発進もラクという自転車で、重い荷物を積んでも指一本でピタっと止まれる油圧ディスクブレーキの存在は大きい。あと、積む荷物が多くても不整地で走りやすいので、タイヤの太さ・エアボリュームもこれくらいあったほうがいいんです」
本イベントでは「YPJ」の過去のコンセプトモデルの展示も行われたほか、MTBギアブランド「ダートフリーク」ブースではグループやヘルメット、シューズの試着を実施。ワイズギアコーナーではヤマハ純正のYAMALUBEケミカルを使った、愛車のケア方法のレクチャーなども行っていた。
市内10箇所に69台のYPJを配置するという富士宮市の出展ブースでは、さまざまな特産品販売や観光案内も。富士宮は市としてニジマスの生産量が年間約2500トンで日本一を誇り、「富士山麓の名水で育ったニジマスは身が締まっていて臭みがないのが特徴」とのこと。「鱒の缶詰」などがオススメ商品のひとつのようだ。
YPJを所有するオーナーなどが集まり、そのロイヤリティを高めるオフィシャルの場として、貴重な機会に位置付けられているという本イベントだが、一般の参加者も幅広い楽しみ方ができるイベントのようだ。