ウェルネス総合研究所はこのほど、「レム睡眠」の重要性について、専門家が解説したものを発表した。
■第一人者に聞く、レム睡眠の重要性
質の良い睡眠のためには、ノンレム睡眠だけでなく、レム睡眠にも着目し、睡眠バランスの重要性に目を向けていくことが重要という。そこで今回は、レム睡眠研究の第一人者である、東京大学大学院理学系研究科教授の林悠氏が解説した「レム睡眠の重要性」を紹介していく。
睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠に区分される。ノンレム睡眠はその深さでステージ分けをすることができるのに対し、レム睡眠はその効果についての検証が難しく、謎が多い睡眠とされているそう。
■レム睡眠は"脳のリフレッシュ効果"が期待できる
レム睡眠は記憶や感情の制御を担当しており、情報を統合したり、過去の経験とつなげたりするとともに、 "脳のリフレッシュ"をする働きをするといわれている。また、近年の研究ではレム睡眠とノンレム睡眠は相関関係にあることも推察されており、レム睡眠を意識することが「熟睡=睡眠の質向上」につながるかもしれないとのこと。
■レム睡眠とノンレム睡眠のバランスは加齢で変化
人のレム睡眠の割合は、新生児期に最も多く、幼少期に大幅に減少し、思春期以降も加齢とともに少しずつ減っていく。認知症の有病率が年齢とともに上昇することを合わせて考えると、「レム睡眠は認知症を考える上で、重要な役割を担っている可能性があるといえる」そう。
■レム睡眠と認知症リスクの相関性
元来、ノンレム睡眠時にアミロイドβなどが老廃物として排出される可能性から、ノンレム睡眠と認知症リスクとの関連が注目されていた。ところが最近は、レム睡眠の方に記憶の定着に寄与しているとのエビデンスが報告されるようになり、レム睡眠の少なさと認知症発症率に相関性も報告されるようになったという(※1)。
■レム睡眠時は脳の血流量が上昇
また、レム睡眠中は、大脳皮質の毛細血管内の血流が大幅に上昇することも判明。脳の毛細血管の血流量が上昇することで、脳に必要な血液中の酸素や栄養を送り届け、不要となった二酸化炭素や老廃物が回収され、脳がリフレッシュされている可能性が示唆されたとしている(※2)。
■質の良い睡眠には"睡眠バランス"が重要
睡眠は人生の約3分の1を占めており、「睡眠の質=健康の質」といえるほど大事なもの。まだ解明が進んでいる途中だが、「ノンレム睡眠の中でも深い睡眠である深睡眠」と「レム睡眠」の2つの睡眠は、どちらも重要な役割を担っており、ぐっすりと深く眠るだけでは不十分とのこと。
ウェルネス総合研究所では、「ノンレム睡眠の中でも深い睡眠である深睡眠」と「レム睡眠」の両方をバランスよくとることが、質の良い睡眠の条件ともいえるとしている。
なお、林悠氏は、東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻睡眠生理学研究室教授、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構客員教授博士(理学)である。
(※1) Pase et al., Sleep architecture and the risk of incident dementia in the community. Neurology 89(12):1244-1250 (2017)
※2 レム睡眠中におこる大脳毛細血管の血流の上昇と、A2a受容体の関与2021年
Cerebral capillary blood flow upsurge during REM sleep is mediated by A2a receptors Cell Reports