医療マンガの先駆けであり金字塔といえば手塚治虫の『ブラック・ジャック』、ということに異論はないと思います。その連載50周年を記念した『手塚治虫 ブラック・ジャック展』が、東京シティビューで始まりました。500点以上の直筆の原稿に加えて、多数の資料や関係者の証言映像などが集結した、『ブラック・ジャック』史上最大規模のド迫力の展覧会となっています。

  • 500点以上の直筆原稿に加えて、多数の資料や関係者の証言映像などが集結した『ブラック・ジャック』史上最大規模、ド迫力の展覧会に

    ©Tezuka Productions

顔を斜めに走る傷跡と黒いコートがトレードマークの天才外科医ブラック・ジャック。このニヒルな無免許医を主人公にした医療マンガが生まれた1973年、手塚治虫は苦境の中にいました。劇画ブームの影響などで、このマンガの神様はすでに“古臭い、終わった漫画家”扱いされ、自身のアニメ制作会社「虫プロ」は倒産し……と、手塚治虫にとって冬の時代。展示では、手塚プロの関係者や出版に携わった編集者の証言映像などから、そうした逆境の中で誕生した『ブラック・ジャック』の背景にあった、手塚治虫の執念と情熱を知ることになります。

  • 長男の手塚眞さん、長女の手塚るみ子さんが、子供の目から見た当時の手塚治虫を語る貴重なインタビューも

圧巻だったのが、「B・J曼荼羅」と名づけられた直筆原稿が壁一面に並んだ展示室。エピソード140話分の原画がずらりと並び、顔の傷跡や高額請求の謎、大切な母や恩師の存在、すべての命に真摯に向き合う姿など、『ブラック・ジャック』の多種多様なストーリーをこれでもかと浴びまくる、一大空間となっています。このシーン覚えてる、この話も好きだったなー、やっぱりピノコは可愛い、あ、本間先生……! と、筆者はかつてむさぼるように読んだ読書体験が蘇って、終始心が揺さぶられっぱなしに。

  • 【写真】140話分の原画がずらり! 『ブラック・ジャック』の多種多様なストーリーをこれでもかと浴びまくる一大空間

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続く展示室「B・J蘇生」では、連載をリアルタイムで読んでいた当時の読者のド肝を抜いたであろう、精密で臨場感あふれる手術シーンを現代アート的な視点から鑑賞したり、医療の側面から作品を読み解いていく試みが展開。昭和の時代のニュース映像と音声が流れるなか、当時の事件や流行が巧みに織り込まれた『ブラック・ジャック』の作品世界が、昭和の空気感とともにリアルに追体験できる仕掛けとなっています。

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ブラック・ジャック邸の居間と手術室を“白黒マンガ”の世界観で表現したフォトスポットや、ピノコ、本間丈太郎、如月恵、ドクター・キリコといったおなじみのキャラクターたちの裏話を紹介するコーナーなど、見どころいっぱいの本展。特設ショップ「崖の上の一軒家」には、会場限定のオリジナルグッズをはじめ、多彩な『ブラック・ジャック』グッズをラインナップしています。50年目のブラック・ジャックに会いに、足を運んでみてはいかがでしょうか。
※手塚治虫の「塚」は旧字体が正式表記です。

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■information
『手塚治虫 ブラック・ジャック展』
会場:東京シティビュー
期間:11月6日まで(10:00~22:00)
一般:2,300円(土日祝は2,500円)、高校・大学生1,700円(1,800円)、4歳~中学生900円(1,000円)、65歳以上2,000円(2,200円)